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【十章】ここは地獄らしい。

【九章】へ

北海道についた。
しかしここは暗くて寒い。
自分のいた大阪がわりと都市だったってことを見に染みて感じる。
光りがほとんどなく、暗がり。
夜中なので人通りはまったくない。
ここでまたヒッチハイクするのか。
とりあえず近くを歩いてみる。

ん?なんだひまわりか?

ひまわりか?笑

なんの花かわからない。
誰か知ってる人がいたら教えてください 笑
なんなんだろう。このヒマワリモドキみたいなの。
そんなに憧れてるのか。
にしても道が広い。東北に行くにつれて道が広くなったのを感じてはいたけど、さすがは北海道。
道が大阪や東京がシャーペンだとしたら北海道は5Bぐらいの太さだ。
とりあえず近くに見えた大きめの道路まで行ってみよう。

なんだこれは。
怖すぎん?
鳥肌がたった。
今までにこんなライト見たことない。
別に写真だからこう写ってるわけではなく肉眼でこう見える。
おそらく消火栓の赤のランプが窓に変な反射してこう写ってるんだとは思うがめちゃくちゃ怖かった。
目の前を5匹黒猫が通ったぐらい怖かった。
そんなこんなで大きめの道路に出たのだが、
まあこんな時間に車もいるはずもなく、とにかく見渡してみた。
すると、うわさのセイコーマートがあった。
北海道にしかないというコンビニだ。
これは是非とも行かねばならぬ。
というわけで購入。

ピロシキと、

ブルーベリージャムのダブルサンドを食す。
うん。なんともいえないお味。
コンビニクオリティのパン。
これがセイコーマートか。
ただ観光でコンビニに行きたくなるってなんかおもしろい。
ご当地コンビニは楽しそう。
大阪だけのなにわマートとか。知らんけど。
ここで少し腹も満たし、周りには車もまったく通ってない。
そこで近くに止まってある遠距離トラックの方々に声をかけて行く。
すると一人窓を開けてくれた人がいた。
乗せてもらえる!
「ここはみんな青森にフェリー乗る人やから、たぶん札幌方面はいないと思う」
そうなのか。
あれ?俺と同じフェリーに乗ってたトラックは?
うわ、フェリー乗る前にヒッチハイクしておくべきだったのか。
そういうことだったのか。
後悔の念が込み上げてくるがどうしようもない。
この上で何ができるか考える。
次のフェリーが函館につくときに遠距離トラックがおりてくる。
そこを狙っていこう。
まだ時間がだいぶあるので、フェリーの待合室に行き、
体を横にする。
寝るってこんなに気持ちいいんだ。
からだの疲れが抜けていく。
ここはちゃんとタイマーをかけておこう。
そしてまた気づいたら寝ていた。
空もほんの少し青がかっている。
再びヒッチハイクしていく。
一台、また一台と時間とトラックだけが通りすぎていく。
だめだった。こっちを向くことすら少なかった。
やはり止まってる車にヒッチハイクする方がいいのだろうか。
そして次のフェリーでもやってみた。
しかしそれもだめだった。
この方法はダメなのか。
そこで考えていた代替案の、近くのICまで歩いて向かいつつ、信号で止まってる車をヒッチハイクする方法に出る。
しかしやはり車が少ない。
ヒッチハイク以前に車があまりいない。
着いたときに比べたら増えてはいるが、少なすぎる。
たしかに大通りで直線的な道だから、一つ乗せてもらえれば
ICまで行けるはずなんだが。困った。どうしようもない。
とにかく歩いていく。
孤独感。
函館から近くのICでもかなりの距離がある。
もう少し待合室で寝ていれば良かった。
まだ待てば良かった。
こんな時間に出てくるんじゃなかった。
こんなタイミングでヒッチハイクするんじゃなかった。
結果歩いて向かうことになってしまった。

誰もいない。

ただひたすら歩く。
鉄道に沿っていけばたどり着く。
最悪電車に乗って行こうか。
この時間じゃ電車も動いてなかった。
貨物列車が走ってた。
そういやあんなプラレール持ってたな。
荷台に捕まるだけでいいからICまで乗せてってほしかった。
この朝方の微妙な暗さが感情までよどんだ感じにしてくる。
近くに五稜郭があるらしい。
行ってみようと思ったが全然近くなかった。
最寄りの駅が最寄りじゃないやつだった。
なのでただひたすらまっすぐ歩く。
少し明るくなってきた。

朝だよ。
ときどき車が通る。
スケッチブックを掲げてみる。
通り過ぎ行く。
今まっすぐ進んだやろ。そこまででいいから乗せてくれよ。
信号で止まったときに乗って、信号で止まったときに降りる。
道はこの大通りをまっすぐ。
同じやんか。
そんなことを考えていると、
つむじに冷たい感触がした。
雨だ。
きっと最低なことを考えてしまったから、
懺悔を促すように降り注いできた。
傘はなかったのでレインコートを着て、
とりあえず近くのコンビニ、よければ
イートインスペースに行こうと考えた。
しかしこんなときに限ってコンビニがない。
あっても逆車線。コンビニでヒッチハイクが出来ないなら
このまま少しでも進んだ方がいい。
次第に雨も強くなっていく。
今までのヒッチハイクで一番辛い。
そんなとき、ヒマラヤ山脈へ登山した人が、
絶対絶命のときに自分をカメラにおさめた
貴重な瞬間を抑えたのを思い出す。

そうとう暗い 笑
これを見ただけでとてつもない孤独感を思い出す。
まるで自分の守護霊が力を失ったみたいな肌感だった。
風が濡れた服を襲い、雨音がイヤホン越しに聞こえてくる。
スケッチブックはいったんしまって、ホワイトボードで挑戦してみる。
が、インクが雨でうつらない。
雨の中、このままではヒッチハイクできない。
スケッチブックもホワイトボードも掲げることはできない。
となったら止まっている車に声をかけてくしかない。
とにかく車に乗ってる人やコンビニによった人などに声をかけていく。
そもそも人が少ないが、やるしかない。
その中には大通りをまっすぐいかない車、不機嫌に断る人、見向きもしない人、タクシーにまで声をかけていた。
雨も次第に強くなってきた。
これはなんとかして雨宿りしなくては。
何か屋根はないか。
こんなときに限ってコンビニのひとつもない。
とにかく歩くしかない。
僕は三浦大知の「U」を聴く。

小石ひとつ無い道つまずいたり

最初の歌詞だ。
これがグッときた。泣いた。
せっかくここまで来たのに。
たくさんの人がここまでの道のりを助けてくれたのに。
「今函館で大雨の中歩いてます」
なんて言えない。
ほぼ新品のスニーカーも親指付け根辺りか、破れたところから雨水が浸水してきた。
レインコートのかぶらない箇所もびちょびちょになっていく。
長袖、鞄、靴、袋に入った着替え
どうにか打開策はないか。
そこでガソリンスタンドを見つけた。

【雨宿り:ガソリンスタンドのおばちゃん】

これは行くしかない。
私はそこで働いているおばちゃんに声をかけた。
あまりにも突然、大阪からのヒッチハイカー。
OKしてくれた。雨宿りさせてもらえる。
そればかりか椅子や机を自由に、この辺りの地図、それに傘までいただいてしまう。
本当に優しい。身に染みる。
とりあえず体勢を立て直そう。
ここなら雨宿りできるし、ガソリンスタンドに来た車に
声をかけることもできる。
これはチャンスだ。まだやれる。諦めちゃダメだ。
とりあえず傘をいただき、地図をみて戦略を立てていく。
ガソリンスタンドに来た人に声をかけて行く。
やはり断られる。
大抵この時間帯は仕事に向かうところ。
余程のことがなければその人たちに乗せてことはできない。
さっき断られた人におばちゃんが声をかけてくれてる
こっちに戻ってきた。
すると、仕事までまだ余裕があるから乗せてくれることに。
しかも道の駅。
これはありがたすぎる。

【第十四号車 ガソリンスタンド先生】

あらゆる助けと善意で俺は札幌へ進んでいく。
諦めない限り止まらない。
しかも仕事場とは逆方面らしい。
それでも乗せてくれる。
道の駅。車も多い。向かいにはコンビニもある。
これなら再びヒッチハイクもできる。
車を降りる頃、雨がやんだ。
僕は晴れ男ではないが、雨避け男だ。
その日が雨の予報ならば、丁度外出する頃は晴れる。
そして再び屋内に行くと雨が降り始める。
これならヒッチハイクができる。
ちなみに初、道の駅。
が、お店は開いてないのでトイレだけ使わせてもらう。
そのトイレは、いつか見たガラスのように綺麗だった。

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