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連載長編小説『別嬪の幻術』15

        15

「お父さん、止めなかったな」別館を出て、本館には移らず川端通に出た。車道を走る車がなかったこともあり、洞院才華は信号まで行かず、川端通を横切った。歩道に入り、素早く堤防へと降りた。
「当たり前どすえ。お父さんは天皇帰還説を支持してるわけとちゃうさかい」
「どういうことだよ」
「御所についてからとちゃうのん、話すのんは」
 そう言うと、洞院才華は鴨川に沿って南下した。加茂大橋ではなく、荒神橋を渡り、鴨川を離れると河原町通を丸太町まで下った。丸太町通を京都御苑まで行くと、堺町御門から御苑内に入った。砂利道に足を取られながら歩き、僕達は建礼門前大通りの松の木の木陰に腰を下ろした。近頃気温は落ち着いて来たが、御所の紅葉が色づき始めるのはまだまだ先だ。早歩きで逃げて来たこともあり、背中は少し汗ばんでいた。
 承明門の向こうに、紫宸殿が気持ちばかり見える。僕は缶コーヒーを二人分買い、一本を洞院才華に手渡した。「おおきに」と彼女は微笑んだ。軟禁されてはいたが、自宅ということもあって食事などは普段通り与えられていたのだろう。華奢な体格に変わりはないが、少し肉がついただろうか。
 洞院才華はプルトップを上げ、前髪を掻き上げるとコーヒーを口にした。マスターのコーヒーが恋しおすなあ、と郷愁じみた声で彼女は言った。夏季休暇が明けてから、僕も一度しかカフェには足を運んでいない。そろそろハムカツサンドが食べたくなってきた。旅館を出る時、カフェに洞院才華を連れようかとも思ったのだが、やはり騒ぎになると思い、やめた。
 僕もコーヒーを一口飲んで、お父さんが天皇帰還説の支持者ではないとはどういうことかと訊いた。洞院才華は京都人らしい悠長な笑みを口元に浮かべた。
「天皇帰還説は裕人君が提唱して、少しずつ支持を得て来たもんやろ? そこにお父さんは元々関わってなかったんどす。今かて、別に何かをしてるわけとちゃうんや。お父さんはただ、裕人君らに会合場所を提供しとるだけどす」
 やはりあの日、丹羽裕人は誰かと会っていたのだろう。しかし洞院恭介ではなかった可能性が高い。月読神社で見つけたリストの中の誰かと会っていたはずなのだ。
「じゃあどうして、あのリストにお父さんの名前を?」
「そら、会合場所を提供してるんやさかい、仲間と言えば仲間どっしゃろ? あとはそうやねえ、これを月読神社で見つけた人に、うちを見つけてもらうため」
「でもご両親は君の捜索願を警察に届けてたんだ。これを見ても全員が旅館にいるとは思わないんじゃないか」
「築山はんが来てくれたやないの。さっきも言うたけど、うちにたどり着くのんは築山はんやおもてたさかい……嬉しかったどすえ」
 洞院才華に讃えられると、どこか気味悪く感じる。紫宸殿をぐるりと囲む土塀に目をやり、苦くもないコーヒーに苦さを感じながら座り直した。彼女といると、ペースが崩れる。掌の上で転がされている気がして無性に腹が立つ。
 一つ咳払いをして、僕は話題を変えた。ずばり、佐保への言伝は何だったのかということだ。洞院才華は「うちに何かあったら、月読神社に行っておくれやす。そこにうちの覚悟があるさかい、それを持って、警察に駆け込んでほしいんや」と淀みなく答えた。しかし言い終わってから、佐保の名前を呟くと顔を俯かせた。佐保が殺されたことに責任を感じているのかもしれない。その点について僕は訊いた。君は佐保と風見を殺した人物を知っているのか、と。
 洞院才華は無念そうに首を横に振った。
「うちは裕人君らがやろうとしてる計画のことしか知らん……佐保が殺されたのも、さっき築山はんに言われて知ったんよ。風見はんのことも……せやから、誰が佐保を殺したんかもわからんのえ」
「駒場敬一は? 東京で、駒場敬一が殺された事件は知っているのか? あの事件は君が軟禁される前に起きてるはずだ」
「それはよう知ってます。築山はん、音声データも聴かはったやろ? あの時話にあった一人殺したっていうのはまさに駒場さんのことどす。東京のデモがえろう大きなって来て、裕人君やら早瀬はんやらにとって、皇室を批判する駒場さんの存在は目障りになって来たんどす。それだけ影響も持つようになって、天皇帰還説も雲行きが怪しなって来て、それで駒場さんを殺した……でも誰が殺人犯かは知らんの」
 僕はリストのコピーを取り出し、殺人犯は一人なのか、この中にいるのかと洞院才華に訊いた。彼女はたぶん殺人犯は一人だと言った。そしてこの中にいるはずだ、とも。
「裕人君らにしたら、人一人殺してしもて、もう後戻りはできひんし、計画の実行に焦ってるはず……」
「それで、止めようとした?」
 洞院才華は頷いた。しかし彼女のことをすべて信用するわけにはいかない。洞院恭介についても、本当は天皇帰還説の支持者かもしれない。相手の思考を操るのは彼女にとっては朝飯前なのだから。
 なぜ今になって計画を止めようとしたのか僕は訊いた。天皇帰還説については以前から知っていたはずだ。洞院才華はまず、殺人事件が起きていることを知らなかったと言った。駒場敬一が殺害された事件を知ったのは、まさに客室に日本酒を運び込んだ時だという。襖を開ける前に聞こえてきた会話……それで何かがおかしいと感じ、音声を録音していた。その後音声データを複製し、会話の書き起こしとわかっているだけの天皇帰還説の支持者のリストを制作した。支持者については洞院才華も把握し切っていなかったらしい。洞院恭介にそれとなくどれだけの支持者がいるのかと訊ねると、三十名以上の名前が挙がったという。その多さに驚愕した洞院才華に、さらに衝撃的な事実が伝えられた。支持者として列挙した国会議員の殆どが、彼女の研究を駆使して早瀬誠に洗脳されているというのだ。その計画は水面下で押し進められており、やがては首都移転が国会で承認されるよう、全体の三分の二以上の議員を夢催眠により支持者にするのだと聞かされた。
 きっかけは洞院才華が一年生にして古都大学の最優秀論文を獲得し、それを父親である洞院恭介が何気なく自慢したことだった。その際洞院恭介は「これで裕人の理想も実現できるんとちゃうやろか」と冗談半分に言ったそうだ。それを真に受けた丹羽裕人は早瀬と結託し、三年近く計画を押し進めて来たのだという。
 それを知った洞院才華は、自身の研究の悪用と殺人事件への責任を感じ、何とか計画を止めようとした。その際、唯一の武器になるのが録音した音声データと洗い出した天皇帰還説の支持者リストだった。それを丹羽に突き付けても握り潰されることはわかっていた。だから洞院才華は、丹羽らにその証拠品が見つからないよう隠す必要があった。ただし誰にも見つからない場所に置いていては意味がない。自分から連想させる場所に置かなければ……そう思い、寺社仏閣に詳しい今堀を頼った。彼は月読神社を提案した。洞院才華はその神社を知らなかった。今堀曰く、京都の人でも月読神社を知る人は少ないのでは、とのことだった。洞院才華は月読神社に音声データと支持者リストを隠し、それから佐保と会い、自分の身に何かあれば月読神社に行ってほしいと頼んだ。そして複製した音声データと支持者リストを持って丹羽に計画の中止を求めた。応じなければ、音声データを警察に手渡すと言って。案の定丹羽はデータを揉み消そうとした。洞院才華が原本は別にあると言うと、それを血眼になって探し始めた。そして洞院才華は洞院恭介に引き渡され、建設中の別館で軟禁されることになった。すべては自分の研究から始まったのだと強く責任を感じ、計画を止めようとした。
「わかってくれはるやろ? 築山はん……これはうちが止めなあかん事件なんどす。事件解決、計画阻止、何でもやる覚悟なんどす」
「今の話が本当なら、確かに君が何とかしないといけない事件なんだろう。すべて君のあの論文から始まったというならなおさら――こんなことを言うのは酷だけど、君の責任は重い。でも、君が動くのは危険過ぎる。これから、君が逃げ出したことを知った丹羽市議達が君を探す。事件を解決するためには天皇帰還説の支持者に当たる必要がある。そこに洞院才華がいたら、捕らえられて、今度は軟禁どころじゃ済まない。それに、これも君には酷な話かもしれないけど、僕は君を信用していない」
「いややわ……そないなこと言うて」
「夢催眠に誰より詳しいのは君だ。確かにあの論文には、具体的な実験方法が書いてあったし、誰でも真似はできるかもしれない。でもだからといって君がこの件に関わっていない証拠はないんだ。君が計画を止めようとした話も……嘘かもしれない」
「そない言うたら、どうにもならへんわ。嘘吐いてない証拠なんかどこに見つければええんやろ……」
 コーヒー缶を握る手に力が入った。僕は自分でも、どうしたいのかがわからなかった。事件解決で、彼女を超えられる。それが僕のモチベーションだ。だがたぶん、洞院才華は嘘を吐いていない。それはつまり、彼女は白ということだ。事件を解決した先に、洞院才華への勝利はなくなってしまう。たとえそれが間違っていたとしても、洞院才華は容疑者の一人でなくてはならない……。
 だが僕は、彼女が無関係だと証明することはできると口にしていた。洞院才華は真鍮のように顔を輝かせた。僕は駒場敬一殺害事件、佐保殺害事件、そして風見殺害事件それぞれのアリバイを確認した。洞院才華はまた「いややわ」と呟き、京都の事件が起きた時は軟禁されていたと言った。九月二日についても、旅館で客の前に出ていたという。彼女が犯行に及べるはずはなかった。
「アリバイがあったとしても、君なら人を殺すことはできるけどね」
「いややわ……築山はんもようわかったはるやろうに。開発者が自分の開発したもんで犯罪に手を染めるやなんて、一番やったらあかんことどすえ。うちはそんなことせえへん」
 そうだな、と呟くことしか僕はできなかった。洞院才華はこれで信用してくれるかと訊いて来たが、僕は答えなかった。なおも事件解決に意欲を示す彼女を僕は手で制した。
「さっきも言ったけど、君は動かないほうがいい。危険過ぎる。聞き込みは僕や警察に任せてほしい」
「覚悟はしてるんや」
「その覚悟だけいただいておくよ。今事件解決に洞院才華ができることは、知ってることをすべて話すこと。それだけだ」
「やけど話したかて、築山はん信用してくれへんさかい……」
「信用しないわけじゃない。話を聞いて、その真偽を確かめる必要がある」
 洞院才華は珍しく、僕から視線を逸らした。その目は空に少し突き出た紫宸殿を見上げているようだった。紫宸殿には高御座があったはずだ。テロ計画が成功すれば、丹羽達はここの高御座に今上天皇を座らせ、首都移転を声高に宣言するのだろうか。
「それと気になってることがある」
 僕は月読神社で証拠品を見つけた時、封が解かれていたことを伝えた。洞院才華は眉をひそめたが、茶封筒に入れたのは支持者リストと音声データ、その書き起こしだけで、持ち去られたものはなかった。彼女自身、しっかりと封はしていたという。
 彼女の話では、丹羽ら支持者は計画の露見を恐れて洞院才華の隠した証拠品の原本を血眼になって探していた。そのうちの一人が月読神社で証拠品を発見した……だがなぜか、それを持ち去ることはなく、中身を確かめただけ……そして洞院才華に言伝られた佐保が月読神社に行くと、証拠を手にする前に殺害された。
「支持者の中に、裏切り者がいる可能性は?」
「いるとしたら、幹部どすえ。後から入った人らは殆ど夢催眠で暗示掛けられてるさかい……」
「幹部っていうのは?」
 洞院才華はリストの中の四人を指差した。丹羽裕人、早瀬誠、尾高柊一郎、乗金久雄。
 天皇帰還説は一枚岩ではないということか……。
 これについて、洞院才華は渋面を浮かべた。天皇陛下を京都に取り戻し、千年の都を復活させるという目的は全員が一致していることではあるものの、殺人事件のような血生臭いものが絡むのをよく思わない者がいるのかもしれないと彼女は言った。特に丹羽や早瀬は議員を三年も掛けて洗脳するなど、あくまでも一政策として国会で承認させようとしていた。そのやり方が正義かは別として……。その点、組織の中にずれが生じていてもおかしくはない。
 そもそも幹部四人が集結したきっかけは何だったのか。立場も違えば年齢も違う者ばかりだ。丹羽と早瀬の繋がりはわかるが、尾高と乗金がなぜここに加わることになったのか。その点について、洞院才華は把握していた。丹羽の提唱した天皇帰還説を最初に支持したのは早瀬だったらしい。その時すでに、早瀬は衆議院議員に当選していた。そんな早瀬に天皇帰還説を囁いたのは洞院恭介だった。洞院恭介と早瀬は学生時代の同級生で、卒業後も長年に渡り関係が続いていた。早瀬が旅館を訪ねた時、甥の政策について話したのだ。それからが本格的な始動だったという。
 では乗金と尾高はどうか。実はこの二人は高校時代の先輩後輩の関係に当たるという。乗金が先輩で、尾高が後輩だ。早瀬の妻が乗金宝商の常連ということもあり、早瀬が乗金に声を掛けた。乗金は丹羽の政策を熱烈に支持し、組織と宮内庁を結ぶ人物を探していたところ、尾高が宮内庁に勤めていることを掴み、話をつけた。その後洞院才華の論文を手に入れた組織は別嬪の幻術によって支持者を増やしていくことになった……。
「発言力が一番強いのは?」
「やっぱり早瀬はんやろか……次に裕人君……乗金はんで尾高はんの順になるやろなあ」
 政治家は権力を振りかざすものだ。最も強い権限を持つ早瀬に不満が溜まっている可能性はある。丹羽についても、最年少でありながら天皇帰還説の提唱者ということででかい顔をしているのを年長者はよく思っていないかもしれない。飛び抜けたカリスマ性があれば別だが。彼はカリスマというよりアイドルだから……。
「さすがに尾高はんは乗金はんに頭上がらんやろうけど、でも乗金はんは数年前に病気しはって、会合に出れへんこともあるさかい、もしかしたら尾高はんのほうが発言力は増してるかもしらん。上下関係は、さすがに覆せへんのやろうけど……。最近も、乗金はんのお店に泥棒が入ったり、大変なことが起きとるさかい……」
「泥棒?」
 洞院才華はこっくりと頷くと、小さな顎に人差し指を当て、松の木を見上げるように黒目を動かした。それは今年の春先の話らしい。乗金宝商に泥棒が入り、店員の目を盗んで窃盗を働こうとしたそうだ。手にはハンマーを持っていたが、アクセサリーとジュエリーは強化ガラスに守られており、持ち出されることはなかった。異音に気づいた乗金が犯人を取り押さえたが、犯人が学生だったこともあり、警察には通報しなかったらしい。
 僕はその話を聞いて、佐保を連想した。佐保は正真正銘学生だ。もし佐保が盗みに入った後、何かしらのトラブルを起こし、後に松尾大社で殺害されるまで発展した……。あるいは風見ならどうだろう。風見も学生だ。彼は僕に乗金宝商を紹介した。なぜ乗金宝商だったのだろう。高級ブランドなら、他にいくらでもあるのに……。それに僕が千代へのプレゼントを買いに行った時、乗金は風見のことを覚えていた。あの時僕は、風見も最近来店したのだろうと思ったが、そうではなかったのかもしれない。僕が店に足を運んだ時、他に客はいなかった。宝石店だ。行列ができるような店じゃない。店員が客のことを覚えているのは不自然ではない。しかし乗金は、風見の名前をはっきりと覚えていた。それは職業柄、だろうか。風見が窃盗を働いたから、乗金ははっきり覚えていたのではないか。その後大きなトラブルに発展し、落とし前をつけさせようとまず佐保に近寄った。そして殺害。その後風見……ところがそれでは月読神社と繋がらない。駒場敬一の事件とも繋がらない。佐保は明らかに、洞院才華に託された証拠品を取りに行って殺害されたのだ。乗金が犯人なら、月読神社にテロの証拠になるものがあると知っていたなら、なぜそれを持ち出さなかったのか。
 発言力の低下に不満を抱いていた……だが証拠品が警察の手に渡れば自分もテログループの一味であることは火を見るよりも明らかだ。組織への不満、しかし少しでも証拠の発見を遅らせようとした。持ち去らなかったのは、自分が持っているのは不都合だと考えたから……処分してしまえば済む話だが、組織への不満からそれはしたくなかった。
 乗金がそうした葛藤を抱えていたのだとすれば、窃盗未遂事件を警察に通報しなかったことも納得できなくはない。春先なら駒場敬一は殺されていない。当時テロ計画がどのような状況だったかはわからないが、少なくとも、殺人を起こす予定はなかっただろう。組織の中で、警察に目をつけられるような問題は起こすなという指令があった程度ではないか。乗金は、万が一にも、窃盗未遂事件から天皇帰還説の陰謀が警察に察知されることを恐れたのかもしれない。
「その窃盗未遂事件は、その後どうなったの?」
「どうもこうもありまへん。乗金はんが通報せんかったんどす。それで終わり。学生さんもそのまま帰してもろて、何もなかったことに」
 では今回の事件とは無関係というわけか。僕は続けて、早瀬の不正について訊いてみた。野々宮が言っていた、京都新薬との癒着だ。だが洞院才華はゆらゆらと頭を振った。
「そないなことみんな知ってる。知ってて口にはせんのんや。ただ、今どうなってるかはわからへんさかい、なんとも言えんけど」
「君が軟禁されてる間に事情が変わって、もしかしたら早瀬の弱味につけ込もうとしてるやつがいるってこと?」
「そこまでは言うてへん。でも、そういうことどす。うちが知ってるのんはせいぜいこのくらいのもんや。連続殺人が始まってからのことはなんにも知らんのえ。堪忍しとくれやす」
 洞院才華は缶コーヒーを飲み干すと、空き缶を椅子に置いた。僕はその缶を手に取り、捨てておくと言った。洞院才華は「おおきに」と目尻を柔らかく曲げると、立ち上がった。僕も立ち上がっていた。そろそろ、御所を出たほうがいいかもしれない。
「築山はんは大学戻らはるのん?」
「一応ね。洞院さんは?」
「うちは行くとこあるさかい。そこで匿ってもらうつもりどす」
「友達の家?」
「……まあ、そうどす。古都大学の学生の、信頼できる友達の家にいるさかい、築山はん心配は結構どすえ」
 誰が心配なんかするか、と僕は心の中で毒づいた。砂利に足を取られず見事に歩く彼女の後姿は美しい。巻き上げる白煙にその黒い髪が霞んだ時、この煙が晴れたら彼女は消えているのではないかと思った。僕は僕のコーヒーを飲み干した。僕が飲み干した空き缶をごみ箱に放り投げ、洞院才華の飲んだ空き缶をそのまま持ち帰った。

16へと続く……

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