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【今でしょ!note#105】大規模アジャイルSAFeに学ぶ事業マネジメント

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

大規模アジャイルフレームワークとして、SAFe(セーフ、Scaled Agile Framework)という考え方があります。


SAFeの全体像

アジャイル開発と聞くと、10人未満の比較的小さなチーム単位で、小規模で実装とテストを繰り返しながら、システムやソフトウェアを開発することを指すことをイメージする方が多いと思います。
従来のウォーターフォール開発と呼ばれる開発手法と異なり、開発期間を短縮できて、アジャイルな(素早い)開発として、割と一般的になってきた言葉かと感じています。

一方でSAFe自体は世の中全体で一般的にはなっていないように感じますが、このアジャイルの考え方をベースに、より大きな組織やプロジェクト単位で実装するための役割・プロセス・価値観を定義したフレームワークです。
50〜125人程度のプロジェクト従事者から成る比較的小さな組織から、数千人規模の複雑なシステムまでサポートするものとされており、全体的な目的は「ビジネスアジリティの向上」です。

顧客をすべての意思決定の中心に置き、市場投入までの時間、生産性、品質を向上するものと定義されており、平たく言うと、顧客への提供価値に最短距離で近づくための仕事に集中して、そうでないものは捨てるための仕事のやり方、という理解でいます。

私は、5年前に一時期集中的にSAFe研修やオンラインプログラムに参加して、自分の仕事に小さくでも適用できないか?と考えてチャレンジしたことがあります。
その時、SAFeをどこまで適用するかは企業やプロジェクト単位で個別判断で良いものの、その考え方やプロセスで部分的にでも取り込むことで、仕事の生産性ややる気が上がると感じたものがあるので、いくつか取り上げてご紹介します。


1.SAFeの心臓は、PI Planning

まずは、SAFeで最も盛り上がるとされているイベントである、PI planningです。
PIとは、Program Incrementの略で、アジャイルにおけるスプリントのように、スクラムと呼ばれる小規模なチームが一定の仕事を終わらせるための区切られた期間を指します。

PIの期間は、大体8〜12週間が適切とされており、PI planningとは、次のPI(一定の仕事周期)において優先的に取り組む仕事について、プロジェクト関係者全員が2日間ほどオフラインで集まって決めるイベントです。

2日間のアジェンダですが、大体次のような流れで進んでいきます。(SAFe特有の言葉は、私の解釈でやんわり一般的な言葉に変換しています)

  1. 事業責任者からのビジネス現状説明

  2. プロジェクトマネージャーから予め共有された10の優先タスク案説明

  3. アジャイルチームにおける各タスクの見積もり

  4. プロジェクト全体(ARTと呼ばれる)に依存するリスク洗い出し

  5. 次のPIにおけるタスクの自信度投票

このアジェンダ設定に流れる考え方が好きなんですよね。笑
いくつか、好きなポイントを述べていきます。

先2〜3ヶ月で取り組む仕事のインプットがトップダウン

現場で考えた事業計画を徐々に上に上げていって、上の人がそれを指摘するような形で事業計画を形にする、みたいな組織は、意外に多いのではないでしょうか?

本来、組織で取り組むことの優先付けは、その組織の責任者の仕事であり、トップダウンとボトムアップの双方のアプローチが必要だとしても、トップダウンアプローチがまずあってのことだと考えています。

PI planningでは、まず事業責任者がビジネスの現状を客観的に構成メンバー全員に説明するところから入り、そこからやるべきことを予め現場のリーダーが整理した状態、かつメンバーに予め共有された状態で始まります。

外部環境変化から、現場の仕事に落とし込むところまでのところが最も頭を使うところなのに、それを現場に丸投げせず、一定の方向性をトップダウンで示しています。
あらゆる現場でこれから必要と思われることをやっていこう!という時に、「とりあえず集まって現場で意見まとめて発表して・・・」みたいなよくあるやり方ではなくて、ある程度方向付けと具体案に基づく議論ができるので、より行動に繋がりやすい仕掛けとなっています。

具体的な実施事項の評価はボトムアップ

次に実際の現場でありがちなのが、トップの意向に現場が全くコミットせず、実質的な形にならないケースです。
この点、PI planningでは、トップダウンで10の優先事項が示された後、それを実装するチームがどれくらいの時間があればできるか、実施する上でのリスクは何か、次のPIを成功させる自信があるか、ということをボトムアップで意思表示します。

コミュニケーションが一方向的になっておらず、組織の計画自体に不安があればここで意見できるので、現場のコミット度が上がります
最後に書いた「自信度投票」は、各タスクが成功できそうか、メンバーが1〜5で指で表示するというものですが、全員が5に近づいていくようやり方をチューニングしていくプロセスです。

これらトップダウンとボトムアップのプロセスが上手く仕掛けとして設計されているので、新しい取り組みをメンバーを巻き込んでやっていく時には、かなり参考になるアプローチだと考えています。

2.チーム間イベントの同期

2点目は、SAFeでいうところのケイデンスとシンクロナイゼーションという考え方です。
ケイデンスとは、繰り返されるPI(2〜3ヶ月単位の仕事の周期・期間)や、PIをさらに区切ったイテレーション(2週間単位の仕事の周期)の長さを示します。

これを組織内でシンクロさせる、つまり、複数のPIが役割分担で別々の仕事を担当していても、全体で仕事の周期、もっと言うと、定例会議のような場を組織全体で同期させることで、異なるチーム間での打ち合わせ調整にかかる稼働や、別のチームの仕事が終わるのを待機する時間をなくす、と言う考え方です。

打ち合わせ時間の調整しても、顧客満足度上がらないですよね。
こういう価値創出に直結しない仕事のプロセスをできるだけ削ぎ落とすのが、ビジネスアジリティを向上するという価値観が出ているところです。

仕事の進め方に意識的にリズムを創り出し、リズムに乗ることで全体の仕事に流れを作る。この考え方が、部分的にでも導入しやすい要素と捉えています。

3.振り返りを固定イベントにする

最後は、アジャイルにおけるスプリントでも共通する考え方ですが、必ず「振り返り」がプロセスの中に組み込まれていることです。

振り返るから、これまでのやり方の課題を整理できて、次のアクションが決まりますよね。
次にやるべきことを決める時の出発点は、大体振り返りがスタートなのです。振り返りをスタートにするから、次やるべきことがブレないと考えています。

これだけ振り返りが重要にも関わらず、やるべきことに追われてしまうと、つい振り返りを忘れてしまう時ってありませんか?
誰かが言い出したから振り返りの時間を持つ、みたいなことも現実的には多いと思います。

でも、それだと、振り返りをやったりやらなかったりする。
だから、「振り返り」が必ず固定イベントで入っていて、頭を使わなくても振り返りができるアジャイルの考え方は、あらゆるチーム運営で取り込みやすいと考えています。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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