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書評 #23|キャプテンサンダーボルト

 阿部和重との合作ではあるが、『キャプテンサンダーボルト』には肌に馴染んだ伊坂幸太郎の息吹が流れている。シリアスな皮に包まれているが、その中身は彩り豊かな登場人物たちによって織り成されるコメディだ。だからこそ、春の日差しを浴びながら、公園のベンチでまどろむような気持ちで文字を追うことができる。

 二名の作家によって紡がれる物語にスタッカートのような歯切れがあるかと問われれば、首を傾げてしまう。しかし、そこには即興のセッションを楽しむような、作者たちによる対話が文字に浮かび上がる。

 蔵王の御釜に隠された謎は時空を超え、人々と世界を巻き込んでいく。リアルとファンタジーの境界線に漂う壮大なストーリー。陰陽の凸凹コンビがその中を走り抜けていく。隙のあるアウトローたちの存在を確認すると、伊坂幸太郎の世界に舞い戻ったと実感する。

 偶然ではあるが、パンデミックを阻止しようとする物語をパンデミックが起こる世界で読むことに、現世の異常を再認識させられる。


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