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旅|カタール|5

 どんな場所も、自分の家になる。そこに降り立つと、身体の芯から安心感が広がる。今日も無事に帰ってくることができた。大袈裟かもしれない。しかし、異国の見知らぬ街並みと人々は神経に緊張感を与える。家はそんな僕を癒してくれる。

 果てしなく続くフリーゾーン。文字通り、そこには無限にも広がる土地があり、自由がある。ワールドカップを目的に集った世界中の人々がそこにいる。風を受けてたなびく数々の国旗はその象徴だ。地球を掌の上に乗せて、両手で絞ったらフリーゾーンができる気がする。

 着陸態勢に入った飛行機のジェット音が空気を震わせる。遠く視界の先にはウェスト・ベイの摩天楼が煌々とそびえ立っていた。二つの世界はつながりながらも、独立している。陰陽を感じさせる対比がそこにある。

 秩序から解き放たれた場所。水のシャワー。石のような香りがする水。粗く塗られた目地。水を浮かべる木の床。お世辞にも、その場を優雅と表現することはできない。しかし、その乱雑さに虚飾はなく、捉え方によっては肌に馴染む快適さがある。幾度も眺めた駅舎に今日も陽光が照りつける。フリーゾーンは今日も人々を出迎え、人々を送り出す。ワールドカップにより、その場の均衡は保たれる。

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