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短編小説

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稚拙な出来でありながら、趣味で書いてみた短編小説を投稿しています。 感想、批判、レビュー等々何かしらのコメントを頂けたら大変嬉しいです。
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短編小説「歯磨き」

短編小説「歯磨き」

 歯磨きをするときは、必ず口の中をゆすいでからにする。

口の中に味覚が少しでも残っていると、歯磨き粉のミントの味が入り込んで気分が悪くなるからだ。底に黒ずみができかけているカップに水を一杯汲んで、口の中に含み、吐き出す。

そうして口内をクリアにした後、毛羽立ってくたびれた青のブラシに歯磨き粉をのせて口の中に運ぶ。いつものように溶け込んでいくミントの味。いつもの通り変わらない。

シャカシャカと

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短編小説「水槽と起床」

短編小説「水槽と起床」

朝を迎える時、いつも最初に心に去来する「何か」

この日の朝、彼の心に最初に去来したのはA子のことだった。

朝を知らせるつんざくアラーム音を停止した時、携帯のディスプレイを確認するがそこに彼女からの返信はなく、その代わりに上司からの連絡事項がつらつらと並べられている。

強張った体を緩めようと軽く伸びをすると、ベッドが悲鳴のような軋みを鳴らす。

それに共鳴するかのように彼も何となくため息を漏ら

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