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出国前にあれこれ考えてみた

この記事を書き始めたのは5月29日水曜日の夜8時半。もし何も問題がなければ、私はこの記事を、今から2日後、パリから日本に帰る飛行機に乗る直前に投稿することになる。シャルル・ド・ゴール空港を夜7時過ぎに出る飛行機に乗る予定だが、6時ごろまでに投稿できると私としては最高だ。

3週間弱の滞在となったが、今回はいつも以上に忙しかった。前半は時差ボケも治らぬうちにあちこち移動したし、後半はミーティング続きとなった。なんと、出発の朝までミーティングが入っている。友人に頼まれた買い物も、明日の夕方がラストチャンス。それもできるかどうかかなり危うい。

今回はとあるプロジェクトのためのパリ滞在だったが、思いがけず今までにない経験をあれこれした。知らない土地を訪れたり、星付きレストランに複数回行ったり。新しい出会いもいくつかあった。

考え事もたくさんした。あれこれ考えるべきことがあった。どれも結局結論までには至らなかったが、最終的にはいいアイディアが浮かぶことを願っている。もしかしたら空の上でパッと思いつくかもしれない。

結局いつもと同じだったのは、しっかり運動ができなかったのと、ずっと前からやりたいと思っていた部屋の掃除ができなかったことだろうか。ただ、どちらにしても“布石”を打つことができた。前者はインラインスケートを始めたこと、後者はシンクの詰まりを解消したことだ。次にパリに戻ってくる時は、きっとどちらもできる…はず。


ミーティングで調香師Jean-Michel Duriezとあれこれ香料を嗅ぎながらディスカッションをしていた時のこと。我々は思いがけず、香りに関するとある“発見”をした。

「長いキャリアの中でもまだ新しい発見ができるというのはとても素晴らしいことだ」

もうすぐ40年の調香師歴を迎える彼が口にする。本当にそう思う。


40年、この業界のトップレベルの仕事を続けてきた彼でさえも、まだ香りの世界において新しい発見があるのだ。彼よりも2回り以上若い私は、この世の中についてほぼ何も知らないも同然であろう。香水を試す中で、複数の都市を訪れる中で、星付きのレストランに行く中で、私はそのことを、きっとずっと前から知っていたはずなのに、改めて思い知らされることとなった。

それは素晴らしい経験だった。

そう、私は何も知らないのだ。


経験や知識が増えるごとに、自分が何も知らないことをより深く実感するという「無知の知」のような感覚は、世の中の情報量が一定で、それに対しての自身の「知」の量が極めて小さいという、絶対的な事象であるというよりも、自身の「知」により、世界の情報量が刻一刻と変化する相対的な事象であるように思う。私たちは三次元的にものを考えることに慣れきってしまっているが故に、その考えは直感的には受け入れ難いかもしれないが、「知」や「情報」とは、きっと高次元の広がりを持つもので、三次元の世界にいる私たちにはその大きさを測ることは不可能だし、そもそも「大きさ」の考え方も変わってくるのだと思う。少なくとも私はそのように「知」を捉えている。

よって私は、これからもどんどん、自身が無知であり、それに対して世界が途方もなく広く大きくなっていくように感じられ続けるのだろう。


ここまで書いて筆を置いた。今は5月31日金曜日の朝9時のメトロの中。冒頭にも記載した通り、今日の夜7時過ぎのフライトで日本に戻る。

家を出て駅に向かう途中、あるフローラルノートが鼻をかすめた。それはこの時期パリの街を賑わすジャスミンともスイカズラとも少しだけ違う、いずれにしてもオレンジフラワー調の香りだった。


パリに行く時はいつも憂鬱なのだが、出る時はこんなふうに必ず後ろ髪を引かれるのだ。なんとも、不思議な場所である。

無事に日本に着きますように。


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