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バックパッカーズ・ゲストハウス(65)「レインボーブリッジからの夜景」

前回のあらすじ:友人の龍が住居を立川方面に移していたので、そこへ会いに行った。あと東京の道端で声を掛けてくるヤツは変は大体勧誘。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2


 ある日、東京を離れる前に見ておきたいものがあることを思い出してお台場へ行った。いつも行動が遅いのを自戒して、夜景が見たかったが、日が暮れるまでには大分余裕がある時間にゲストハウスを出た。

 ゆりかもめに乗り、運転手の居ない乗り物は恐いと知った。近所をウロウロする時同様、適当にお台場をほっつき歩き、自由の女神のニセモノや、風景を撮影するテレビ局の団体を見つけ、金は無いが、時間と体力はムダにあったので、日が暮れるまでかなり広範囲を歩き回ると、プロレス団体、「ノア」の道場も見つけた。

 明るい内も、夕暮れ時も、お台場を大して綺麗だとは思わなかった。海を眺める人が何人も居たが、四国育ちの私からしてみれば、眺めるほどの海とも思えなかった。

 さすがに腹が減って来たのと、休憩したかったのとで、マクドナルドに入った。そこで飯を食い、彼女にメールを送り、今は無くしてしまった小さなノートに何か日記のようなことを書いた。いい時代で、まだマクドナルドでもタバコが吸えたし、三沢光晴も生きていた。

 マクドナルドを出る頃には、外はしっかりと暗くなっていた。明るい内にウロウロしたビーチへ戻り、私はトラックの運転手の言葉を理解した。
 愛媛で日雇い派遣に行っていたとき、弁当を食いながら、津川さんに聞いた、
「今まで見た景色の中で一番綺麗なのはどこだったか」という質問に、彼は、

「レインボーブリッジを走ってる時に見える夜景は綺麗やど」と答えた。

 五十を越えたトラックの運転手が言う、レインボーブリッジからの夜景という言葉は強く私の印象に残っていた。

 レインボーブリッジから見たわけではないが、お台場の夜景は確かに綺麗だった。

 大したことないと思っていた海を、狂った夜光虫のような光かたをする屋形船が行ったり来たりする様子はずっと見ていられた。
 レインボーブリッジを走る車を見上げながら、そこからの景色を想像した。

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