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20030429 電気のプラスマイナス

 何故、電子は「負」となったのだろう。

 磁気では磁針の決まった先が常に南北を指し示すので、それぞれを南(S)極、北(N)極$${^{*1}}$$と称するのは解りやすい。電気の場合は電子が「負」、原子核が「正」になっている。「陰」「陽」という別の言い方もあるが、どうして電子の電気が「負」で、原子核もしくは陽子が「正」となったのだろうか。

 「上」「下」でもいいし、「白」「黒」でもいいはずである。二種類しかないのだから、とにかく対になっている言葉であればいい。数十年前に考え出されたクォーク$${^{*2}}$$では粒子の性質を表すのに赤青緑の色$${^{*3}}$$を使っている。

 「正プラス」「負マイナス」という言い方はアメリカ科学者フランクリンが考え出した$${^{*4}}$$。フランクリンが「プラス」「マイナス」を考え出した頃はまだ電子の存在は知られていなかった。従って電気という物は「原子からの電子の移動$${^{*5}}$$」という考え方は全くなかった。

 電気に二種類の性質があると言うことは、フランスの科学者デュ・フェイ$${^{*6}}$$が言い出した。当時は電気と言えば摩擦によって発生する静電気のことであった。デュ・フェイはガラスを摩擦することによって出来る電気と琥珀を擦ることによって出来る電気とは違う種類の電気で、電気はこの二種類に分類できるとした。

 デュ・フェイはガラスに発生する電気を「ガラス電気vitrée$${^{*7}}$$」、琥珀に発生する電気を「樹脂電気résineuse$${^{*7}}$$」と呼んだ。

 その後フランクリン$${^{*8}}$$は、電気は二種類であるが、「電気の素」は一種類しかなく、電気の現象は物質中に存在するその「電気の素」の過不足によるものとした。フランクリン$${^{*9}}$$は「電気の素」の存在の確認は出来なかったが、こう決めた。「電気の素」が過剰になった状態を「プラスplus」、不足している状態を「マイナスminus」と名付けた。

 さて、ここからである。「電気の素」の実証が出来ていないので、何が過剰か不足かが解らない状態である。そこで「ガラス電気をプラス」とするか、「樹脂電気をプラス」にするかは単なる取り決めになる。フランクリンは「ガラス電気をプラス」とした。どうしてそうしたかを、自分なりに考えてここで書いた$${^{*10}}$$ことがある。

 英語での電気の語源は「琥珀」を意味するギリシャ語$${^{*11}}$$である。琥珀を擦ると静電気が発生する。これがその由来である。フランクリンは、電気は物質からの「電気の素」の移動現象と考えた。琥珀を擦って電気が発生するのならば、琥珀から何かが出ていくと思うのが普通だろうと私は考えた。擦る物は毛皮でも絹でも手のひらでもいい。何で擦っても琥珀には樹脂電気が発生するので、琥珀から何かが出ていくと考えるのが普通ではないか、と思った。つまり琥珀は「電気の素」が不足した状態、マイナスとなった。

 「電気の素」の実体が解らない状態なので、新しい言葉を考えるのであれば、電気の語源である「琥珀」の電気現象を基本にフランクリンは考えたのだろう、と私は思った。しかしよくよく考えてみれば、琥珀は様々な物質から「電気の素を吸収する」と仮定ことも出来る。そうなれば樹脂電気は「プラス」になる。

 やはりフランクリンは硬貨を投げてプラスマイナスを決めたのだろうか。

*1 20030308 左右の定義
*2 物質の根源、宇宙創成の瞬間に迫る 電子・陽電子リニアコライダー計画 (JLC Project) 5. Quaks and Leptons
*3 キッズサイエンティスト 自然界の4つの力
*4 日本財団図書館(電子図書館) 通信講習用船舶電気装備技術講座(電気工学の基礎編・初級) 1・3 摩擦電気・電気力線・電界
*5 20030427 電気の本質
*6 Electrochemistry Pages Du Fay
*7 Yahoo! Encyclopédie - l'électricité
*8 20020923 電池とバッテリーとの関係
*9 TEPCO : 電気・電力辞典 | ベンジャミン フランクリン
*10 20010404 電流と電子
*11 TEPCO : 環境エネルギー学習 | ギリシャのタレスたちが静電気の存在を発見

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