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#言葉

鏡の中の顔

鏡の中の顔

蛍光灯をつければ

鏡の中でその顔は

青白く浮かんでいて

複雑なまま複雑を剥奪され

悩んだまま悩みを剥奪され

暗闇の中を浮かんでいる

冷たい平面に光が張り付いて

何かがあるけど何もない

何もないと思うほどに

不気味さが増す

今僕の顔は切り離されて

顔から下で考え

不気味さに震えているようだ

見たことがない目を見た

見たことがない目を見た

見たことがない目を見た

光でもなく

闇でもない

生でもなく

死でもない

ただ目が在る

もはや目ではなく

限りなく物質に近い

限りなく”それ”に近い

身体が動きはじめる

その身体は

ただくっついている

ただひっぱられている

ただ伸びている

ただ震えている

意味を持ちそうで

意味を持たない

物質になる

それになる

現実を覆っている現実が

剥がれる

何もしていないのにやり切ったみたいな顔をする練習

何もしていないのにやり切ったみたいな顔をする練習

何もしていないのにやり切ったみたいな顔をしてみたい

そういう顔を作る練習をする

自分の嘘を許す練習ををする

もしかしたら

ある意味ではほんとうに何かをやり切ったのかもしれない

人からなにか言われても気にしない練習をする

今日は素晴らしかった

今日は完璧

言うことがない

退屈をやり過ごしたのではない

退屈をやり切ったんだ

退屈を奪うものに囲まれるなか

退屈を奪われずに、退屈を

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愛では満足できない

愛では満足できない

愛では満足できない

全てでは満足できない

僕が欲しいのは

きっと僕たちが欲しいのは

愛も

全ても

超えていけるだろうか

あるいは

別の何かがあるのだろうか

超える何かがあることは

別の何かがあることは

それが何か分からないことは

希望であり

救いであるのかもしれない

理想主義ではない

ここではないどこかではない

これは現実主義

現実を求める

僕の現実が破れて

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竜舌蘭

竜舌蘭

噂話を聞いた

10月末の太陽に

もう一度夏を咲かすように

咲いたとか

竜の舌はなめらかな

滑り台のよう

スピードも興奮もない

大人たちの血を揺り籠のように揺らし

目は波打つ霧雨

この夜の末端で安心する

今日もがんばった靴下と

僕の骨が

床の上に漂う

薄い煙の上を泳いでいる

純粋になる夕

純粋になる夕

夏の真っ赤な夕陽が

低い雲を紺色に濁らしたら

薄暗い部屋で

BLANKEY JET CITYで

踊ろう

3104丁目はここにある

誰かが太陽を下に引っ張り

部屋が暗くなっていくにまかせて

踊り狂おう

まるでMONKEY STRIPのように

夕陽が外を焼き尽くし

夜が来るまで

星はきっと

灰になった昼の全て

純粋になった昼の全て

ミステリーサークル

ミステリーサークル

ミステリーサークルを作る

立入禁止の柵を越えて

雑草の無法地帯で

草を一枚一枚丁寧に畳んで

しっかりと空から見えるように

星と月の灯りだけでも見えるように

大きく

目立つように

おかしく

空を飛ぶあの人が

寂しくないように

笑えるように

いつでも帰って来れると

安心できるように

そう思って

その側に座れば

僕も寂しくないだろう

星に食べられる

星に食べられる

なにか悲しいことを考える
人差し指に息を吹きかけ
ベランダの手すりから
月面までの距離を測る
月に耳を描いて
ベランダの手すりでショパンを弾いた

そして僕は星に食べられる
星に食べられる僕を
君は苦笑いをしながら呼んでいる
それは遠い出来事 懐かしい出来事

なにかケチなことを考える
言葉を求めすぎて
何も言えなくなって
僕は馬を夢見る
馬の立髪は畦色で
その立髪で作った弓でバッハを弾く

そし

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日差しの雫

日差しの雫

嬉しい言葉で布団から抜け出す

Father John Misty

Honeybearは泣いていない

昨日降った雨のように

しとしと

しとしと

しとしと

日が差してくる

3月25日

蕾の隙間から

甘いにおいがのぼり

空の色を塗り替えている

新宿東口 AM7:30

新宿東口 AM7:30

ゴミと枯葉が

カラカラと転がる駅前

植え込みの花のベットで

空き缶とペットボトルが横になっている

ホームレスのタバコの煙

日焼けした外国人観光客

落とした傘を拾うのに5秒かかる人

まだ電気の消えてない顔と声の集団

どこを向いているのだろう

あちらこちらあちこちこちら

みんなそれぞれ

それぞれの方に

歩いて行くのだろう

おはよう

もしかしたら

おやすみかもしれいないけど

ウエストサイドの池

ウエストサイドの池

ウエストサイドの

枯れた池で

おもちゃの船が転覆している

煙突のついたクルーズ船

船底は深いネイビー

日の光がぎりぎり届く海の層と同じ色

その池には

この季節の侘しさや

このまちの寂しさが

全て投げ込まれている

僕はその池に視線を投げ込む

サウスサイドから飛んできた

渡り鳥が啄んだ鮮やかな羽が

この池に投げ込まれたら

船はもう一度揺れるだろうか

僕はその池に昨日の悲し

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よく似た夢を見ているのかもしれない

よく似た夢を見ているのかもしれない

ジャムを塗りたい

赤黒のいちごジャムを

素肌の上に

それが虹を渡る準備だと信じている

きっとあの人はそういう魂を持っている

赤黒のジャムも限りなく薄く広げれば

ピンク色に透き通る

僕はそのとき

珈琲を両手に持って現れる

眠い香りに包まれて

二人で机を挟んで向かい合い

顔を横に向けて

ただ虹を見ていてた

ピアノが聞こえたら

ピアノが聞こえたら

ピアノが聞こえたらどうしよう
坂の途中の2階建て、白い塀に囲まれた、青い屋根の家から
遠くにふかふかの雲が浮かんで、静かな午前10時、遠くから車の音が聞こえる。ピアノはきっとアップライトで、その上にはミラノの写真なんかが飾られている 読みかけの本が何冊か積まれているかもしれない
部屋にはトーストと珈琲の香りが残っていて、ローテブルにはまだ朝食の抜け殻が残っている バターナイフにはジャムが少し付いて

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灼熱

灼熱

空気は歪み

骨が硬さをなくしていく

全てが焼かれていく

熱狂するのか

それとも

狂気すら焼かれるのか

きっとその方がいい

言葉は声になる前に焼かれる

残るのは

ビート

ダンス

砂漠色の光

灼熱に焼かれて

焼き尽くされて

熱なきトランスへ