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班長のはなし 後編

「…と、まあこんな感じです。何か不明な点があれば…私の家はその角を曲がったとこなので、いつでも聞きにきてください。それではよろしくお願いします。」

町内会長が話を終え
すっと去っていった。
私はしばらくその場に立ち尽くしてしまった。
ああ…まじか。

班長の仕事。
それは回覧板を回すだけ。
そう思い込んでいた私は
先のことを思い
若干、うなだれていた。

とは言え
そんな大したことではない。
班長としての最初の仕事、
それは町内会費を集めること。
普通に考えれば
別にどうということはない。

だが
私の気分が暗くなっていった原因、
それはスケジュールだ。

四月。
まあまだ四月だが、
今月はライブがやたらとあり
家にあまり居れないような
日程が見えていた。

まあ、でもね。
ゆっくりと合間をみて
やれる時にやろう
そう思っていたのだが
この集金活動には
期限があったのだ。
それは四月の中頃。

…まじか…。
これはいつやればいいんだ…。

そんな事に頭を悩ませながら
ツアーを回っていた。
でもまあ
一旦出てしまえば
そんなことは忘れてしまっていましたけどねw

とにかく移動の前や
ツアーから帰還した夕方
いろんな時にやるしかない。
とにかく隙間という隙間で
インターホンを押しまくった。

まず、
私が気をつけた事。
それは自分の形だ。
普通の人よりも
断然感じが良くないことは自覚している。
なんなら髪も何色なんだか
わからない。

ぼけっとしてると
そんなつもりはなくても
変に威圧してしまう恐れがあるので
とにかくにこやかに、
丁寧に、
感じ良く
を心掛けて家々を回った。

実際回ってみると
皆とても優しく、
ああ、回ってきてしまったんですね、
お察しします、
と言った感じで
とてもスムーズだった。
これは感謝しかない。

だが
どちらかというと
どのタイミングで行っても不在のお宅が
数軒あり、
それが大変だった。
期日が決まっているので
うかうかしていられない。

最終的に最後の一軒、
もうどうしようもなかったので
失礼は承知で
物凄い早朝にインターホンを鳴らした。

「朝から申し訳ありません、町内会費の〜」
と話し出した矢先に
何度かいらっしゃってくれてましたよね、
逆にすいません…
と言ってくれて
どうにか事なきを得た。
場合によっては
こんな朝っぱらからから…
と文句でも言われそうな時間だったが
なんというか
良い人でよかった。

それが期限の最終日だったので
そのままその会費を
会長宅まで持って行き
ひとまず
私のミッションは無事に終了した。

とにかく
無事に完遂できて良かった
ということと
私にもこういった
実に人間的なことが
まわってくるなんてことも
あるんだな、
というお話でした。

にこやかに過ごすことの大事さを
強く実感できた
妙に忙しい
四月。
まだまだやることはあるが
とにかく
なんでも楽しみたいですね。

と、書き溜めていたのだが、
気づけばもう五月。
兎にも角にも
頑張っていきたい所存である。

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