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【詩】We were born

少年よ、よく気づいたね
そうだよ、I was bornなんだ

〈生まれる〉とは、生まれさせられることであり
私たちは誰も、自分の意志でなく生まれさせられた
We were bornなんだよ

それは、ただ文法上の規則であるだけでなく
人間の、人生の、存在の、最も重大な真理なんだ

だから、少年よ
君は、この、生まれさせられる事態について
単なる文法上の発見を越えて
もっともっと突き詰めて考えなければいけないよ

人間は、蜉蝣かげろうではないのだから
子を作って生むために存在しているわけではないんだよ
人間は、蜉蝣ではないのだから
理性でもって考え抜くことができるんだよ
人間は、蜉蝣ではないのだから
子を作らないことを選べるんだよ
人間は、蜉蝣ではないのだから
生き死にの悲しみの連鎖を断ち切ることができるんだよ

少年よ、君も知っているとおり
子どもは空から子宮へ降ってくるのではないし
人間が何もしないのに、精子が卵子に入り込むこともないんだ

少年よ、We were bornなんだ
私たちは誰も、自分の意志でなく生まれさせられたのだが
それは不可抗力の自然現象でもない
そこには、ただ生みの両親の意志だけがあった

だから、少年よ
君のお母さんが、君を生み落としてすぐに死なれたのだとしても
君が、それを重荷にする必要はない
君が、そこに責任を感じる必要もない
君は、生まれさせられたことに感謝する必要すらないんだよ
君のお母さんは、君を生み落とすために死なれたのではないのだからね
君のお母さんは、自分の命と引き換えに君を生み落としたわけでもないのだからね

ただ君は、もしも生き続けるならば
蜉蝣になってはいけないよ
人間として、生きなくてはいけないよ

蜉蝣にならないこと
それが
生まれるとは生まれさせられることなのだと気づいた君の
唯一の責任であり義務なのだ
 



本作は、吉野弘の詩『I was born』への返詩です。


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