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映画感想『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

原題「SHE SAID」

◆あらすじ◆
2017年、ニューヨーク・タイムズの記者ジョディ・カンターは、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが、その絶大な権力を利用し、女優や自社の女性従業員に対して性的暴行を繰り返していたとの情報をつかむ。しかし取材を進めても、報復やキャリアへの悪影響を恐れる被害女性たちの口は重く、なかなか決定的な証言を得られず難航する。そんな中、取材チームにミーガン・トゥーイーが加わり、カンターとトゥーイーは少しずつ事件の核心へと迫っていくのだったが…。


ちょっとぉ!
複雑に色んな感情がぐるぐるしちゃったよ。


これ【PLAN B】が製作なんだね。
ブラピが選択する作品は割と好みな物が多いなぁ。

いつ頃からだろうか?
「それ、セクハラですから!」と女性が肩に置かれた手を振り解ける様になったのは…。

まぁ、世代によっては「世知辛い世の中だ」と嘆く男性も少なく無いだろうが肩に触らなくてもコミュニケーションは取れるんだよ、アナタ達。

記憶に新しい【#MeToo】運動は世界中の女性にとっての革命だった。
まだまだ途上だがずっと続いて来た女性蔑視とそれ故の性被害撲滅への大きな足掛かりとして歴史に残るのかも知れない。

しっかし、どうしたらあんなに醜悪な権力者が出来上がるのだろうか?
擁護し野放しにした奴等も掻い潜れる法律も同罪じゃ無いのか?
自分の家来達(弁護団)を引き連れてニューヨーク・タイムズに乗り込み、証言した女性達を捩じ伏せ様とするアホみたいな発言を並べ立ててケダモノ以外の何者でも無い!
もちろん性被害は個人の問題ではあるが今作は社会が生み出した問題として観る側に問題提起として訴えている。

セクハラ城を囲む鉄壁。
法律の甘さと絶対権力を武器に立ちはだかる牙城を少しずつ削る様に核を目指す記者たちの姿に観ている方も歯痒さとイラつきを覚える。展開が進むに連れ湧き上がる悔しさと憤り。
それでも誠実さと信念に裏付けされる使命感という本能が彼女たち記者を突き動かす。

だが、彼女たちが決してスーパーウーマンなんかではなく出産や子育てに悩みながらも仕事と家庭の両立を成そうとするごく普通の女性だという姿をしっかり描いていくところにマリア・シュラーダー監督らしさがある。
そしてそうした女性たちが疑惑を暴いていく新聞社の舞台裏を描く展開にリアルさが伴い、精度の高い説得力とサスペンス性に繋がる。

そしてオンレコ、オフレコの攻防も重要なやり取りだ。

故に、二人の記者を演じるキャリー・マリガンとゾーイ・カザンが素晴らしい事は言うまでもない。

そして最初に告発したアシュレイ・ジャッド本人をはじめ、憧れてやりたいと目指した仕事への希望を踏みにじられた被害者たちの悲しみや悔しさ、そして怒り。でも何とかそれを乗り越えようとする倫理観や正義感をシーン的には短く加えながらも、俳優の力量で厚みのある表現がされていて圧巻だった。特にサマンサ・モートンにはみせられてしまった。


それにしてもちゃんと情報が取れるかどうか(話をしてくれるかどうか)判らない遠方や海外にまで即刻飛ばしてくれるパトリシア・クラークソン演じる上司(編集局次長らしい)がめちゃカッコよかった!


結構差し込まれるシーンが巧いんだよね。
女性だけで飲んでるシーンで男がひとり声をかけてくるんだけどこういう時の男の態度とか、被害を受けた女性が男性に相談したらどんな答えが返ってくるか?とか何故ハラスメントを拒否できなかったか?口を閉ざさるを得なかった理由とか・・・多分、世の女性の結構な比率で同じような経験があるのでは?だからこの問題提起の先に【#MeToo】運動があったんだろうね。

この映画は決して他人事ではないという事です!


最近、今までは女性しか居なかった様な職場に男性も就くようになって(男性が訴えたから)不満が明らかになるケースが散見されるんだが女性が過去どんなに訴えても表面化もされなかった現実があった事、女性がどれだけ抑制され我慢して来たかを理解した方がいいよね。




それにしてもワインスタイン(演:マイク・ヒューストン)の後ろ姿似てたなぁ。

それと、トランプの電話の声もソックリで驚いたんだけどあれ何か仕掛けあんの?と思ったら俳優兼コメディアンのジェイムズ・オースティン・ジョンソンだった。トランプのモノマネちゃん。

とにかく非常に価値ある1作だ。


2023/01/14


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