見出し画像

不幸中の不幸


「ジャンケンホイ!」
「あいこでしょ!」
「さくらの負けね〜!」
「ヤベエ!二人じゃん!」
「負けたら、座れよ!」
ジャンケンして喜んでいる。一昔前にやっていた。とんねるずのみなさんのおかげでしたの男気ジャンケンみたいだ。小学生の頃、楽しみにしてたコーナーの一つである。そんな入魂のジャンケンを女3人組は俺の前で繰り広げている。しかも、争っているのは俺の隣の席。
「ジャンケンホイ!」
「あいこで!」
「あいこで!」
「やったー!マイコの勝ち〜!」
「ミユ座れよ!」
「なんでだよ!なんでコイツの隣なんだよ!」
「仕方ないじゃん!我慢しろよ!」
俺が渦中で起こっている椿事が馬鹿馬鹿しく、京都の夜景と舞妓さんの情景を楽しんでいた。
「おい!なんで外見てんだよ!」
「えっ...」
ジャンケンで負けたミユが俺に噛み付いてきた。
「おまえ立てよ!」
「先に座ってたし...」
「お前いらねえんだよ!清水寺でいきなり消えるし、みんなが急いでるのに、走らねえしよ!」
「俺置いて行けばいいじゃん。」
「屁理屈野郎だな!黙れ!」
「ひどいなクソ女。」
「なんだって!お前、知ってんのかよ!」
「何が?」
「班を決めるときに、最後にお前だけ余っててこの班に入れてやったことを!みんな嫌いなんだよ!お前のこと!」
「そう。」
唐突に真相を告げられ、意気消沈して反論もできなかった。中学三年の修学旅行。言わば、小学校から一緒だった人たちの最後の旅行でこんなことを言われるとは、流石に失笑してしまった。
「ほらどけよ!腫れ物!」
「わかったよ。」
俺はしようがなく、バスの端に立たされて、宿までの30分、誰とも話さずに京都の夜景を見て物思いに耽っていた。
俺一人だけかなり落ち込んで、宿に帰り、みんなが談笑している中、入浴の準備をしてた。

「おい!海斗!ちょっと見張ってろ!」
不良である。コイツは、あまり好かなかったが、入浴の準備も終えたので、「わかった。」と一つ返事で立っていた。
何故か教師たちが忙しそうに駆けている姿を横目に、見張りを続けていた。そして、中を覗くと、誰もいない。
「おい!もう大丈夫か!」
と聞いても返事なし。
教師がこちらへ駆けてきた。
「おい何やってるんだ。みんな温泉に入ってるぞ。」
「今行きます。」
「誰かいるのか?ちょっと中見せてみろ。」
「は、はぁ...」
「おいなんだこれは!」
「どうしました?」
「吸殻だよ!お前吸ってたのか!」
「いえ、俺は何も。」
「嘘つくな!」
「俺は吸ってませんよ。」
「さっき、旅館の警報機が鳴ってたんだよ!犯人はお前だろ。」
「違いますよ。」
問答無用で喫煙者の烙印を押され、教師たちや全学級の生徒たちから、旅行中も白眼視される羽目に。


後日談だが、俺の疑いは晴れた。
そのあと、俺への追求が手ひどくなり、所持品を全て見せたが、ライターやタバコなどは出てこず、不良の名前を上げ、所持品を広げるとライターが出てきたのだった。それで、そして、俺は不良連中から、袋叩きされたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?