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第二波が直撃!コロナ感染拡大中のイギリスの様子は?日本との文化的な違いとは?【全文無料】

うーーーん…。10月頭にわたしが一時帰国した理由は、もちろんこの現状を予測してのことだったのですが…。飛行機の中でも日本に到着してからも、予測が外れて、なーんだ、ロンドンにいてもぜんぜん良かったじゃん😆と言えたらいいなぁと祈るような気持ちでいました。

しかし、10月19日くらいからイギリスの1日の感染者数は2万人前後で推移。死者数も1日200人ほどという厳しい状況が続いています。地域ごとにかなりバラつきがあり、ふつうに考えれば「さぞかし首都ロンドンはヤバいんでしょうね…」と思われると思うのですが、イングランド内ではロンドンよりも北部の方が状況は深刻です。ともかく第二波がイギリスを直撃中と言わざるをえません。

イギリスは4つの国から構成されており、それぞれが独自の対策を行っています。中でも状況の芳しくないウェールズは2020年10月23日~11月9日の短期間のロックダウンを実施中。これはFirebreak lockdown(firebreak=防火帯(火事の延焼を防ぐために、草木を除去した地帯のこと))と呼ばれています。

それに伴い、ウェールズ政府は「生活必需品以外の物品は販売を禁じる」というお達しを出しました。つまり衣類やおもちゃなどは買えないと…。こういう話が決まると喧喧囂囂の議論が巻き起こるのはイギリスあるあるで(笑)、「親が子どものために衣類を買うことさえダメなのか?」と反対する署名が64,000件以上集まったそうです。

そう、日本に一時帰国してわたしがいちばん「これは大きな差だな~」と感じたのが、日本人はほとんどの人が羊のようなおとなしさですよね。もちろんみなさんいろいろとお考えはあるでしょうし、親しい人との会話やネット上では本音を言ったりするかもしれません。でも、何か行動に移す人は非常に珍しい。一方、討論だ!署名だ!デモだ!わあわあわあ!!となるのがイギリスです。

そもそもそれはパンデミック以前からずっとそうで、たとえば政府に物申したいことがあれば、上のリンクのサイトから誰でも気軽に請願可能。1つの請願に対して1万人が署名したらその請願には政府は回答義務があり、10万人に達したら議会での審議が検討されます。つまり、投票以外にも議会に意見を上げるルートがあるんですね。

ですから、ヨーロッパ文化をあまりよくご存じない日本人の方が、たとえば「欧米人がマスクを着けたくないと騒ぐのは無知で迷惑」みたいに断罪しているのを見ると、うーん、まあ一見そう見えたとしても実はそこまで単純ではないんだよね…と思ったりします。

というのは、彼らには何かを受け入れる権利も受け入れない権利もあるからです。現在の日本で「みんなが空気を読んでおとなしくふるまう」ことがたしかにポジティブに働いているとは思いますし、そのことに感心しています。でも、まあ外国には外国のやり方があります。理解できないことを「馬鹿じゃん」と切り捨てるのではなく「なぜそうなのか?」という点に興味をもっていただけると、海外ニュースを見るのはもっと面白くなるかも😊

「空気を読まずに1人1人が自分の意見をもって行動すること」は、ときにユニークな発想も生み出します。たとえばこちらは10月上旬の記事ですが、苦境にあえぐパブの一部が「仕事用にデスクを貸し出しする」というサービスを始めました。

パブの正式名称はパブリックハウス。人々の交流の場であり、昔は簡易宿泊所や雑貨屋を兼ねていました(今でも田舎にはそういうパブがあります)。だから時代ごとにパブの役割が変わることは実は伝統的なこととも言えるかも💡✨

イングランドのあるパブではテーブルとコンセント、Wi-Fi、ランチ、コーヒー&紅茶飲み放題を10ポンド(約1,400円)で提供。つまりコワーキングスペースですよね。イギリスの物価だとこれはかなり安い。「(コロナ対策の規則で)夜10時にはお店を閉めなくちゃいけないのなら、お昼12時までに来てくれるお客さんを増やすのみ。それにお客さんがいるだけで嬉しい」とオーナー。

また、リンクの写真の女性はジャーナリスト。「ジャーナリストは報道室よりもパブで多く時間を過ごす」という有名な言葉があるらしく(耳が痛い・笑)、それを図らずも体現していることになります。彼女はちゃんとお仕事はされていますけど。ビール片手に(笑)。

「自分の意見を言って行動するという文化では、人々が必ず自己中心的になる」というのもよくある誤解です。「ここは誰もが自由に考えて行動できる国。だからこそ私は困っている人を助けたい!」という人がイギリスには大勢います。イギリスは17世紀からチャリティーやボランティアが盛んな国。このパンデミックの中でも、実に多くの人々が率先して自分のできることを行っています。

たとえば今イングランドでは、仕事を失ったり収入が減ったりする人が多いため、子どもたちの貧困が懸念されています。具体的にいうと、現在ちょうど学校が1週間ほど休みになる期間(ハーフターム)なんですが、このハーフタームや冬期の休みに、子どもたちが栄養のある食事をきちんと取れるか?という点が問題になっています。

なお、学校がある間は、低所得の家庭の子どもたちには無料で給食が提供されます。わたしのイングランド人の友人の1人もこの制度のお世話になったそうで「毎日あたたかいランチが食べられるし、おいしかったよ!」と言っていました😊

でも、学校が休みになると給食はないわけで…。もちろん人々はイングランド政府にこの件に関する請願を行っていますが、その結果を待つだけではありません。今自分たちも経済的な苦境にあえいでいるはずのパブやレストラン、カフェが次々と「地域の子どもたちにランチを無料で提供する」という活動を始めています。ただ「そうしたいから!」という理由だけで。

ロックダウン中にもこの無料の給食をどう配るかは問題になり、それぞれができることをしました。このイングランドの小学校の教頭先生は、平日に毎日2時間をかけて8キロを歩き、80人の子どもたちに食事を届けることに。その総重量は約54kg!わたしなら持ち上げることもできないレベルです💦この教頭先生は元軍人でたくましいとはいえ、決して容易なことではないはず。

教頭先生は食事を配るだけでなく、各家庭で問題がないかをチェックし、パソコンやWi-Fiなどがない家庭には宿題を配って歩いたそう。子どもたちはもちろん教頭先生にとても感謝していますが、ご本人は「いやー、自分の仕事をしているだけなんだよね」とコメントしています。

そう、みんなが自分で考えて行動すると、ときにカオスな状況になるのは間違いがありません。でも一方で、真の意味でその人らしい生き方ができるのかなとも思います。誰かに褒められたいからでもなく、宗教的な理由でもなく(イギリスのチャリティー文化は宗教とはほぼ無関係です)、ただただ自分の内なる声に従うということ。

繰り返しになりますが、別にイギリスがすごくて日本はダメみたいな話ではぜんぜんありません。ただ、そんな社会やそんな考え方もあるのかーというのを知ってもらえると、イギリス人の優しさやチャリティー精神に何度も助けられてきたわたしとしては嬉しいです💓

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