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メガネ朝帰り(毎週ショートショートnote参加)2

中学の頃、"メガネ"と呼ばれていた。
クラスの三分の一がメガネだったのに、自分だけメガネと呼ばれることに特に不満はなかった。
実際メガネだったし。

クラスの全員がそう呼ぶのに、1人だけ必ず苗字で呼ぶ人がいた。話したのは数回、多分委員会かなんかの用事で。

騒がしいグループにいたのに、寡黙でいつもペン回しをしている人だった。授業中だけじゃなく、廊下を歩く時も全校集会でも。

ペン回しの技にソニックやインフィニティといった名前があることを、盗み聞いた会話で知った。クルクルまわるペンは風ぐるまのように綺麗だった。

今朝、地元に向かう始発電車で数年ぶりに見た。よれたシャツが少し崩れた様子に見えたけど、胸ポケットにはペンがさしてあった。

もうメガネはかけていないから、
きっと向こうは気づかなかっただろう。

改札を出て明るくなってきた街を自転車で走る。前を歩く人はやっぱりペンを回していて、つい手を振ってしまった。
でもきっと向こうは気づいてない。

(411字)

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