最強のメンタルを作るには「感情の魚拓」をとるだけ ── 今からはじめるマインドフルネス入門㉓
「メンタルを強くしたいと思うことはあるでしょうか?」
この質問に「ないです」と、隣の人の目を見てキッパリと答えられるのは、既にメンタルが強い人だけでしょう(隣には誰が?)。
いつも静かな自信に満ちていて、大勢の前に出ても臆することがない。落ち込んでも引きずることはなく、気持ちを切り替えて、どんなときでも高いパフォーマンスを発揮できる。
このような超人的な人はそうそういません。
でもメンタルトレーニングすることで、今よりも心を強くすることができると言われています。どれだけ「私は心が弱い」と思っている人でも、心は少しずつ強くなります。それは「私には絶対に、死んでも、マジで自転車にだけは乗ることができない」と思っている人でも、トレーニングすれば自転車に乗れるようになるのと同じです。自転車競技の世界チャンピオンには慣れないかも知れないけれど、近所のコンビニへ行くには問題なく乗りこなせるようになれる、そして、日常生活ではそんなレベルの技術でも十分です。
そう、実は「心が強い」と考えると自分でもそうなれるか不安かもしれないのですが、実のところ「心が強い」というのは「心を強く保つための技術を持っている」人のことなのです。その技術を成長の過程で自然と身につけた人もいるでしょう。でも、自分から学んで身につけることだってもちろんできます。
もしあなたの周りに、落ち込んだり不安だったりしてもすぐに気持ちを切り替えられる人、どんなときも高いパフォーマンスを発揮する人がいたら、もしかしたらその人もメンタルトレーニングをしているかも知れません。
今回は、メンタルを強くする技術のひとつ「感情の魚拓」の取り方についてご紹介します。
感情は姿を変える
「感情の魚拓ってなに?」
と思われるのは当然です。感情は魚ではないし、哺乳類でもないし、そもそもそういう問題ではありません。感情は物理的な形がないものなのです。墨を塗って紙に押しつけることはできません。
でも、まず知っておきたいのは「感情はどんな瞬間にも、刻々と姿を変えている」ということです。このことは瞑想に慣れ親しんでいる方には理解しやすいかもしれません。
一般的な集中瞑想は「呼吸」に注意を向けて観察するトレーニングですが、「呼吸」も毎回同じように見えて、その深さや長さや広がりやキメの細かさといった要素が、毎回すべて違います。これらの要素が組み合わさってできている一回の呼吸は、毎回、すべて姿が異なります。
このことはよく、空に浮かんでいる雲に喩えられます。
どれも似たような雲に見えるけど、よく見れば実は形がどれも違うし、しかも大気の影響を受けて、毎瞬わずかだけれども形が変わっていく。
これが感情にも言える、というわけです。
感情の魚拓をとる
「頭にくる!」「寂しい……」「心配だ」「すごく不安」「超楽しい」「うれしい」といった、私たちが感じる感情も実は毎回姿が違います。なんなら毎瞬間、その感情の姿は変わっています。
「うそん」
と思った方もいるかもしれません。でも「毎回、毎瞬、感情の姿はすべて違う」ことに気づかないのは、自分の感情をよく観察していないためです。よく見ていない物の変化に気づかないのは、当然ですよね。
しかし、それも仕方がありません。だって私たちは「自分の感情をよく観察しましょう」なんて学校では教わらないし、ましてやその方法など想像もしてこなかったからです。
じゃあ、どうやって自分の感情を観察すれば、その姿に気づくのでしょう?
答えは、体の感覚です。
以前「直感は鋭いタイプ? 直感の正体が科学的にわかったお話」の記事で、直感を体で感じるという内容をご紹介しました。感情も同様です。感情も体に反応を与えます。
たとえば、
ものすごく悲しくなったときに、涙が流れる。
ものすごく緊張したときに、鼓動が早くなる。
ものすごく恐ろしいときに、手が震える。
ものすごく不安なときに、呼吸が浅くなる。
ものすごく嬉しいときに、笑顔になる。
ものすごく心配しているときに、脇が汗ばむ。
ものすごく怒っているときに、全身に力が入る。
そのような経験をされたことがあるかと思います。
でも、「ものすごく」じゃないときも、体は反応しているのです。
「ちょっと頭にくる」ぐらいでも、体は反応して様々な変化を起こしているわけです。その反応を観察することで、感情の大きさや姿を捉えられます。例えば「あの人、頭にくる!」という怒りの感情が生まれたとしましょう。
その「怒り」の姿を把握するのに、体の反応を観察するのです。たとえば、
頭の後が重い。こめかみ締め付けられる感じ。頭の中心が熱い。
鼻が痒い。耳がキーンと鳴る。目の奥がピリピリする。
喉が絞られている。喉が広がっている。
両肩が重い。背中が硬い。胸が広がっている。
肺が狭い。呼吸が浅い。呼吸が長い。
同様に、腹部、腰回り、下半身についても観察します。
体を観察しようと思えば、いくらでも要素があり、そして感情によってその組み合わせは無限にあります。これらの要素を一つの「色」だとしたら、様々な絵の具の色があり、しかも様々な濃淡があることになります。
感情の魚拓をとる、というのは、今この瞬間の感情の姿を、体の感覚を使ってとらえる、ということです。魚が感情で、体が紙、というわけです。
ためしに「今」、自分がどんな感情なのか、そしてそれがどんな姿をしているのかを観察してみましょう。30秒ほどのミニトレです。
いかがだったでしょうか。
もし、上手に出来なくても気にしないでください。これは練習をすればするだけ上手くなっていきます。
さて。ではなんで
「感情の魚拓をとると、メンタルを強く保てる」
のか?
それは「客観的に観察することの効果」について以前の記事でも取り上げましたが、簡単に言うと、観察することで感情から距離を取って、感情の影響力を弱めることができるためです。
「激しい怒り」はあっても、その影響力を弱めてしまえば、飲み込まれることはありません。どれだけ大きな炎でも、離れてしまえば熱は感じません。
このあたりの解説も含めて、最強のメンタルを作る「瞑想技術で最強の必殺技!」について次回は解説いたします。必見です。
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