ワクワクした物語2021
私は、美術史や技巧的な知識はなんとなくしか頭に無いが、西洋画を見るのが好きだ。地元の美術館では、夏休みシーズンになると素人でも知っているようなビッグネームの画家たちの作品展がやって来ることが多く、そのときは積極的に足を運んだものだ。モネの描く青緑色が綺麗だったな……。
しかし、数年前にあったゴッホ展は行かずに終わってしまった。当時の私は多分、ルネサンス期の滑らかで神聖さがある絵画が一番好きだった頃で、やっと印象派の良さがわかってきたくらい。ゴッホも印象派の括りではあるものの、モネやセザンヌらとは異なるというイメージが強く、まだ素晴らしさを理解できなかったのである。
しかし、今年出版された原田マハさんの本を読み、当時行かなかったことを、というか既に絵画が来てしまったことに歯嚙みした。
その本の名は『リボルバー』である。
重要なテーマとして掲げられているのは、「ゴッホの胸を打ち抜いたのは誰だ?」である。通説は自殺となっているが、本作は史実とフィクションを織り交ぜながら、もう一つの真相とも思える到達点まで運んでくれる。昔から他殺説はあったようだが、それを知らなかった私は新鮮な驚きがあったし、説を知っている方も感動するストーリーだと思った。
本作は現代、依頼者の女性の若き日、そしてゴッホが生きる時代の3パートに分かれている。豊富な感情描写や情景描写、そして正確な史実に基づく描写などにより、それぞれの時代に違和感なく入り込むことができた。特に印象的なのは情景描写。
小説を書く際は自分の足で徹底的に取材をするマハさんなので、音の描写を読んだときなんかは『マハさんもそこで聞いたのかな……』と別の感慨にふけるなどしていた。そのくらい、臨場感に富む描写が随所に散りばめられているのである。
たくさんの取材に加え、前職や日々の経験も大いに投影されているであろう『リボルバー』。読めばきっとゴッホたちの作品に会いたくなるはず……!
(↓メディアパルさんのアドベントカレンダー企画に参加させていただきました。ありがとうございます!)
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