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青ずきん

昔々、あるところに青ずきんという美しい少女がおりました。青い瞳に長い黒髪、華奢な長身は見るもの全てを魅了しました。一方で性格は大変暗く、いつも無表情でした。親の言う事は一切聞かず、お使いにもいった事がありません。


ある日のこと、青ずきんは1人しゃがんで川をじっと見つめていました。すると、森の奥からそれはそれは怖いオオカミが現れました。オオカミは青ずきんに話しかけます。

「お嬢さん、こんなところで何をしてるんだい?」

すると青ずきんはこう返しました。

「魚を見てた。魚は自由でいいなって。」

オオカミはきょとんとしました。まるで彼女が自由ではないようです。

「お前、自由になりたいのか?」

「うん。自由になりたい。」

「どうした?悩む年齢ではあるまい。」

「うん。私が綺麗だからって、村の男の人はみんな私の事を見たり話しかけたりする。それを見て女の人は狐だの猫だの罵ってくる。お母さんもお婆ちゃんも、お前が綺麗なのがいけないんだって。友達も、味方もいないの、私は何もしていないのに。笑顔を見せても、どんなにいい事をしても、求められるのはこの姿だけ。もう何年もこんな感じ。だから自由になりたい、皆んな嫌い。」

オオカミは思いました。誰もが羨む美女であるが故に、青ずきんは皆から嫉妬の目で見られていたのです。親ですら嫉妬するその美貌、青ずきんは何年もその美貌によって蔑まれていたのでした。オオカミはある事を言いました。

「お前が自由になれないのは負の感情をお前にぶつける人間が多すぎるからだ。俺様はお前が気に入った。俺様の妻になるなら、お前の自由を約束しよう、この身をかけて。」

オオカミは近くにあった草を青ずきんの指に巻き付け、指輪の代わりとしました。青ずきんは、何年かぶりの笑顔を人にではなくオオカミに見せました。


青ずきんはオオカミと結婚し、オオカミは青ずきんを蔑む全ての存在を喰らい尽くしました。それは、とある騎士団によって青ずきんとオオカミが処刑されるまで40年以上も続いたのでした。

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