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恋が終わる音④

まだ蒸し暑さが残る9月。外に出たら汗が頬をなでるようなジメジメさ。

私は、少し清々しい気持ちで生活をしていた。

ここ最近の私は、もうすぐ始まる大学の課題を早めに片付けたし

自分の所属しているところの活動に精を出していた。

あの頃の自分とは打って変わったような人物像である。

恋愛なんて頭の片隅にもなかった。

しかし、意識してない時こそ出会いがあったりするものだ。

私は、ある日先輩に誘われて行った合コンのような会に参加した。

その手の類ではモテモテで慣れている先輩だったので、

まあまあな人数が集まった。

その中に、あの人はいた。

社会人だったから、職場の人間と二人で来ていた。

私服は普通におしゃれだが、着飾ったりしないシンプルなタイプ。

今思えば、元の素材が良かったのだろう。


偶々、私の隣に座ってきて

その会の時間のほとんどはその人と話した。

酔ってくるなり、お互いに打ち解けあい様々な話をし

その日は何もなく連絡先だけを交換して1日が終わった。

帰り道、私の頭の中にはその人のことで埋め尽くされていた。

「好きな食べ物はなんだろう?」

「映画とかみるのかな、、」

と、どうでもいいことを考えながら帰っていた。

久々に自分が恋愛をしている気になって、少しうれしかった。

柄にもなく、帰りの下り坂を鼻歌を歌いながら自転車で駆け抜けた。

すれ違った近所の人に、笑われた。

家に帰れば、すぐlineを開いて相手からの今日のフィードバックを確認。

「今日はすごく楽しかったです!」

違う、その言葉の続きが欲しいのよ。

「‘‘私‘‘とは話がよく合って、もっと話したくなった!」

あと一押し、と画面越しに私はつぶやく。

「今度二人で飲み行こうよ。」

、、、、勝った。

『行きます、ぜひ行きたいです』

このまま社交辞令では終わらせるわけにはいかない、、

『いつ空いてますか?』

なんて物事を抽象的な形から、具体的な方向に持っていく。

今までの経験と恋愛テクニック本から学んだ揺るぎない手順。

その日のうちに私はきっと恋に落ちてしまった。

当時の日常になんてものが存在してなかったから余計に意識した。

恋は盲目

この言葉は本当に的を得ている。

なんせ、自分がその状況になっていると気づかない内に陥っているのだから

怖い、怖い。

久々の感覚に、自分の心は踊りまくりのサンバ気分。

今思えばその夢の中からたたき出してやりたいくらいだ。

人は慣れない環境に弱い

変化に弱い

このことを頭に入れておかないと、ほんとに大事なことが

変化の渦に巻き込まれて見えなくなり、

慣れて落ち着いたころには、手遅れになった残骸だけが残り

後悔と失望の2つが私たちの両肩に重くのしかかる。

そこで、自分が傷ついていることに初めて気づく。

『ああ、こんなに血が出てたのか。』と。

傷口は化膿を起こし、ずいぶんと前から放置していたと知る。

『なぜ気が付かなかったのか。』



これは人生にも言えること。このことを私は身をもって経験する。










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