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「関係性」の病

どんな人がタイプ?
と聞かれて、「好きになった人がタイプ」と答える人がいる。
むしろ、好きなタイプを聞かれて、明確に答えられる人はめったにいないと思う。

同様に、恋人に
私のどこが好き?
と聞かれて、すぐに好きなところを言い表せる人も少ないと思う。

なぜか。

恋人同士の関係において、"その人自体"が好きな場合より、"その人との関係性"が好きな場合の方が多いからだ。「"その人自体"が好き」と言えるような恋愛はおそらくほとんど無い。たしかに、とにかく容姿が好き、という場合は「その人自体が好き」と言えるかもしれない。だがそれは表面的な「好き」で、愛情をもつには至らない。

だから、大抵の恋人関係、友人関係は、「関係性の心地よさ」によって成り立つ。
一緒にいて楽しい、素の自分でいられる、といったことが、他者への愛情につながり、長く続く関係を生み出す。

しかし、人との繋がりを断ち切るのもまた、「関係性」の仕業である。

楽しく過ごせていたはずの恋人との時間が、次第に全く楽しいと思えなくなること。居心地良く過ごせていたはずの友人との時間が、決まって喧嘩ばかりしてしまうようになること。

自分や相手の人格が変化したわけではない。
関係性」が、変化したのである。

私達は相手との関係が悪くなると、ついつい相手の非を並び立てる。もしくは、自分が悪いのだと思い込み、自己嫌悪に陥る。
実際のところ、関係が悪化した原因はそこにはない。私達が焦点を当てるべきなのは、「なぜ、関係性が変化してしまったのか」なのである。
自分や相手を責める必要はないのだ。

人に原因を求めず、出来事にこじれた原因を探す。これだけで、憂鬱極まりない人間関係の悩みは、ロジカルでシンプルなものに生まれ変わるだろう。
もちろん、一度こじれた関係性を改善するのが至難の業であることも事実である。手の施しようがない場合も多いかもしれない。
しかし、改善が見込めないにしても、私達は相手への執着や嫌悪といった負の感情から、解放されるべきではないだろうか。
そのためには、「人との関係は、自分や相手の人格ではなく、関係性に左右されるもの」という発想が必要なのである。


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