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【十二章】これが、札幌。

【十一章】へ

コンビニでヒッチハイクを続ける。
声をかけることにためらいがなくなった。
断られても、そりゃそうですよね。という感覚。
断られて落ち込むほうがもったいない。
違う人に声をかけにいったほうがいい。

にしてもやはり札幌ナンバーが多い。
あと一歩のところまできている。
しかし北海道はでかいので、そのもう少しがすごい距離。

胸が高鳴る。
もう少し。ここまで来た。もう少し。
札幌と書いたスケッチブックを常に掲げながら歩く。
最初のころは見られて恥ずかしい思いが強かった。
しかしここまでくると、見た人がどんな反応をしてるのか
を意識するようになった。
一瞥だけ、じっとみる、表情に出る、声をかけてくる。
さまざまだ。そして良い反応があったときはすかさず声をかける。この瞬間は絶対に逃してはいけない。

社用車の運転席にいたおっちゃんが僕のスケッチブックを見ていた。すかさず僕もそれに反応する。そしてドアウィンドウを開けてもらう。

次に大切なのは、相手が声を発しようとしてるか、ただ見ているかだ。
声を発しようとしているときは、待つ。じっとみているときは声をかける。ここでは相手が声を発しようとしていたので待った。
「札幌行く。乗せれる。」
彼はこの旅で一番渋い承諾をしてくれた。

【第十七号車 出張帰りの会社員二人】

僕がヒッチハイクしていたこの長万部のコンビニは、札幌方面が多いとこの方も言っていた。よほど有名なのだろうか。映画といえば八尾のアリオというように。

それはおいといて、ついに、札幌へ。
これが最後のヒッチハイクかもしれない。
札幌。このことばをどれほど待ち望んでいたことか。
そしてここからは下道。かつ、宿泊させてもらう北海道のおばあちゃんとも合流する必要がある。
札幌といっても広いので、任意の場所に行けるかどうか。

北海道のおばあちゃんに電話して、運転手と互いの要望を合わせていく。
しかし出てくる地名がわからない。
どこなんだそれは!!
しかし助手席にいた人が電話が聞こえていて、かわりに答えてくれた。非常にスムーズだ。
そして近くではあったものの、この人たちにとっては回り道になってしまう。が、それくらいいいんだよ、ということでそこまでおくってもらえることに。本当にありがたい。
このヒッチハイクで一生分の"ありがとう"を使ったかもしれない。
これではSMAPの"ありがとう"を歌えないではないか!ありがとう。

疲れと安心から私はまた寝てしまっていた。
起きたときにはもう付近まで来ていた。
「よく寝れたか?」
私は寝ているとき、からだが痙攣してビクッとなったり歯ぎしりなようなことをしてしまうのだが、そのことはヒッチハイクの後に知ることになる。このときもなっていたのかな 笑

ここでお別れとなってしまう。
これが最後か。付箋にメッセージを書いて渡した。
ここまで本当に長かった。しかしあっという間だ。
これはもうヒッチハイクしたものにしかわからない、達成感と悲しみの入り交じった感情だろう。

あとは北海道のおばあちゃんを待ちます。
とっても幼いときに会ったらしいのだが、覚えていない。
北海道のおばあちゃんからしても、こんなに大きくなって
という具合いだろう。

おじいちゃんの運転に乗せて、
ついに合流。

これまたなんともいえない感情だ。
これで終わってしまうのか、と。
そして、このnoteに書くことも終わってしまうのか、と。

お腹すいた。風呂に入りたい。寝たい。

まずはご飯をごちそうになりました。

"とんでん"というところで「天丼と茶蕎麦」をごちそうになりました。めちゃくちゃおいしい。天ぷらという料理を生み出してくれた日本に感謝です。ちなみに北海道のおばあちゃんとおじいちゃんはお寿司食べてました。

そしてそのあとはまず両親へ連絡。
本当に無事で良かったと思う。あとは北海道を楽しんで帰ろう。
旅行は嫌い(消費ばっかりだから)だけどこうやって挑戦を兼ねたものができて本当に良かった。

そしてご自宅へ。
お風呂おおおお!!
たかが3日なはずなのに、3ヵ月も風呂に入れなかったかのような感覚だった。本当に気持ち良かった。こんなにも風呂っていいんだ。ヒッチハイクでのことを思い返しながら。
最初拾ってもらって、そっから遠距離トラックとか、本当にたくさんあった。ヒッチハイクしてもなかなか見つからず、ただ時間だけがたっていく。頼りになるのは頼りない自分だけ。

「ニャーンオ」

ここには猫が2匹いる。
自由なお嬢様猫の"みこ"と
人見知りしましま黒猫"たま"だ。

みこはその名の通り、お嬢様のよう。
ご飯をニャーオとせがんでは、これは好きなやつじゃない!とどこかへ行ってしまう。そしてご希望のものが出されると、知らぬまに食べに来ている。そんな猫だ。
対してたまは僕を見つけた瞬間目にも止まらぬ高速で2階へ逃げてしまった。警戒心が強いのだろう。

もともと動物が苦手だった(獰猛な犬が小学校の帰り道と、同じマンションのエレベーターの向かいにいたからだ。こいつらすぐ吠える。ほんと怖い。)のだが、ここもチャレンジというわけで、この2匹の猫にはさわってみようと、猫の触られて喜ぶところを調べて試した。みこはこっちを見つめて、なんどか触わったのち、満足したのか不満なのか、去ってしまった。ねこのきもちはわからない。
たいしてたまは、そもそも現れない。どこにいるんだ 笑

2階の部屋を借りてそこでくつろぐ。
そこには部屋の大半をベッドとテレビと机と足にタイヤのついた服をかけるもので占めていた。
お借りした布生地のパジャマを着て、ヒッチハイクの達成をインスタにあげる。

本当にここまで来た。

【最終章】へ

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