"みんな西向きばっかり"なワケ:福井県中北部山間地域【災害から身をまもるvol.18】
前回紹介したガラガラ山。
地名の由来は地すべりかも?と言うお話をしましが、近隣地域には他にも多くの地すべりがありました。
なぜ、そんなにも地すべりが多いのか?
場所の再確認
念のためもう1度、場所を確認しましょう。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
中北部山間地域は図で水色に着色された範囲です。
その中の福井県南西部、赤丸のあたりについてお話しします。
全体を見る
まずは問題の地域の地形図を見てみましょう。
尾根が北東ー南西方向に伸びていて、北西向き斜面の方が逆側斜面より広いのが特徴的です。
目印として川(青)と尾根(赤)を図示しました。
どうでしょう?
西と真ん中の山地、西向き斜面の方が広くて傾斜は緩そうですよね。
これが後でキーポイントになります!
そして本題。
ガラガラ山周辺は地すべり地形が多く、下図の南西部ですが、その他の地域にも地すべり地形が沢山あるんです!
はっきりと「地すべりだろうな」と思われる場所に丸印をつけました。
多いですよね。そして西向きの斜面が圧倒的です。逆は2つだけ。
(※番号は後で詳しく紹介する場所です)
地すべり地形分布図(J-SHIS Mapより)に筆者一部加筆
念のため地すべり地形分布図で確認。
川(青線)を目印に見比べてください。だいたい同じですよね。
代表例をいくつか紹介
では代表的なものをいくつか拡大して見てみましょう。
(※場所は上の図の番号を参照)
地形だけのものと地すべり範囲を図示したものを並べますので見比べてみて下さい。
①:武周ヶ池(ぶしゅうがいけ)周辺
特に真ん中の地すべりは大きくて分かりやすいかと思います。
頭部に急傾斜の崖があり、両サイドに溝状の谷地形。川(大味川)は曲げられています(武周ヶ池の方が本流)。
そして斜面は凹凸があって乱れているように見えますよね。
ちなみに武周ヶ池は自然に出来た池で、この地すべりに堰き止められてできたと考えられているようです(ふくいドットコムより)。
3Dで見ると手前側に出っ張っているのが良く分かると思います。
そして、いかにも川を堰き止めたかのように見えます。
斜面の乱れも分かりやすいですよね。
引いて見ると手前にも出っ張りがあります。これも地すべり地形です。
②:国山町・千合町周辺
国山町の地すべり地形も典型的です。
対岸の千合町もですが、地すべり地形の斜面は山間部の中でも傾斜が緩く、土地も耕しやすいため古くから人が住んでいる場合が多いんです。
災害と自然の恵みが表裏一体という典型例だと思います。
やはり斜面が出っ張っているのが分かりやすいですね。
なぜ西向き斜面に集中?
東向き斜面の地すべりもないことはないですが、圧倒的に西向き斜面の方に地すべり地形が多い。なぜでしょう?
これは最初に話した斜面の広さの違いとも関係します。
地質図では黄色やオレンジが北東ー南西方向に細長く分布してますよね?
これから分析すると(※専門的なので説明は省きます)、地層はだいたい北西~西北西の方向に10~30度くらい傾いています。
この方向で断面図をつくってみます。
やはり西向き(左)斜面の方が広くて緩やかですよね。
これに地層の線を入れてみましょうか。
これは傾斜10度の線を私が適当に入れただけですが、イメージは掴めますよね。そう、山が地層の面に沿ったカタチになってるんです。
地層によって硬い柔らかいが違ったりするので、地層の向きに沿うように浸食が進むことで、それを反映した山のカタチになるんです。
これを専門用語でケスタ地形と言います。
そして地形と地層境界の位置関係や地下水などの条件が揃うと、地層の面に沿って地すべりが動きます。
上の図を見れば、山が滑る場合は左(西)だろうと直感でも分かりますよね。
最後に国山町の3D(空中写真)です。
まるで板(赤点線)の上に土地が乗っかっているように見えませんか?
以上、お読みいただき、ありがとうございました。
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