見出し画像

「雑念を手放す」……って、ふつうに難しくないですか?── 今からはじめるマインドフルネス入門⑰

 一般的に、「瞑想中に雑念が浮かんできたら、そのことに気づいて、手放す」とよく言われています。

「て、手放す、だと……?????????」

 と、瞑想初心者の方はクエスチョンマークが多めの疑問が頭に浮かんで来て、気づけば「?」マークの数を必ず数えています(人によります)。それも当然です。だいたい雑念は形がないものだから、手放すといわれても、その感覚がわからないのです。

 今日はこの「雑念を手放す」という心の運動のコツをご紹介します。

友達としての「雑念くん」。

 瞑想中、アンカー(たとえば呼吸)に集中しているときに、雑念が頭に浮かんでくるのはとても自然な生理現象です。それ自体はなにも問題ありません。瞑想にも不都合はありません。ひきつづき、雑念は雑念として頭のなかを泳がせつつ、瞑想中の私たちはアンカーに注意を向け続けます。

 ただ、時として。

 その雑念の影響力、あるいは引力によって私たちの注意力がアンカーから引き離され、いつの間にか雑念のことで頭がいっぱいになってしまうことがあります。

 その際には、まず「気づく」ことが大事だとこれまでの記事で紹介してきました。つまり「いま呼吸から集中が逸れていた、と自覚する」ことでしたね。そして「いま、雑念にとられていたんだな。そんなこともあるよな」とありのままを受け入れます。

 集中瞑想では、この次のステップとして「雑念を手放す」という段階に進みます。

 これは雑念から注意を引き離して、ふたたびアンカーへと注意を戻すのに必要な、重要な行程です。ここをおざなりにしてしまうと、たとえもう一度アンカーへ集中しはじめたとしても、いとも簡単に気が散って、先ほどの雑念に注意を引き戻されてしまうことがあるからです。影響力の大きな雑念の場合、一度とらわれた注意を引き戻すことは困難です。

 もちろん物理的に雑念を握っているわけではないですが、比喩的には、雑念くんという悪い友達が「一緒に遊ぼうぜ」と手を握って引っ張ってくる状態です。こちとら試験勉強があるというのに、悪友は執拗にモンハンで狩りに出ようと誘ってきます。このままでは試験勉強のためのペンを握ることはできません。

 そしてもし一瞬だけペンを握ったとしても、悪友から反対側の手を握られていたとしたら、勉強に気持ちが入るわけがありません。だから、きちんと悪友の「雑念くん」の手を放す必要があるというわけです。

「心に書きとめる」という技術。


「あんたはそう簡単に言うけどさ。こっちは目では見えない頭のなかの作業をやってるわけよ。そんな説明聞いたからって、『ハイソウデスカですか』とすぐにできるわけないじゃない」

 ごもっともとです。

 それなので、もし雑念をうまく手放せないときのために、ひとつテクニックを憶えておいてください。

 それは「心に書きとめる」という技術です。

 前回の記事では雑念をありのままを受け入れるというお話をしました。しかし「手放す」ときにはただぼんやりと雑念をイメージするのではなく、具体的に

「あ、いま頭が○○のことを考えていた。」

 と、まるで句点まできちんと打つような感覚で、きちんと言語化して心に書きとめるのです。このことで自分の頭の中を客観的に捉えられるようになり、雑念と距離を作りやすくなります。雨雲との距離をとることで体が濡れずに済むのと同じように、雑念から距離ができればその影響力が下がります。そうすることで格段に雑念が手放しやすくなります。


「あ、いま頭が○○のことを考えていた。そんなこともあるよな。でも今は瞑想中だから、呼吸(あるいは他のアンカー)に戻ろう。」

 と、しっかり心に書きとめる。これが雑念を手放しやすくするテクニックの1つであり、プロセスそのものです。

「僕、試験勉強があるから。(キリッ)」

 という清々しい態度。きっとジャイアンも分かってくれます。

 瞑想中、雑念へと注意が逸れたとき、それをもう一度呼吸に戻す際に脳が強化されることが研究からわかっています。つまり、この「手放す」プロセスをトレーニングしていくとで、私たちの脳はより強く、しなやかになっていくというわけです。

 自転車や、口笛や、スキップと同じように、この「手放す」ことも練習すればするほど上手になっていく瞑想技術のひとつです。ぜひ意識してやってみてください。

 そして「瞑想技術のひとつ」と書いているように、実はまだまだ他にも瞑想の技術は数多くあります。それら技術については追々ご紹介していくので、もし興味を持って頂けた方はフォローを宜しくお願いいたします。

 それでは明日は、それでも瞑想が手放せない状態「モンキーマインド」についてご紹介したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?