2023年6月の記事一覧
生き写しバトル (毎週ショートショートnote参加)
純白のドレスに身を包み、輝く笑顔を見せている妹の横に立っているのは、私の好きな人だ。
一卵性双生児の私達は、顔だけでなく趣味も似ていた。好きなアーティストもブランドも。
ずっと3人一緒にいたのに、彼が選んだのは妹だった。気づいた時には2人はすっかり出来上がっていて、私には争う余地も勇気もなかった。
両親と一緒に参列者に挨拶をしている。初めて会う妹の友達に「ホントそっくり、写真いいですか?」な
塩人(しおんちゅ) (毎週ショートショートnote参加)
夜中にほとほとドアを叩く音がして、開けるとそいつが入ってきた。子供が作った人形のように不恰好で、透き通るほど白い生き物。
「なんだ、お前」
「ちおんちゅ、ちおんちゅ」
それしか言わないが、丸い目と上がった口角から笑っているのはわかる。ちおんちゅは俺以外には見えないようだが、犬にはよく舐められる。毎日散歩に連れ出されるので、運動不足だった俺はたくさん汗をかくようになった。
子供向けのアニメを観
アナログ巌流島 (毎日ショートショートnote参加)
フィルム撮影に拘った映画《アナログ巌流島》の撮影を終え、小次郎役のナオトとカプ厨向けに距離感バグったツーショを何枚か撮る。その場でSNSにあげ、「お疲れー」と言ってナオトと別れた。
理解出来ないが、これに刺さる層が少なからず存在していて、直ぐにイイネ!がついた。
アナログ巌流島というからには、デジタル巌流島もある訳で、そっちは俺とナオトを含む剣豪キャラ数名でアバターを使った配信をしている。主に
顔自動販売機(毎週ショートショートnote参加)
駅前の自動販売機で死んだ姉の顔を買い、母のいるホームへ向かう。
依存していた姉を亡くしてから、母は私を姉の名で呼ぶようになった。
「まぁちゃん、まぁちゃん」
出来が良く、自慢の娘だった姉
いつものように、とうに亡くなった姑の悪口やホームの人の噂話をしていたかと思うと、テレビの話。とりとめなく話し続けるのを、姉がしていたように適当な相槌を挟みながら聞いてやる。
一通り話し終えると、
「ま
メガネ朝帰り(毎週ショートショートnote参加)2
中学の頃、"メガネ"と呼ばれていた。
クラスの三分の一がメガネだったのに、自分だけメガネと呼ばれることに特に不満はなかった。
実際メガネだったし。
クラスの全員がそう呼ぶのに、1人だけ必ず苗字で呼ぶ人がいた。話したのは数回、多分委員会かなんかの用事で。
騒がしいグループにいたのに、寡黙でいつもペン回しをしている人だった。授業中だけじゃなく、廊下を歩く時も全校集会でも。
ペン回しの技にソニック
メガネ朝帰り(毎週ショートショートnote参加)1
顔は知ってるけどたいして親しくなかった同級生と偶然会うのは気まずい。それが地元の駅へ向かう始発電車の中ならば尚更。
"メガネ"は中学の同級生で一度だけ同じクラスになった。クラスの三分の一はメガネだったのに、何故か"メガネ"だけがメガネと呼ばれていて、それを誰もが当たり前に受け入れていた。当の本人でさえ。
話したのは数えるほど。委員会とかそんな用事で。でも"メガネ"の右手の甲に二つならんだホクロ