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【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 8 / 全8話
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寒さを忘れて伸びをして、曽根は腕時計を見た。
すっかり落葉した並木道ではライトアップの準備が進んでいた。ハロウィンが終わったばかりだというのにクリスマスとは気が早い。すれ違う学生たちの歩みも心なしか浮かれているような気がした。
芝生の只中にガラス張りのモダンなカフェが見えてきた。大学に併設しているためか、午前中でも席の大半は埋まっているように見えた。
席を見回すと、外から見える位
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 7 / 全8話
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スーパーの駐車場は半分も埋まっていなかった。二十時を過ぎてピークを越えたのだろう。出ていく車のほうが多い。
「それで、なぜここに?」と真琴が言った。
曽根はシートにもたれると、車載時計で時間を確認した。
「うまくいけば本部が押えたアプリ履歴が手に入るはずです」
曽根が疲れの滲んだ顔を両手でぬぐった。協力者について当てがあるといった手前、夜まで尽力していたに違いない。理由を言わずに呼
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 6 / 全8話
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古賀亮太に任意で事情を聴いていると知ったのは翌朝のことだった。真琴は曽根に呼び出されて生活安全課の個室に入った。曽根は対面に座ると強張った表情で口を開き、古賀亮太が重要参考人になった経緯を話した。
「でも、多摩川の事件は古賀亮太には無理ですよね?」
曽根は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「私のときは通信の秘密と言うやつで、全面的に開示してもらうことはできませんでした。出張中だったのは間
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 5 / 全8話
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曽根は車で署に向かっていた。
レンタカーや廃墟に踏み込んだことをどう説明すればいいだろう。黒伏が何を知っていて、どう出てくるのかもわからない。
ひとつ確かなのは、廃墟の一件が公になった今、捜査本部は多摩川の遺体と古賀美月失踪事件を繋げざるを得ないということだった。
答えがでないまま個室に入ると、黒伏は紙コップのコーヒーで暖を取りながら、向かいに座るよう促した。黒伏の背後に立つ蟹江は
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 4 / 全8話
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曽根は多摩川付近で大掛かりな聞き込みを行ったが、軽バンはもちろん不審車両について目立った収穫はなかった。当然だ。地取りで召集されたものの、ふたを開けてみれば犯人に繋がる満足な情報を与えられていない。闇雲に聞き込みをしても成果が出るとは思えなかった。
コンビニの駐車場に車を止めて運転席で休憩すると、外で風に当たりながらスポーツドリンクを飲んでいた連れの捜査員が呟いた。
「無駄だなこりゃ。マ
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 3 / 全8話
通勤客に紛れて駅を出ると、コートのポケットに手を突っ込んだままロータリーの端で車を待った。
台風一過で早朝から抜けるような青空だった。風が肌寒く、いよいよ秋めいてきたと思っていると、足元の木の葉を吹き散らして黒い車が目の前に滑り込み、運転席の窓から曽根が顔を出した。
真琴は近づいて、無人の後部座席を一瞥した。
「優秀な刑事をつけるって言ってませんでしたっけ?」
「わたしのことですよ」曽根は笑
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 2 / 全8話
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また朝が来た。神代真琴はテレビで繰り返される台風情報を聞きながら着替えを終えて、玄関の全身鏡の前に立った。ミニマルなデザインのスーツだが、思い出せないぐらい前に買ったものでくたびれていた。視線を自分の顔にもっていくと、短く切られた髪と薄い顔でスーツと調和がとれている。
良くはないが最悪でもない。
鏡越しに身支度を終えた夫が現れて、かがんで靴ひもを結び始めた。
「なんか昨日眠れてなかっ
【ミステリ】切り裂きジャックの帰還 1 / 全8話
あらすじ
1
デスクから顔を上げると、生活安全課の少年係は曽根ひとりだった。腕時計を見て日誌を閉じ、コートを手に立ちあがると内線電話が鳴った。無視しようと思ったが、同じフロアで残業している数名が首を伸ばして、早く取れというように曽根を見ていた。
舌打ちして電話に出ると、外からかけているのか雑音がひどかった。
「曽根か?」
蟹江の声だとわかって気持ちが強張った。努めて平坦な口調で答えた。