№333 フィットネスビジネスにおける幽霊会員
こんばんわ。白石です。
総合フィットネスクラブは幽霊会員という利用しないが会員でいてくれる存在について放置してきました。それが今回のパンデミックで露呈され厳しい状況に立たされています。
■ 利用しない会員はクラブにとって好都合
クラブ側からすると利用しないのにお金を払い続けてくれるのだからありがたい話です。マシンの稼働にも水道光熱にも負担がかかりませんから。
「わざわざ会費が勿体ないですよ」とお知らせする義理はないのかもしれません。お知らせまでとはいきませんが未来場者について来場促進のDMを送っています。というクラブはあるかもしれませんが、続けるか?どうするか?を問うような案内は皆無だと思います。
解約についても店頭のみのところが多く、ササっとはできません。
■ 幽霊会員が増えるとどうなるのか?
利用がないのにお金が入ってくる状況が続きますから、一般的に考えると夢のような状態です。サービス提供をしていないのに収益があがる・・・それを長年続けているとそれが当たり前の感覚に。
・来ないのはメンバーさんの勝手、だけれどもお金はもらう。
こんな思考が正当化されていきます。私もおかしいと思っていましたが、そうでないと運営できないしと放置していました。規約や入会誓約を武器に。
比率としては、地方で未来場対応をしっかりしているクラブで全会員の10%ぐらいかなと。なので、2000名のクラブであれば200名ぐらいです。
未来場対応をしていないと15%、20%と上がっていきますし、都会になればなるほど、この率は高い傾向にあります。
ある大手クラブではこの未来場対応を「寝た子を起こす」と例えて、ご法度にしている噂もあります。
「寝た子を起こす」 せっかくおさまっている事柄に無用の手出しをして、またまた問題をひき起こすたとえ。
こうなると収益性の錯覚が起こります。本来あるべき姿ではないのにうまく運営がいっているという錯覚です。これが今回のパンデミックで顕在化され、幽霊会員は一気に退会し、通いたいけど通えない会員は休会するというような流れになりました。その結果、会員数は約15~20%減となっています。休会者が復帰してきても10%減は確実だろうと思います。
もちろん幽霊会員だけが要因ではないことは付け加えておきます。
そしてもう一つ、サービスの向上意欲が薄れるということがあります。
「こちらが何もしなくともお金を払ってもらえる」という感覚が生まれてしまい、そうするとサービス改善への意欲が薄れて、競争力が低下してしまう。サービスの健全性が無意識に損なわれてしまう可能性があります。
また、利用せずに会費だけを払ってくれるメンバーが一定数いると換算してサービスの全体設計をしてしまい、有事の際に対応できなくなります。
■ サービスを提供していないメンバーに無意味な継続課金をやめる
そうは言ってもクラブを安定的に運営して雇用も守らなければならない現状がある中でどうすれば良いのか?
3ヶ月連続で利用がない会員に対して「契約を継続する意思確認」を行うこと、そしてそれでも反応がない場合はその意思確認時に6ヶ月利用がない場合は自動的に休会扱いになることを通知する。もちろん休会なので無意味な課金はなく、メンバーが復帰したい時には速やかに復帰できます。そしてその意思確認通知の中に、明確に「我々はサービス提供をしていないのにお金をもらうのは心苦しい」ということを何らかしらの形で伝えると良いでしょう。
■ 総合クラブ全体が1人の顧客を失ってしまう
いやいや、それでも今より収入が減るので厳しい・・・
のであれば、それでも安定的に運営できるようにサービス力を上げる、新しいコンテンツをリリースする、利用しない会員が増えないように努力するなどするべきです。
今のまま突き進んでも中長期的には厳しいのですから。今後、新たなパンデミックが短期間で発生する可能性もありますし、自然災害を含めて有事はいつ起こるか?分からないことが今回で分かったと思います。
・本物に変わらなければ生き残れないということです。
今の運営を続けていくと総合クラブ全体が衰退していきます。「入会しても続かないし、ムダにお金を払うシステムだし、それなら格安ジムに行こうかな、成果を出したいからパーソナルジムに行こうかなと」となれば、他業態あるいは他業種に顧客を奪われ失います。
これまで私なりに現状や理想を書きましたが、これを実現させるって並大抵ではないですよね。今の現実がありますから・・・なんせ、すぐに良い結果は出ないですし、反対に短期的には悪い結果が出ることが明白です。
社内で方針を理解してもらうことすら不可能かもしれません。
一方で、今のままでは厳しいということも内心で理解しているはずです。そんなことを想う今日この頃です。何とか頑張ります。
※ 本記事はネットフリックスの取り組み記事を参考に書いております。
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