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評論

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#東京オリンピック

武藤敏郎さんの「私の履歴書」が描き出した東京五輪の「問題の構造」

2024年1月期の日本経済の連載「私の履歴書」を担当したのは元財務次官の武藤敏郎さんでした。

「自分に向いていないようなら弁護士に転身する」と大蔵省に入り、接待汚職事件や2001年の省庁再編による金融と財政の分離による大蔵省の解体と財務省の誕生といった時代の転換点に当事者の一人として関わりつつ、財務次官として官界での栄達を極めた前半生と、「将来の日銀総裁」と目されながら衆参両院で多数党が異なる「

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「東京オリパラ組織委に関する監査報告書」はいかなる意味を持つか

昨日、東京都監査委員は東京オリンピック・パラリンピックに関する事業に関する監査報告書を公表し、東京大会のスポンサー契約を巡る汚職事件やテスト大会の入札にかかわる談合事件が起こったことをあげ「ガバナンスの在り方に大きな課題を残した」と指摘しました[1]。

2021年に実施された東京五輪・パラリンピックの開催都市である東京都の監査委員が大会の運営に問題があったと明記した報告書を公表したことは、汚職事

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1年後に考える「『東京オリンピック開会式の意義』は何か」という問い

今日、2021年7月23日(金)に東京オリンピックの開会式が行われてから1年が経ちました。

東京オリンピックの開会式については、投じられた費用と内容が釣り合わないといった指摘がなされ、今もって評価が定まらないのが実情です。

ところで、この開会式に関し、本欄もいかなる意義があったかを検討しています[1]。

ここで取り上げた内容は現在も有効な論点を含むと考えられますので、以下に本文を再掲します。

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【旧稿再掲】パラリンピックの閉会式で始まりの終わりを迎えた「東京2020」

昨日、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会が大会経費の総額が1兆4238億円になったこと、東京都と国による公費負担が当初の計画の約2倍となる総額7834億円に達したことが公表されました[1]。

大会組織員会は6月末に解散するものの、組織委の解散によって全てが終わりになるという考えが妥当ではないことは、私が『体育科教育』の連載「スポーツの今を知るために」の第152回「パラリンピックの閉会

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東京オリンピックの開会式と閉会式はいかなる意味を持っていたか(2)

東京オリンピックにおいて7月23日(金、祝)に行われた開会式と8月8日(日、祝)の閉会式が、一つひとつの内容には見るべきものがあったものの、全体として一貫性に欠けたという点については、昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

その様な中でも、開会式と閉会式にも見るべきところがありました。

開会式については、一貫性に欠けるという点そのものが大会の開催都市である東京都、さらに東京都を含む日本の文化のあ

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東京オリンピックの開会式と閉会式はいかなる意味を持っていたか(1)

東京オリンピックでは、7月23日(金、祝)に開会式が、8月8日(日、祝)に閉会式が挙行されました。

そこで、本欄では、今回から2回にわたり、開会式と閉会式の内容と意義を検討します。

開会式については、1996年のアトランタ大会から顕著になった各国・地域の選手団が整然と隊列を組むのではなく思い思いの速さで歩くという傾向に加え、新型コロナウイルス感染症対策として選手団ごとの間隔も十分にとったため、

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東京オリンピックの終了に際して考える「IOCとオリンピックの将来」

8月8日(日、祝)、東京オリンピックの閉会式が行われました。

大会が1年延期され、大部分の競技が無観客となるなど、1896年の第1回以来続く近代オリンピックの歴史の中でも特筆すべき大会となったのが、今回の東京オリンピックでした。

17日間の会期が終了したことで、国際オリンピック委員会(IOC)は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の言葉通り東京オリンピックを巡る諸問題を全て忘れ、来年の北京冬季五輪、3年

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東京オリンピック後の検証が必要な「メダル獲得の最大化」政策

7月23日(金、祝)に開会式が行われた東京オリンピックでは、現在日本の選手が活躍し、昨日時点で合計13個のメダルを獲得しており、フィナンシャル・タイムズの予想では最終的な日本のメダル数は過去最多の56個になるとされてます[1]。

これまでもオリンピックでは開催都市が属する国の選手が多くのメダルを獲得する傾向にありますから、今回の日本の選手のメダルの獲得状況は、これまでの動向に照らしても不思議では

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「東京オリンピック開会式の意義」は何か

昨日は20時から23時45分まで国立競技場において東京オリンピックの開会式が行われました。

式典では新型コロナウイルス感染症の下での選手たちの様子を表現した舞踏や江戸時代の職人の姿を模した出演者によるタップダンスなどが披露されるとともに、205の国や地域、組織などの選手団の入場行進が行われ、今上陛下による開会宣言、橋本聖子大会組織委員会会長とトーマス・バッハ国際オリンピック委員会会長による挨拶な

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「東京オリンピックの成功」を考える際に必要な「運営の成功」と「競技の成功」の観点

現在国陸競技場で開会式が行われており、東京オリンピックが本格的に開始となります。

開催都市である東京都では新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するとともに緊急事態宣言が発令される中での大会の実施については、現在も賛否の意見が分かれているのは事実です。

ところで、しばしば言及される「大会の成功」については、「運営の成功」と「競技の成功」を分けて考えることが重要です。

「運営の成功」については、

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記者会見で「緊急事態宣言下での五輪開催の大義名分」を説明する機会を逸した菅義偉首相

昨日、菅義偉首相は記者会見を行い、東京都に対して新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を7月12日(月)から8月22日(日)まで発令することを表明しました[1]。

6月末から東京都における新型コロナウイルス感染症の感染者数が増加の傾向を示し、緊急事態宣言を発令するための所定の基準に達する項目があることを考えれば、今回の措置は適切な措置と言うことができるでしょう。

また、菅首相が

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キューバ五輪予選敗退の必然 相次ぐ亡命と深刻な人材不足

去る6月14日(月)、日刊ゲンダイの2021年6月15日号27面に、連載「メジャーリーグ通信」の第94回「キューバ五輪予選敗退の必然 相次ぐ亡命と深刻な人材不足」が公開されました[1]。

今回は東京五輪野球競技の米大陸予選でキューバが敗退した背景を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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キューバ五輪予選敗退の必然

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「開会式1か月前」に改めて東京オリンピック・パラリンピックの「開催の理念」を問う

昨日、今年7月23日(金、祝)に行われる予定の東京オリンピックの開会式まで1か月を迎えました。

現在、東京オリンピック及びパラリンピックを取り巻く様々な問題は日本のみならず国際社会の関心も集めています。

その一方で、関係者はこうした状況を等閑視するかのような態度を示し、様々な事項について対応が混乱しているのは周知のとおりです。

もちろん、こうした事態が、ある面において新型コロナウイルス感染症

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