だいぶ年上に理不尽にブチギレられた話。
10年ほど前、いい大人にブチギレられたことがあります。
正直なところ、私は悪くないと今でも思っているのですが、大人という存在について、認識を改める良いきっかけになった出来事がありました。
その認識というのは、大人も子供もそんなに変わらないということです。笑
ただ、「大人げないなぁ〜」と思いつつも、その出来事があったおかげで、その後の人生において大事な事を身につけられたと考えられるようになりました。
今回は、その当時の出来事を共有できればと思っています。
若造が大人の飲み会に参加することに
当時20代前半だった私は、とある飲み会にお呼ばれしました。
「芸能関係とか経営者とか結構集まる飲み会あるんだけど、名前売るなら参加した方がいいと思って。どうだろ?」
共通のアーティストが好きだということで、飲み屋で仲良くなったJさん(仮名)が、仕事関係の飲み会に何者でもない私を誘ってくれたのです。
私は二つ返事で行くことにしました。
当時は音楽活動をしており、まだまだ駆け出しの頃でいわゆる「大人たち」と交流できる機会が少なく、人脈もありませんでした。
そんな飲み会は、自分の名前を売るためには願ってもないチャンス。
数日後、指定されたお店の前でJさんと待ち合わせをしました。
「おう、お疲れ〜」
Jさんがいつもの気だるそうな感じで声をかけてくれたんですが、店構えをみるとおしゃれなダイニングバー。
安居酒屋しか行ったことのない私には、すぐにわかりました。自分には不相応だということに。
不安な顔をしていたのがJさんに悟られたのか、
「あ、会費は俺払うから安心しな笑」
神様がいました。
Jさんと離れ離れになる
そそくさと受付を済ませ、自分たちが座るであろう場所に行くと、どうやら席はひとりひとりクジ引きで決めていくシステムでした。
てっきり、Jさんの横に座って色々な方に挨拶できるものだと思っていた私は、いきなり窮地に追いやられます。
クジを引くと、案の定Jさんと離れ離れになり、一抹の不安を覚える私。
「まあまあ、後半になったらみんな席移動するだろうから、その時は俺も紹介するよ」
そう言ってJさんは、1番奥の席に向かっていきました。
私は番号が記された手元の紙を見ながらテーブルに向かうと、女性2人と男性1人が座っていました。
ここで、私の中で葛藤がありました。
当初の想定していたプランと異なり、Jさんと離れ離れになったことで、どのような立ち位置で望めば良いかという迷いが生じていたのです。
様子を伺いながら2時間を過ごすのか、いや、それでは来た意味がない。
だとしたら、無理をしてでも何かを残さなければ自分の名前が売れないのではないか。
1秒にも満たない、0コンマ何秒の間で自分が出した答えは後者でした。
これが、最初の選択ミスでした。
同じテーブルの方にご挨拶
元気よく挨拶を行い、女性2人は「あ、よろしくお願いします〜!」
と返してくれたんですが、問題は私の隣に座っていた男性です。
「うぃ〜す」
目を合わせず、そう言ってきました。
それが、今回のお話でメインの登場人物となる「大人くん」です。
大人くんの年齢は、恐らく当時で40歳以上。自分より一回りも二回りも上です。
私は人と仲良くなる時は直感タイプで、第一印象を引っ張ってしまうので最初が良くない人間とは仲良くなったことがないのですが、
「あ、コイツは遺伝子レベルで無理」
容易に拒絶することが可能でした。
ただ、今ならなぜ大人くんが私をそんな風にあしらったのかがわかります。
なぜなら、私が何者でもなかったからです。
芸能関係や経営者が集まる飲み会。色々な思惑があると思っていて、スケベな心を持って異性と出会いたいという人もいれば、ビジネスに繋げたいという人もいます。
私だって、名前を売りたいという思惑で来ています。そんな中で、ただの若造が隣に来てしまったので、「コイツはないな」と思ったんでしょう。
そう思われても仕方がないと思います。
ちょっと雲行きが怪しいなと思ってはいましたが、今回は総勢30名ほどの飲み会。
まだまだ挨拶をする人はたくさんいます。
「まだ始まったばかり。このチャンスはなんとしてでもモノにしよう。」
明日を夢見る若造は、そう誓うのでした。
いざ飲み会開始
お偉いさんの乾杯挨拶が終わり、まずは自分のテーブルの方々と乾杯を済ませ、それ以外の方達へ挨拶回りを行いました。
この時のために、事前にネットで飲み会のマナーを調べてきた若造。
同世代とばかり飲み会をしていた私は、こういった会がほぼ初めてでしたが、わからないなりに「失礼があってはいけない」という気持ちはありました。
まあマナーといっても、例えば、乾杯する時は目上の人よりもグラスを下にとか、ビールを注ぐ時はラベルを上にするとか、そういった類のものです。
「お疲れ様です!木葉と申します!」
そうグラスと合わせまくること数分。無事全員との挨拶が終わり、席に戻るやいなや、大人くんにこう言われました。
「は〜、律儀だね〜」
いきなりつつかれました。完全に嫌味です。
真意は分かりませんが、姑からイビられる嫁ってこんな感じなんだと思いました。
もう大人くんの隣、嫌だなぁ。そう思いつつも、序盤で席を離れて別のテーブルに移動することはマナーとしてNG。
しばらくはそのテーブルに居続けることにしました。
4人で話をしてみると、どうやら私以外は知り合いのようでした。女性2人は芸能関係といえば芸能関係で、大人くんも近しい業界の方でした。
どんな話をしたかは全く覚えていないのですが、今回のMCは大人くん。ぐりんぐりんに回し始めます。
この女性2人は優秀な方々で、無茶振りMCのキラーパスに対してもうまく対応していました。
ただこの時、若造は違和感を覚えました。
一見楽しそうにしている女性2人ですが、目が笑っていないというか、嫌々大人くんのお神輿を担いでいるようにしか見えなかったのです。
その違和感はまさに的中していて、追々Jさんから真相を聞くこととなります。
お酒も進み少し酔いが回ってきた頃、トイレに行きたかったのか、大人くんは席を立ちました。
これが、大きなターニングポイントとなりました。
若造、大人くんからMCを奪い取る
大人くんが席を立つやいなや、女性2人からここぞとばかりに質問攻撃を受けました。
内容はあまり覚えていないのですが、今何してるの?とか彼女いるの?とか、誰の紹介で来たの?とかそういう話だったと思います。
ちょうどさっきまでクソMCがいて、全く自分のこと喋らせてもらえなかったので。
そのため、ここぞとばかりに持ち前のお調子者を生かし、ちゃんと笑かすことに成功しました。
もちろん、女性2人は優秀なのでその力のおかげもあります。
あれ、これもしかして早くもチャンスか?この2人に気に入られたら、そこから大きな仕事を手繰り寄せられるかもしれない。
そう決意した若造は、女性2人に質問を開始します。
ここでの内容も全く覚えていないのですが、後輩感や何も知らん感を出し、仕事やプライベートなことを聞きつつ、とにかく褒め・ボケに徹しながらファシリテーションを行っていました。
3人でキャッキャやっていると大人くんが戻ってきたのですが、さっきと様子が違うので若干戸惑っているようでした。
MCに復帰しようとする大人くんでしたが、うまく会話に馴染めません。無理やり入っても、女性側の温度感が下がっていくのが分かりました。
サーモグラフィーだと完全にプリンセスブルー。美しすぎる青です。
そして、女性2人は「もうあなたのお神輿はいやっ!」と言わんばかりに、大人くんの話を雑に終わらせ、結局大人くん以外の3人で話をする比率が増えたのです。
そう、私が大人くんからMCを奪い取ってしまったのです。意図せずです。
さすがにこの状況はまずいだろうと思ったのですが、女性の反応を見たら絶対このままの方が良い。
そう思った若造は、お神輿にまたがることを決めました。
これが、2つ目の選択ミスでした。
グズる大人くん
飲み会が後半に差し掛かろうとしたころ、大人くんは完全にふて腐れていました。
10分前までは頑張って取り返そうとしていたのですが、そうなると、ハマらない。
人生経験の浅い私でもわかるくらい、清々しいほどハマらない。
おそらく、大人くんはトーク力に自信があったんでしょう。しかし、それはキャバクラなど女の子のお店でチヤホヤされた感じをそのまま持ってきた感じ。このシチュエーションだとハマるわけがありません。
そして、大人くんはグズりました。
悪い気がして、ちょっと気を利かせて話を振ったりしましたが、シカト。その気を利かせたことを気に食わないようです。
「(じゃあもういいわ、こいつ)」
お酒が入ってしまった私は、もう見切りをつけて大人くんを除いた3人で楽しく飲もうという決断をしました。
これが、最大の選択ミスでした。
そして事件は起こる
女性2人と私で楽しく飲んで、キャッキャウフフやっていたところに大ボケをかましたところ、席が揺れるほどの爆笑が起こりました。
よっしゃ、ウケた~!!
と思った、その時でした。
バァァン!
大きく鈍い音が残ったテーブルをしり目に、ものすごい剣幕で大人くんは私にこう叫んできたのです。
おめぇなぁ!!ハマってると思っていい気になってんじゃねぇぞ!!全然ハマってねぇからな!
会場内がしんと静まり返りました。
ちなみに、どのくらいの剣幕かというと、加藤浩次が山本圭壱に対して言った、「当たり前じゃねえからな、当たり前じゃねえからなこの状況!」のやつくらい。
最初は笑って「なんすかー!」とかごまかそうとしましたが、大人くんの顔を見てすぐわかりました。
あ、この人ガチだ。
同じ席の女性メンバーを見ると、笑いに持ってこうとしてくれるものの、完全に引いてしまっていました。
この状況、どうしよう!?というのと同時に、私が思ったのは「いやお前じゃねぇかハマってないの。」
そう思ったのは内緒です。
ただ、プチンとは来ていましたが相手の方が立場は明らかに上。どこの馬の骨かもわからん若造がここでキレたり言い訳なんかしたら、完全に目をつけられることは確実でした。
奥の方で「どうした?」と心配そうに見ている、飲み会に誘ってくれたJさんの顔にも泥を塗ることになります。
その場はぐっと我慢して、「すみません!そんなつもりなかったんです!」
それくらいしか、言葉は出てきませんでした。
この事件以降、私は愛想笑いだけで1時間を過ごすことになりました。
大人くんはというと、怒りで私を制圧した後、意気揚々と話を回し始めました。
私に向かって、勝ち誇った顔で何事もなかったかのようにいじってきます。
ちょっとだけイジり返した方が面白いかも?と思ってジャブは打ってみたんですが、
「あぁ?なんだよ」
ダメだ、こりゃ。もう関係は修復できないようです。
今思うと、大人くんは自分の庭を荒らされたのが気に食わなかったんだと思います。
自分が主役の飲み会ばかり経験していたせいで、全く違う状況になるとグズってキレちらかす。
こんな若造が面白いと思われてる状況が許せない。※実際は女性2人が盛り上げてくれてただけで特段面白くなかった可能性はあります笑
こんな大人にはなりたくない、子供よりタチが悪いじゃないかと。
ただ、この経験があったことで、どのような飲み会でも、バランサーとしての役割を全うするようになりました。
お話ししたい人がいなかったら話す。ボケる人がいなければボケる。ツッコむ人がいなかったらツッコむ。
その場で空いているポストにすっと入る。余計なことはしない。
なぜなら、お酒の席では何が起きるかわからないからです。笑
Jさん、俺間違ってたんすかね
飲み会が終了して、私はこの状態だと二次会に行けないので一次会で帰ることにしました。
帰りのタクシーで一緒だったJさんに、事の顛末をお話ししました。
そこで大人くんの噂を聞いたんですが、「結構界隈から煙たがられてる系おじさん」でした。
かなり厄介者だったらしく、年下には結構えぐいことしてたみたいです。
でも、ちょっと力があるからあまりみんな強く言えないと。
そういうことであれば、女性2人の対応も納得がいきます。
※ちなみにですが、その後の二次会で大人くんは私のことをボロクソ言っていたそうです。かなり傷つく内容でした。笑
「Jさん、俺間違ってたんすかね」
「あんま気にすんな。お前はそれが正しいと思ってやったんだし。てかこんな若いやつにそこまで言うかね!?マジでおかしい人だよな。木葉、本当ごめんな」
Jさんの優しさに、少しばかり涙を流しました。
この日の最適解は、つまらなくても大人くんを気持ち良くさせ続けることだったのです。
数年後にまさかの再会
それっきり、その方とお会いする機会はありませんでしたが、仕事の関係で数年前に再会することがありました。
気まずいなぁ・・・と思っていたのですが、仕事なので私情は挟まずに接することに決めて、勇気を出しご挨拶に。
覚えてないかもしれないし、大丈夫。
オフィスの扉を開けるやいなや、大人くんと目が合いました。
一瞬緊張が走りましたが、飲み会当時は見たこともないくらいの満面の笑みで大人くんが
「初めまして、◯◯です〜!本日はよろしくお願いします!」
私のことは、やっぱり全く覚えていませんでした。笑
やった方は覚えてないことって、結構ありますからね。
まあ、個人的には忘れててくれて良かったんですが、ちょっとマウントを取らせてもらうと、数年経って私の方が立場が上になってしまったこともあり、大人ペコペコくんに進化?していました。
30分くらい話しても何も触れられなかったので、マジで記憶にないんだろうなと。
打ち合わせ中にその時の話をして謝らせたら、さぞ気持ちいいだろうなと思ったんですが、それをやったら次は私が大人くんに成り下がってしまいます。お仕事中ですし。
ここで大人くんは根絶やしにしないと。そう思い胸にそっとしまって、その日は終わって淡々と案件を進めることになりました。
でも、やっぱこいつ嫌いだわ〜wと思った話です。
色々と教訓になったことはあるんですが、世の中にはこういった人もいますし、地雷を踏んでしまう可能性があります。
みなさん、大人くんには気をつけてくださいね。
このような経験談をもとにしたエッセイを中心に、どんどん投稿していこうと思っているので、みなさん仲良くしてください。
自己紹介noteはこちらです。
色々な記事にスキしてくれるとめちゃめちゃ喜びますので、よろしくお願いします。