法律事務所Z

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四大法律事務所出身者が中心となり設立された新世代の法律事務所。M&A、事業承継、国際法務等の高度な企業法務から、企業法務、男女問題、労災、消費者被害まで、あらゆる分野に対応できるプロフェッショナル集団です。

最近の記事

第13回 連帯保証

1 対象会社保証提供の原則ノンリコースのファイナンスであるLBOファイナンスのスキームでは、ローンの貸付人である金融機関が債権回収に関して対象会社の債権者に劣後する構造が生じます。そこで、LBOローン契約では、そのような構造的劣後関係を解消するため様々な方策が取られ、対象会社財産の担保提供が要求されます(全資産担保の原則)。 また、LBOファイナンスは対象会社の生み出すキャッシュフローを引き当てとしたファイナンスですから、借入人だけでなく、キャッシュフローを生み出す対象会社

    • 第12回 担保契約

      1. 全資産担保原則LBOローンにおいては、借入人を含む対象会社グループの保有する資産全てに担保権を設定することが求められます。もっとも、事業会社である対象会社(グループ)が保有する資産のなかには、必ずしも事業運営上の重要性が高くないものも存在し得えます。実務的には、担保対象資産の重要性や担保設定の困難性などを勘案し、担保権を設定する資産を選別することが行われています。 2. 担保の形式(普通担保と根担保)担保権は大きく、特定の債権を担保するために設定される普通担保と、継

      • 第11回 期限の利益喪失

        1 総論借入人は、原則として、弁済期限が到来するまで借入金の弁済を強制されないという「期限の利益」を有しています(民法136条)。もっとも、借入人に信用不安が生じたときには、貸付人は弁済期限到来まで待たずに債務残額の全てを回収する必要が生じます。そこで、期限の利益を当事者の合意で排除し、その発生により期限の利益を失わせる「期限の利益喪失事由」を特約で定めることが行われています。期限の利益を喪失して弁済期が到来した債権について、貸付人は、残債務の全額を借入人に請求することがで

        • 第10回 コベナンツ

          1 コベナンツとはLBOローンは、対象会社のキャッシュフローのみを引き当てにしたノン・リコースのファイナンスです。そのため、対象会社のキャッシュフローを健全に保ち、対象会社からの資金の流出を防ぐ必要があります。そこで、LBOローンの契約においては、コベナンツ(誓約事項)によって、借入人及び保証人たる対象会社の行動に対して、契約上一定の制約を課してその行動を制限することで、貸付人のリスクを低減させることが行われます。 コベナンツ違反の効果として、まずローン契約に基づく新たな借

        第13回 連帯保証

          第9回 表明保証

          1 表明保証の機能表明保証とは、ある時点における一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証することを言います。 (1) 情報開示促進 ローン契約における表明保証条項には、貸付に際する与信判断のためのチェックリストとしての機能があります。すなわち、契約交渉のはじめに貸付人が提示するローン契約のファーストドラフトに対して、借入人がそのままでは表明保証できない部分などにコメントを入れていく過程で、借入人側の情報開示が促進されるのです。貸付人としては、このような

          第9回 表明保証

          第8回 期限前弁済

          1 期限前弁済とは借入金の弁済期は、ローン契約において定められ、通常は期限一括弁済又は分割弁済が設定されます。期限一括弁済は、設定された弁済期まで元本の弁済が生じず、弁済期限に借入金の元本残高全額を返済する約定です。分割返済は最終回まで各回の元本支払が均等であるもの(フルアモチ)や、弁済金額が徐々に大きくなるもの(バルーンアモチ)、最終回のみ返済金額が大きいもの(テールヘビー)などバリエーションがあります。 期限前弁済は、約定されたスケジュールとは異なるタイミングで返済を行

          第8回 期限前弁済

          第7回 前提条件(CP)

          1 前提条件(CP)とはLBOローン契約における前提条件(Condition Precedent, CP)とは、貸付人の貸付義務を発生させるための条件を指し、前提条件が充足されていない場合には貸付人は貸付を拒絶することができます。 前提条件は、貸付人にとって与信判断の前提となっている事実について、貸付実行前に誤りが発覚した場合に、それにも関わらず貸付義務を負うこととなることを避ける機能を有しています。 2 具体的な条項案件ごとの特殊性もありますが、LBOローン契約の前提条

          第7回 前提条件(CP)

          第6回 LBOローン契約総論

          1 はじめに今回は、買収ファイナンスの概要についてお話しいたします。 まず、買収ファイナンスのスキームについて概観した上で、LBOファイナンスについて総論的な説明をしていきます。 2 買収ファイナンスの典型的なスキーム買収ファイナンスは、大別して、 ① 買主自身を資金調達主体とし、買主グループの信用力(コーポレートクレジット)に基づいて資金調達をおこなうコーポレートファイナンス ② 買収用のSPCを資金調達主体として、買主自身のコーポレートクレジットを引当てとせず対象

          第6回 LBOローン契約総論

          第5回 レンダー選定

          1 はじめに今回はローン調達交渉にあたってのレンダー選定及びコミットメントレター取得までの実務を説明いたします。LBOローンを用いた株式取得においては、一般的に意向表明書の提出、デュー・デリジェンス(DD)の実施、株式譲渡契約(SPA)の締結、ローン契約の締結、クロージングという形に進んでいきますが、レンダー選定及びコミットメントレターの取得は意向表明書の提出前から株式譲渡契約の締結までに行われることが多いです。これらのプロセスは一般的に弁護士が入って交渉することは少なく、

          第5回 レンダー選定

          第4回 ローン契約総論

          1 はじめに 今回以降、ローン契約の解説に入ります。ローン契約とは、一般的に金銭消費貸借に関する契約のことを意味しますが、ひとくちに金銭消費貸借といっても、その内容は多岐にわたります。LBOローンの特徴を理解するためにも、まずはローン契約の基礎知識をご紹介いたします。 2 ローンの種類 金銭の貸し借りについても複数の取引形態があります。この取引の種類(ローンの種類)のことを意味してファシリティとよばれることもあります。 以下、ファシリティの内容をいくつかみてみましょう。

          第4回 ローン契約総論

          第3回 LBOのストラクチャー(SPC)

          1 はじめに 前回はLBOの総論として、売主と買主を当事者としたM&Aストラクチャーの基本を説明しました。通常のLBO案件では、実質的にM&Aを行うのはファンドですがファンド自身は直接買収の当事者(買主)とはならないのが一般的です。LBOスキームを実現するために、ファンドにより特別目的会社(SPC)が設立されることが通常です。 今回は、SPCの基本的な知識と、それによって実現される効果についてご紹介していきます。 2 SPCとは 一般に特別目的会社(SPC)とは、具体的な

          第3回 LBOのストラクチャー(SPC)

          第2回 LBOのストラクチャー(買収プロセス)

          1 .はじめに本連載の主目的はLBOローンについて解説することにありますが、まずはその前提として、M&Aの全体像について、相対の株式譲渡スキームを例にとって説明していきます。 なお、ここでご紹介するのは、あくまで典型的な取引の流れですので、実際にはケースバイケースであることにご留意ください。 2. M&Aの全体プロセスM&Aの開始から終了までの期間は、(1)交渉相手の選定、(2)デュー・デリジェンスの実施、(3)契約条件交渉、(4)クロージング期間の4つのフェーズに分け

          第2回 LBOのストラクチャー(買収プロセス)

          第1回 “LBO”・“LBOローン”とは

          今回から、「PEファンド・銀行担当者のためのLBOローン実務入門」と題して、LBO(特にLBOローン)について解説する記事を連載していきます。 筆者らは、弁護士として多数のLBO取引に携わっており、豊富な実務経験を有しています。 不定期での更新となりますが、お付き合いいただけると幸いです。 1.はじめにLBOローンを利用した企業買収は、PEファンド等を主として幅広く実施されています。 PEファンドに着任する方は、証券会社の投資銀行部門などのバックグラウンドを有する方が多く

          第1回 “LBO”・“LBOローン”とは