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窟薬師磨崖仏(波打薬師)を見に行こう♬:【ジオ散歩vol.5:宮城県黒川郡大和町No.1】

「市街地を実際に散歩しながら地形・地質を楽しむ」シリーズ、ジオ散歩。
今回は車で通りかかった際に偶然見つけた磨崖仏(まがいぶつ)を紹介します♬

場所は?

宮城県仙台市の北に隣接する大和(たいわ)町が舞台です。

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

宮城県大和町地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

大和町はこんなカタチをしています。
北部を西から東へ流れているのが吉田川です。この川沿いが平坦地になっていて、それ以外の地域は丘陵地や山地になっています。

宮城県大和町地形図(国土地理院地形図):スーパー地形画像に筆者一部加筆

国土地理院地形図をかぶせました。
国道(赤)や高速道路(緑)は東部を通っています。やはり広い平坦地が街の中心部なのでしょうね。

磨崖仏へ!

では町の東部をどど~んとズームします!

窟薬師磨崖仏ルート案内図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

東北自動車道「大和」ICから矢印のように県道を進めば、左側に見えてきます。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)入り口:筆者撮影
窟薬師磨崖仏(波打薬師)入り口②:筆者撮影

古い木杭には「波打薬師」と書いてありますが、新しい方には上の写真のように「窟(あな)薬師磨崖仏(波打薬師)」と書いてあります。
「窟」は難しい字ですが「穴」と同じ意味のようです。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)入り口③:筆者撮影

おおお!イイ感じの岩盤じゃないですか!!

窟薬師磨崖仏(波打薬師)脇の露頭:筆者撮影

私の場合、真っ先にこっちを見てしまう(笑)
葉理構造が綺麗ですね。海の堆積物でしょうか?

大和町周辺地質図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

地質図によると約1500~700万年前の海に堆積した砂岩だそうです。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)脇の露頭②:筆者撮影

よ~く見ると小さい軽石が混ざっています。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)脇の露頭③:筆者撮影

軽石だけではなく黒い岩片も混ざっています。
上流部では火山活動があったのでしょうね。

磨崖仏を見よう

いきなり地質の観察してしまいましたが、ご安心ください!
ちゃんと磨崖仏も撮影してます(笑)

窟薬師磨崖仏(波打薬師):筆者撮影

中は割と広い部屋でびっくりしました。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)②:筆者撮影

室内だけでなく、外にも仏さまが彫られていました。

窟薬師磨崖仏(波打薬師)解説看板:筆者撮影

大和町のホームページによると、この磨崖仏は鎌倉時代につくられたと考えられているようです。

上写真の看板には以下のように書いてありました。

親孝行の漁師がある日魚が全く捕れず夜になってしまい、病気のお父さんに食べさせられないと途方に暮れていたところ、海の中に光っているものを発見。近寄ると大きな貝でした。
喜んで家に持ち帰るも殻が固く閉じて全く開かない。
お坊さんに相談すると「これはお前の親孝行に対して仏さまがくれたもの。私が7日7晩拝めば開くだろう。」とお経を唱え、7晩目に開き、中から仏像が出て来て、お父さんの病気が治った。
その仏像が「薬師如来」であり、村人たちから崇められ、磨崖仏が彫られた。(看板の内容を筆者なりに要約)

ちなみに、ここは別名「波打薬師」と呼ばれてるようですが、それはこの辺り一帯が大昔は海で、磨崖仏のあたりがちょうど沿岸部だったという言い伝えがあるからだそうです。

窟薬師磨崖仏周辺地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

確かに磨崖仏周辺(上図赤丸)は標高が5~6mと低く、さらに下流は1~2m
、赤点線のあたりは1m未満
です。
国土交通省の北上川下流河川事務所のホームページによると、江戸時代までは「品井沼」という沼があったらしく、おそらく赤点線のあたりだと思われます。

しかも吉田川の下流域は丘陵地帯を流れているので堰き止められやすく、洪水になって湖沼地帯になることもありそうです。
また標高5m程度であれば縄文時代は海でしょうから、その頃からの言い伝えが残ってるとすると、とても感慨深いものがありますよね。

お読みいただき、ありがとうございました。

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