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エッセイ:大ちゃんは○○である59

所属していた事務所まで赴き、マネージャーに退所の意思を伝えると、
「飲みに行くぞ。」と言われ居酒屋で数時間二人っきりで話をした。
一人で十数人を管理してくれていた年配のマネージャーで、
顔を突き合わせてゆっくり飲みながら話すなんて機会はほとんどなかったので、
ある意味新鮮な時間だった。
思えばこのマネージャーには本当に色々なことを教えてもらった。
役者としての心構えから、私生活においての意識の在り方から様々。
沢山の現場も経験させてくれたし、映画・ドラマのオーディションにも数多くプッシュしてくれた。
中々期待に応えることができなかった申し訳なさと、
自分自身に対する不甲斐なさはあったが、
最後まで親身に話を聞いてくれて、ありがたい言葉で背中を押してくれたことには本当に感謝をしている。
居酒屋を出てからの別れ際。
「新しい道でも頑張れよ。」と
差し出された右手を握り返した時、
何とも説明のつかない感情がごちゃ混ぜになり涙が溢れてきた。
夢だった道の曲がり角を確かに曲がった瞬間だった。

つづく

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