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「絵から生まれた物語展」第4展示室

第4展示室:虚像の民


翻る翻る
漆黒の幻影
風にたなびく

彼方へと
視線の先に遠からず
輪郭だけがそびえ立つ

託した手紙に一筋の
想いひとひら沁み込ませ
わたしの化身に口寄せて
別れの言葉をささやいた

振り返らずに足早に
旅立つ日には祝祭を
待つ者も
待たれる者も
姿なく
ただ風だけが背中を押して

軽い我が身を恨むことなく
色の抜けた皮膚をまとって
声にならない声を脱ぎ捨て

踏まれることなく散らばった
幾千の
わたしという名の虚構に満ちた
文字の欠片を
すくいにゆく日

フランチェスコアイエツ
フランチェスコ・アイエツ「復讐の誓い」


★ギャラリー活字「絵から生まれた物語展」
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第5展示室

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