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書評 #79|同期

 警察の同期が懲戒免職によって姿を消した。四方八方にスパイの影がちらつく。絶えることのない緊張感が今野敏の『同期』にほとばしる。

 本作は主人公でもある、宇田川亮太の成長の物語でもある。その逡巡、場数を踏むことによって得たその自信。それらは引力として作用し、読者を作品に没頭させる。しかし、それはどこまで現実的なのだろう。私見だが、宇田川の根幹を成す核のようなものが感じられず、感情移入の妨げとなった。終盤の大活躍も予定調和のように映った。

 刑事としての矜持を拝んだ。そして、同期という縁がつなぐ人と人とのつながりの高貴さも存分に感じられた。しかし、何をもって同期が特別なのか。この作品の原動力とも呼べる問いに対する答えにいくばくかの中途半端さを覚えた。


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