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北は熱帯、南はジュラ紀?:中北部山間地域【都道府県シリーズvol.16福井県part1】

プロローグでは福井県は地形的な特徴の違いから、9つの地域に区分できるとお話ししました(※あくまで私個人の区分です)。
今回はその中の「中北部山間地域」の地形と地質についてお話しします。

場所の再確認

以下の図の⑤の地域です。

地形_区分県境_番号

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

該当市町村⑤_01

この地域には上図に示した8の市町村が含まれます。


地形を見る

ではでは、地形を見てみます!!

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真ん中の福井平野を挟むような範囲の山地です。

区分⑤範囲

だいたいこんな感じ。

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もう一度、地形だけで見てみましょう。
全体を俯瞰的に見た感じでは、気になるところが2点あります。

1つは、西の山地の真ん中あたりが全体的に山が低く、浸食が進んでいるようなイメージを受けるんです。

画像6

少しアップにしてみました。どうでしょう?

浸食っぽい

だいたい、このあたりの範囲です。

そしてもう1つは、直線でつながる地形がいくつか見えるんです。

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どうでしょうか。見えますか?
真ん中あたりと北西部です。

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真ん中を中心に少し拡大しました。

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こちらは北西部の拡大です。


断層っぽい

図示するとこんな感じです。
上の図と見比べてみれば、イメージ掴めると思います!


地質は?

では果たして地質は関係しているんでしょうか?
まずは全体をシームレス地質図V2で見てみましょう。

画像12

パッと見た感じでは、先ほどの赤点線の場所が断層(黒線)で、その南北で地質の雰囲気が違いますね。
そして北西にも断層が図示されています。

つまり線状の地形は断層だったんですね。

では今度は20万分の1地質図を見てみましょう。
今回も残念ながら南北で2分割です。まずは北部から!

20万地質図_図示

20万分の1地質図幅「金沢」(地質調査所より)に筆者一部加筆

赤点線がだいたいの範囲です。
黄緑色の地層がメインで、緑色や黄色、青、薄いピンク色などがあります。
これらは新第三紀中新世前期~後期(約2000万年~700万年前)火山岩類(溶岩や凝灰岩類)や堆積岩類(礫岩・砂岩・泥岩など)です。

化石などの分析結果から、前半は陸地で後半は海になったようです。
陸地の時代では、なんとマングローブ植物の花粉の化石が発見されているとのことで、熱帯~亜熱帯気候だったと考えられます!

そして偶蹄類の足跡化石も発見されているようです。

偶蹄類足跡化石

鹿野ほか(2007)より

ハンマーより上の左から右にかけて、確かにヒヅメっぽい足跡が見えるような・・・?(笑)
シカの仲間かウシの仲間か?はたまたカバか??
マングローブ林の隣の湿地を、これらの動物が歩いていたと想像すると、ちょっと楽しいですよね♪

20万地質図_図示02

20万分の1地質図幅「岐阜」(地質調査所より)に筆者一部加筆

今度は南部の地質です。
北の方に見える緑色や薄紫や薄い黄色系統の地質は、北部と同じ地質です。

一方、南部に見える灰色やオレンジ色などの地質は中生代ジュラ紀(約2億年~1億4500万年前)砂岩、泥岩、チャート玄武岩類など。
つまり日本がユーラシア大陸の一部だった時の地層です。
南の方からプレートに載って移動し大陸にくっついた付加体がメインのようです。

また北西に見えるピンク系の地質は中生代ジュラ紀前期から新生代古第三紀始新世(ししんせい)前期(約2億年~4800万年前)の花崗岩類です。

なるほど!
もとは硬いけど風化速度の速い花崗岩類だから、浸食して山が低めだったんですね。納得!(笑)


今回は以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

鹿野和彦・原山 智・山本博文・竹内 誠・宇都浩三・駒澤正夫・広島俊男・須藤定久(1999) 20 万分の1 地質図幅「金沢」,地質調査所.

脇田浩二・原山 智・鹿野和彦・三村弘二・坂本 亨・広島俊男・駒澤正夫(1992) 20 万分の1 地質図幅「金沢」,地質調査所.

鹿野和彦・山本博文・中川登美雄(2007)福井地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅). 産総研地質調査総合センター,68 p.

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