山下雄登

photographer / videographer / editor

山下雄登

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    最近の記事

    沢登りとヤス穴

    かつてマタギが寝泊まりに使用していた「ヤス穴」に行ってきた。 和賀岳の登山道を進み、途中道を逸れて藪をかき分けながら沢に降り、そこから上流に向かって登っていた先にそのヤス穴はある。 誘ってくれた友人から事前に「川を歩いていく」と聞かされていたが、実際は「歩く」なんて呑気なものではなく、いわゆる沢登りだった。 行く手には滝がいくつかあり、それらをクライミングしていく。滑らないように、一つひとつを慎重に選択し、でも力み過ぎずに体を運んでいく。久しぶりのハラハラするアクティビテ

      • 凍てつく世界に流れるメロディ

        先週末、西和賀の志賀来にある氷瀑へ。 氷瀑とは、瀑布(滝)状の氷柱のこと。 岩から染み出た湧き水が、寒気でゆっくりゆっくり背丈を伸ばしながら凍てつき、人の子知らぬ間に荘厳なたたずまいに変化(へんげ)する。 朝晩肌を刺すような気温が続かないとこの光景には出合えない。 フキノトウが芽を出すころには、この氷の巨柱は迫力に欠けるものとなっている。一年のわずかな期間だけ、人の心を魅了し、一種の戦慄を憶えさせるものとなる。 しかし、そこに美や畏れを感じるのは人間だけだ。自然に意図

        • オロセ大氷柱

          「オロセ大氷柱」に挑んできた。 西和賀の焼地台公園にあるオロセの吊り橋を渡り、ライオン山の斜面を登った先にある巨大な氷柱。 山の岩肌から突き出たその様は、まるでライオンの牙のよう。 それが、通称「オロセ大氷柱」だ。 昨年は、友人たちが「挑む」姿を撮影するために対岸にいた。 今年はいよいよ自分が「挑む」チャンス到来。 友人のzenと、天候のおかげだ。 いざ、オロセ大氷柱へ。 手すりの縁の高さまで雪が積もったオロセのつりばしを渡り、 ライオン山にむかう。 着雪した樹

          • 雪渡り

            友人のzenは、奥さんのeiとともに錦秋湖畔の借家に暮らしている。2階の窓から一望できる錦秋湖には人工物が映らないので、ただこの家一軒がほとりにあるかのような錯覚を覚える。 雪で覆われた景色は遠近感と高低差を奪い、スキー板を履けばそのまま向こうの山麓まで、直滑降でたどり着けそうだ。 朝もう一度訪れると、太陽をまばゆく反射していた。 細めた目をよく凝らすと、狐の雪渡りした跡が描かれていた。 堅雪かんこ、凍み雪しんこ。 狐の子ぁ、嫁ほしいほしい。 (『雪渡り』宮沢賢治

            雪あかり

            いつ行っても西和賀はたのしいが、やっぱり冬は格別だ。歩けば歩くほど美しいものに出合える。 今回は氷柱を見れたらオーケーのつもりだったけど、行きの新幹線で「雪あかり」があることを知った。ラッキー。運の良さに自分を褒めたくなる。

 西和賀の雪あかりは、町民総出で雪を固め、彫り、灯す。町全体が会場なので、車でぐるぐる巡ってたのしめる。
 湯本温泉の通りで、バケツで固めた雪の灯籠をバックに鬼剣舞が披露されていた。踊りも、お面も、太鼓も、笛も、かがり火も、ゆらめく影もすべて見惚

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            最初で最後の築地市場マグロ競り見学

            ハマキ・イン・ザ・ダーク。|キューバ56日ひとり旅 #10

            キューバ滞在もひと月ばかり過ぎると、食事や買物、宿泊、移動に関するコミュニケーションはスムーズになってきた。「革命広場までのタクシー代はいくらですか?」「それは高い。1CUCなら乗る」「お腹を下すので、朝食のフルーツは少なめに(フルーツが豊富なこの国で幾度となく、痛い目にあった)」など質問や交渉等がメインだ。 どこかのツアーに参加しているわけではない、私のノープラン旅は選択の連続である。いや、そもそも人生そのものが選択の連続であるのだが、旅をしていると「Si(はい)」と「N

            チノ。|キューバ56日ひとり旅 #9

            ひとえで垂れ目の私が、この地で浮くのはたやすい。 すれ違う人、階段に腰掛ける人。外を歩いていると私の顔に、ぎょろりと大きな目玉たちから好奇のまなざしが注がれる。 ときおり、その中から「チノ!」と呼びかけられる。チノ(chino)は、日本人や中国人などの東洋人を指すスペイン語だ。 最初は、あなたたちに対して「ネグロ(黒人)!」と言っているようなもんだぞと感じ、この呼称があまり好きではなかった。あーはいはい、と右手を挙げて軽くスルーしていた。 しかしあまりにも多くの人から

            革命記念日とおっさんの汗。|キューバ56日ひとり旅 #8

            7月26日は革命記念日。 1953年のこの日、27歳のフィデル・カストロ率いる若者たち百数十名が、モンカダ兵営を襲撃した。この兵営には当時、バティスタ政権の兵2,000名がいた。バティスタは、アメリカ資本を背景に私腹を肥やし、キューバ国民を貧困に追いやっていた独裁者である。 襲撃は失敗に終わり、逮捕後の拷問や虐殺を含め、反乱軍の若者は半数が亡くなった。カストロ自身も逮捕されたが、弁護士としての一面を持っていた彼は、その後の弁論で世論を味方につけて釈放される。このときの弁論

            街外れの3人組。|キューバ56日ひとり旅 #7

            たぶんこの国には「騒音」という言葉が存在しない。そう感じるくらい、キューバ人たち、とりわけ10〜30代の若者は周囲を気にすることなく、スマホをスピーカーモードにして自分の好きな音楽を大音量でかけている。イヤホンやヘッドホンをしている人はなかなか見かけない。 キューバ人は音楽が好きだ、ということは来る前から想像していたことだ。しかし、そのイメージ(先入観)と目のあたりにする現実には違いがあった。 まずひとつは、音楽のジャンル。 ソンやボレロといった、いわゆるブエナ・ビスタ

            客引きとの応酬。|キューバ56日ひとり旅 #6

            ハバナ、コヒマルについで3番目の滞在地は、キューバの中央南部に位置する港湾都市、シエンフエゴス。ハバナからは230キロほど離れており、高速バスのViazul(ビアスール)を利用して、およそ4時間半で着く。 ハバナに比べると観光客は多くないが、客引きたちはたんまりいる。単純に観光客一人に対する数が多いためか、声をかけられる率は体感でハバナの10倍はある。 まず、Viazulの駅に到着してバスを降りると、民泊のカサの勧誘をしてくるオッチャンやオバチャンたちが押し寄せてくる。人

            ヘミングウェイの愛したコヒマル。|キューバ56日ひとり旅 #5

            旅が1週間を過ぎたあたりから、すっかり曜日感覚がなくなってきた。 非日常的な時間と空間を過ごしているからということもあるが、通りで見かける連中に日々かわり映えがないことも大きいかもしれない。 みんな軒下や木陰に腰をおろして、おしゃべりしたり、スマホをいじったり、スピーカーから流れる音楽に体を揺らしたりしている。この人たちはいつ仕事をしているのだろうかと常々思う。 ふたつめの滞在地コヒマルは、『老人と海』の舞台となった海辺の小さな町。かつてアーネスト・ヘミングウェイの愛艇

            もっとも孤独を感じるとき。|キューバ56日ひとり旅 #4

            キューバに来て1週間が経った。半袖短パン&サンダルから顔をのぞかせている部分はすっかり丸焦げになり、額からはポロポロと死んだ皮膚が落ちてきている。 夜そんなに暑くない日でも、日焼けのひどい箇所がカイロのように身体を熱するので、冷房が欠かせない。今宿泊しているカサ(キューバ式の民泊)は、石造りで窓が少なく風の通りもあまりよくない。 隣は飲食店で、大きな換気扇がこちら側を向いている。日中その風は来る。しかし、それに群がるのはハエだ。そのため窓を開けると、網戸なんてないため、ハ

            バッサリバルベロ。|キューバ56日ひとり旅 #3

            27年間の人生で常に避けてきたことを異国でついにやってみた。 キューバ滞在最初の地、ハバナではドミトリーに泊まっている。当初は民泊のCasa(カサ)への宿泊を検討していたが、キューバ放浪の情報収集を考えると、旅人が多く集うドミトリーのほうがよいと判断した。もちろんホテルは基本的に価格が高いから選択肢にない。 宿の名前は「Enzo’s Backpackers」。ドミトリー1泊6CUC(=6米ドル)という安さと、オーナーのEnzoやママが英語で親切に対応してくれるホスピタリテ

            モヒート、コカ、セニョリータ。|キューバ56日ひとり旅 #2

            やはり人との交流がおもしろい。 実質1日目の7月13日は、一大観光地のハバナ旧市街を散策した。 スペインとアメリカの支配を受けた時代に築かれたコロニアルな建物が並ぶ通りを歩くと、手垢のついた表現だが、映画のセットの中にいる気分になる。 とはいえ、高揚してあまり上ばかり見ていると、野良犬(というより、キューバでは飼い犬のほうが少ないようなので、単に犬という方が正しいかもしれない)の糞を踏んでしまうので、足元の注意は怠らない。 海沿いのプエルト通りからマレコン通りにかけて

            はじめの洗礼。|キューバ56日ひとり旅 #1

            時差ボケによる浅い眠りから、夜明け前に目が覚めた。 なるべく物音を立てないよう二段ベッドのはしごを慎重に降りる。iPhoneのライトを手で囲いながら、かすかな光を頼りにザックから着替えとタオルを取り出し、浴室に向かう。 案の定、シャワーの出はか細いが、予想に反してちゃんとお湯が出る。頭から爪先まで、狭い範囲を一箇所ごと丁寧に、指の腹を使ってこすり洗っていく。 速乾タオルで水気を拭い、新しい服に着替えると、ようやく長時間移動から開放された心地になった。 ハバナのホセ・マ