ローズロード
いつの日も、その道の端には薔薇が咲いている。
春夏秋冬、長い一本道を赤く染め、歩く者に美しさとは何かを思い出させる。
近所に住む老人はこの道の薔薇が大好きで毎日この道を歩く。
そんなある日、見慣れない男が道の反対側からやってくる。
見慣れない男は若く、軍服を着て銃を背負っており、規則正しい行進をしている。
珍しい、どこの国の兵隊さんだろうか。
老人は彼に話しかけた。
「もしもし、どこのお人かな?」
すると男は立ち止まりゆっくりとした口調で話す。
「ただいま、行軍中でございます。」
老人は続ける。
「そうかそうか。それは大変でしょう。しかしこの先には戦地はないですぞ。あるのは平和な村だけです。」
「いえ、ここは戦地のすぐそばです。ご覧なさい、この道は赤い。血の道、戦地はもうすぐです。民間人は避難してください。」
「そうかそうか、ここは血の道か。なら少し休憩なさい。どうせ戦地はすぐそこ、ゆっくりでも間に合います。」
男は戸惑ったがその場に座り込み、空の水筒の水を飲む。
そして潤せたのか薔薇を眺めていた。
「ひどい血の量だ。ここの人は相当死んだでしょう。」
「いえいえ、これは薔薇です。血ではありません。」
「嘘だ、この赤を何度も見た。仲間はこの赤を流して散りました。」
「お辛かったでしょう。ですが、戦で流れる血と薔薇の赤は違います。薔薇の赤には美しさが、戦の血は鉛色が混じり、お世辞にも綺麗とは言えません。」
男は再び薔薇をよく眺め、枯れた涙を流した。
「私は赤を憎んでおりました。今は感謝しております。これは血ではない、薔薇、美しい薔薇でございます。」
「それは良かった。もう少し、休んでいってはいかがですかな?」
「はい。では、ここで休ませていただきます。」
ローズロードの薔薇が風に靡いた時、男は消えた。
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