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就職企業の人気ランキングは誰のため?

趣旨は違えど、毎年、新卒や社会人向けの就職企業人気ランキングが様々な形で発表される。もともと、世間がいいと思うものに賛同できず、世間の評価が低いものに心奪われるあまのじゃくの性格の私は、「このランキングって何のためにあるの?」と長年思っている。

資本主義は競争社会。商品/サービスがランキングされることで、知名度が上がり、ブランド力が上がり、企業側の株価、更に売上増につながり、努力が報わ、企業側には喜ばしいことだ。購買者にとっても、企業価値が上がれば、ゆくゆく商品/サービスの質が上がったり、種類が増え、求めやすい価格になったりと、利点も多いだろう。ランキングに上がらなかった企業は、前向きに商品/サービス改善のきっかけになる、かもしれない。

一方の就職人気ランキングは、誰にとって、何が利点か。企業はもちろん”人気者”の指標になり、働いている社員は誇らしいし、株価が上がるし、商品/サービスの売り上げもあがるかもしれない。だが、新卒の大学生や、転職を考えている人にとってのメリットってなんだろうか?ランキングされて企業の採用枠が増えるわけじゃなし、投票した人が全員入れるわけでもないし、採用条件が低くなって入りやすくなるわけでももちろんない。それに、よくよく見ると、このランキングに入ってくる会社ってほとんどがBtoC、個人が購入できる商品/サービスを提供する会社だ。経済って、個人消費以外にも、企業相手や政府相手、外国相手のビジネスをしている、知られざる企業は山ほどあるが、そういう企業名はほとんどない。つまり、

就職人気ランキング=企業宣伝している会社

ではないか。

このランキングは、まだ働くことにピントきていない学生のみならず、「働く=生活費を稼ぐ」という考えを持つ社会人にすれば、焦燥感をあおる材料になりはしないだろうかと、「そこで働けない自分はなんだろう」と危惧する。人は働かないと、生活できない、生きていけない(部分もある)。けど、自分に何ができるのか、何がしたいのかわからない。ならば、ひとまず有名な会社や、目についた会社にエントリーをしたあげく、「何十社落ちました」と自己嫌悪に陥る。そこから自分を奮い立たせ、自分の特性にあった仕事を探す気力はすっかりなくなり、とりあえず内定をもらったところで働く。そういう人の弱みに付け込んだパワハラな人が、ブラック企業を横行させているのではないか。

世の中には、知られていないが働きやすい会社がたーーーくさんある。多くの人にとって、大企業=いい会社(働きたい会社、働きやすい会社)ではない。働くことの何に価値を置くのは千差万別。例えば、アイディアにあふれ、それを自分で形にしたいという意欲の高い人は、仕事が細分化されている大企業ではきっとフラストレーションがたまるだろう。決められた作業を、間違いなく、きちんと正しく日々実行することが気持ちのいい人は、ノルマのある営業や、不特定多数の人とコミュニケーションをするコールセンターは苦痛以外の何物でももない。経営者や社員と家族ぐるみの付き合いをするのが面倒だと思う人もいれば、会社の寮に入って、お酒を飲んだり、イベントを一緒にやりたい人もいる。そういう会社の特性は、ランキングには絶対表せない。求人票にも書かれていない。会社のホームページでもわからない。ランキングなんて、企業の一つ側面を映すものでしかない。働きやすい会社かどうかなんて、ちっともわからない。

また、このランキングは、仕事をする人のみならず、家族や先生などの偏見を生む。以前、とある学生に内定を出したところ、「私は御社が第一希望であることに変わりがないのですが、家族や教授と相談し、〇〇会社(ランキングにされている会社)の方がいいと言われたので、御社は辞退します」と連絡が受けた。「自分の人生なのに、周りの大人に判断をゆだねたのか~」と、個人的に寂しくなった。

その学生(今は社会人になっているが)にとって、どこの企業に入社したのが正解なのか、まだわらかないだろう。いや、そもそも正解なんてものがあるのか。私が10代、20代の頃に比べ、学歴重視の風潮はだいぶ薄れてきている。あともう少ししたら、大企業=いい会社(働きたい会社)という概念も薄れ、一人一人が自分の個性、特性にあった働き方で、幸せだと感じる世の中が来てくれることを願う、自分も含めて。

追記:ia19200102さんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。