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海の見える理髪店 #本棚


『海の見える理髪店』(萩原浩著)を読み終えた。
6つの短編集で、どれも読みごたえがあった。

●海の見える理髪店●
登場人物は店主と僕。店主の一人語りで物語は進んでいく。読み進めるうちに店主の送ってきた人生が紐解かれていくのだけど、衝撃の告白があったりで、けっこうどきどきする。

●いつか来た道●
他人事とは思えない話。母親がこのような状態になったとき、自分だったらどうやって接するんだろう、と思いながら読んだ。最後、主人公のように声をかけられるだろうか。わたしはそこまでやさしくなれないかもしれない。

●遠くから来た手紙●
「仕事にいのちなんかかけなくいいよ。もっと大切なものがあるじゃない。」
「命なんか捧げなくていいよ」
「命さえあれば、国なんかいらない」
こういう風に言える時代になったのは、誰かが国のために命を捧げてきた時代があるからなんだ。
だから今の時代は命を捧げなくてもいいと思う。それよりも大切なものがあってそれを大切にしないといけないと思う。そうじゃないと国のために命を捧げてきた人に申し訳ない。

●空は今日もスカイ●
「確かめないうちに、決めつけるのは冒険家のやることじゃないよ」大人になればなるほど冒険家のこころは忘れてしまう。注意しないと。

●時のない時計●
時計の針は前へ進むためにある。鳩時計ってそういえば全然みたことがないけど、今も存在しているのだろうか。

●成人式●
この両親が身近にいたらわたしは全力で応援したい。わたしもこの勇気を持ちたい。長年の気持ちをきりたいときは、思い切ったことをすることから始まるのかもしれない。

父、母、子供、夫婦…。様々な家族のかたち。
ひとりで生きているようで、誰かから生まれてくるわけだから、やっぱり誰かとつながっているんだなあと思わせてくれる短編集だった。

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