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即戦力=放っておいて大丈夫、ではない。

”中途採用”と一口に言っても、業務を任せ、結果を出してほしい「即戦力採用」と、スキルや経験はまだまだだが、業務を通して、将来即戦力となってほしい「ポテンシャル採用」がある。ポテンシャル採用は、どんな先輩社員をつけ、どんか研修や経験を積ませ、どんな風に育てていくか、採用前に育成計画を作っておくケースが多い。だが、即戦力となると、そういった「育成計画はいらないでしょ」と急に扱いが雑になるケースを見てきたし、自分自身も何度か転職をしてそういう経験がある。

確かに、新卒や若手のポテンシャル採用と違い、即戦力採用は業界や業務に関することを、いちいち手取り足取り教える必要性はあまりない。入社1週間目から、営業ならお客さんに一緒に同行させたり、マニュアルを見せて、社内で使うソフトや機械を扱わせたりするだろう。そこで、大きなミスや勘違いがないと、「大丈夫そうだね、じゃ、あとよろしく」と、中途採用者をいきなり一人にさせる。私が担当したケースで最悪だったのは、「どうしてもこの日に入社してほしい」とマネージャーに哀願され、内定者に前職の退職日を早めてもらったのに、その人の入社日から数日、部署の監査があり、メンバーが終日誰も席にいなかった。隣接している部署の人も、新しい人が入ったのは分かったが、声をかけていいものか躊躇し、遠巻きにみている。どこに何があるのか、昼休みはいつ、誰かに断っていったらいいんか、定時になったら、帰っていいのか、誰にも聞けず、その人は、ただ渡されたマニュアルをずっと読んで過ごした。さすがにこれは、採用担当として申し訳ない、いたたまれない気持ちになった。

即戦力の中途採用者とは、日本好きの外国人が初めて日本にやってきた

と思うくらいがいいと私は考える。日本のことにとても詳しく勉強し、日本語上手な外国人。だけども一度も日本に来たことがなく、生活に関する知識は本で読んだり、ネットで情報を持っているが、実際に暮らしてみないとわからない、細かいルールが結構あるものだ。例えば、外国だと家具付きの物件が結構あるので、日本のように、何もない空っぽの部屋を借り、一から家電や家具をそろえるなくてもすぐに住めたりする。ゴミの分別がに日本ほど細かく分かれていない。私が住んでいたカナダ・トロントは、冬の暖房を逃がさないよう建物の扉が自動ではなく、重い手動の扉が多く、通る時は自分の後ろの人のため、扉を押さえてあげるのが常識。でも日本でそんなことをしている人の方が少ない。こういう生活に関する習慣は、実際に行ってみないとわからないことが結構あるし、そういう習慣を取得するのは、周りの人が指摘してくれないと気がつきにくいもの。それと同じように、会社によって”常識”というものが意外と違う。コピー機はIDをかざさないといけないとか、文房具は総務に一言断ってから棚から出すとか、コーヒーメーカーは午前中メンテナンスにくるので、みんな飲まないとか、外部から来た人間からすると、「それなんで?」という不思議がいっぱいだ。そして、その会社で常識だと思っていることに従わないと、「今度来た人は変」みたいな噂を立てられたりする。そうなると、いくら高いスキルや経験を持っていても、そういうった雰囲気に圧倒され、十分に能力を発揮できず、職場に馴染めず、退職する人を今まで何人も見てきた。

仕事に関するスキルや経験が高いことと、会社に馴染めるスキルは別もの

前者は個人の努力次第の部分が多いが、後者は中途採用を迎え入れる体制の意識による部分が非常に高い。それに気づかず、即戦力で入った中途採用者は万能と、勝手にみなして、何もケアをしないのは、採用の無駄使いだ。

どんなに優秀と前評判が高かろうと、高待遇でやってきた管理職も、その会社にとっては、「新しい人」に違いない。”常識”と思っていることを「あれ、これって新しい人は知らないよね?」と疑問に思い、丁寧に教えてほしい。

追記:ワダシノブさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。




「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。