【下を冷やすな】
「子供は風の子」、今時そんなことを言う人はいないと思うが、子供は比較的、体温が高く、大人よりも寒さを感じにくいかもしれない。だが、親は風邪をひかないようにと、冬、子供に厚着をさせようとする。うちの母はとりわけ、「毛糸のパンツ」を履かせようとした。だが、その毛糸のパンツ自体のデザインも、存在も、子供頃に”ダサい”と感じていた。当然、履くことを拒否。すると父は言った。
「スカートの中が、そんなに薄着だと、大人になって下(しも)の病気になるぞ」
”下(しも)”とは、上半身ではない、でも、下半身の特定のエリアを差していることは、なんとなくわかる程度の小学生に、あえてこの言葉を何度も使う父。さすがに中学生の年頃になると、この言葉は言わなくなったが、制服のスカートの下を、パンツ一枚で通学する娘を、苦々しく思っている視線は感じていた。
29歳の時、右の卵巣が破裂しかかり、年の瀬の12月28日、もうすぐ夜の10時になろうという時間に緊急手術を受けた。下の毛を剃られ、真っ裸で冷え冷えとする手術室の手術台に乗せられた時、父の言葉を頭をよぎった。
30代中盤になると、干しブドウくらいの子宮筋腫がいくつかあることが分かった。その後、カナダに移住したため、定期検診を怠った。さらに、ベトナムに移住し、そこの生活環境が合わず、子宮筋腫が悪化。子宮を全摘する以外、方法がなくなった。
結果、父の予言通り、”下(しも)”=婦人科系の病気で、2度も手術をした。子供の頃、母の言いつけを守り、毛糸のパンツを履いていたら、私の婦人科系臓器は無事だっただろうか?
追記:asuka_koboさんの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。
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