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エッセイ:大ちゃんは○○である52

撮影日当日。集合時間は朝の7時半。
撮影場所は錦糸町にある、とあるスタジオだった。
遅刻だけは絶対に許されない。
寝過ごしだけはしないようにと、前日はかなり早く布団に入ったのだが、
様々な感情・思考が脳内を駆け巡り続け、
結局ほぼ一睡もできないままでの現場入りとなってしまった。
時間にはかなり余裕をもって到着したつもりだったが、
現場ではすでに大勢のスタッフが動き回っており、
活気と賑わいを見せていた。
『うわっ、プロの現場だ。』
パッと見ただけではあったが、それが最初の感想だった。
緊張しながらも敷地内に入り辺りを見回すと、
僕と同じようにこの日の撮影に呼ばれたのであろう役者らしき数名が一ヶ所に集まっていた。
僕は駆け寄っていき
「おはようございますっ。今日はよろしくお願いします。」
と大きな声で挨拶をした。
集まっていた面々からも
「おはようございまーす。」「おはざます。」
「お願いしますっ。」
などの気持ちの良い挨拶が返ってきた。
するとその中の一人が
「7時半になったらスタッフさん来て移動するみたいで、それまでここで待っててくれって言ってましたよ。」
と教えてくれた。
年齢層はバラバラで、僕のように20代前半ぐらいだろうなと思う者もいれば、
30代もしくは40代ぐらいの者もいた。
僕も輪の中に加わり、お互いの自己紹介を兼ねた雑談を数名としていると、
集合時間が近づくにつれ一人また一人と役者達が合流してきて、
スタッフが声をかけにきた7時半には15人ほどの数になっていた。
集まった15人の役者達はというと、僕を含め揃いも揃って男・男・男。
前を見ても後ろを見ても、右を見ても左を見ても15人全員が男だった。
そんな男だけが集められた僕達の役どころとは一体何なのか。
それは、、、地獄とされる場所があり、その地獄の中で地獄の主に痛め続けられる人達という役。(な、なんて素晴らしい…)
いわゆる怪奇ホラーというジャンルの映画だ。
「皆さんおはようございます。本日はよろしくお願いいたします。
早速なんですが、お着替えをしていただきますのでちょっと移動しますね。」
キャップを前後ろ逆に被り、ハツラツとした声の若い男性スタッフに続いて、
僕達15人は移動を始めた。

つづく

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