レゴとゴッホと星月夜
それはゴッホ好きな私にとって運命のボタンとも言うべきワンクリックだった。
「知っていますか? こういうのが売っているみたいですよ」
先輩の言葉に導かれて開いた画面に登場したのは、かの有名なゴッホ。いや、正確にはレゴだ。レゴ? レゴブロックは知っている。年齢が一桁の頃に遊んだ記憶がある。でも、これがレゴだなんて世紀末もいいところである。とてもおもちゃとは思えない・・・
その正体はこちら。
ゴッホ 「星月夜」 21333 | アイデア |レゴ®ストア公式オンラインショップJPで購入 (lego.com)
なんと、あの絵だ。なんとなく見たことのある人が多いのではないかと思われる「星月夜」。それをレゴで再現したものだというではないか。しかもゴッホのミニフィギュアもついている。どうやらニューヨーク近代美術館(MoMA)と共同開発されたものらしい。さすが世界のレゴ&MoMA。なかなかしっかりしたお値段でもあるが、そもそも私に2316ピースもあるレゴなんて作れるのだろうか。いやいや、作ったところでどこに置くのだ。でも部屋のあの棚の上を片付ければなんとか・・・もやもや考えながらも気づけば出来上がった後のことまで想定している自分がいた。
購入ボタンをクリックするまでさして時間はかからなかった。
そして、瞬く間に到着。どーん。
こんなに大きな箱が届くとは思わなかった。しかも重い。大きさ比較にリラックマを置いたが、このサイズ感が分かるのは私だけかもしれない。でも大丈夫。今回のレポートは、本格的な自己満足世界の具現化に他ならないのだから。いわば、公開絵日記状態である。
ということで、さっそく開封。
中には、謎の番号が振られた袋と、組み立て指南書が入っていた。
果てしない旅はここから始まった。
もくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもく
黙々という状態は本当に起こりうることだった。
全232ページある指南書をただただ無心にめくり、黙々と組み立てることしばし。
ゴッホさんが気になって見に来てしまうほど、なんだか分からない状態。
何か壁のようなものの前に、立ち尽くすゴッホさん。哀愁漂う背中。服のシワも妙にリアリティがある。先ほどもつぶやいたが、さすが世界のレゴ&MoMAだ。
そうこうしているうちに、壁の隣には、ささやかな風景が誕生。これだけでもう完成と感じてしまえるほど「組み立てた!」実感がわいた。
ゴッホさんも興奮を抑えられないようで、たまらずパレットと筆を手に、キャンバスに向かって見えない風景を描き始めた。
さて、次はいよいよ糸杉だろうか。せっかく組み立てた町並みが見えなくなってしまうのは寂しい気もするが・・・
そんな私の気持ちを慮ってか、次の指示は糸杉ではなく、右側の風景だった。
そんなこんなで合体。
もう私の中では完成である。ガウディに見せたいレベルの彫刻作品に見えてきた。
これで下の風景が出来たので、次は・・・
青系だけで何色あるのだろう・・・かのフェルメールも使ったとっておきの色、青は、ゴッホが特にこだわった色彩でもあるのだ。これを使うのはあの部分に決まっている・・・!
もくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもく
じゃーん!
そして町に合体。
思わずカメラ片手に町並みを歩いてしまう程うっとりしてしまう。
どうやら、そう思ったのは私だけではなかったようで・・・
たびたび様子を伺いに来ていたゴッホさんが、今度は筆もパレットも持たずに無言で見入っていた。
そういえば裏側はどうなっているのだろうと思い、そっと裏返してみる。
壁に掛けることも可能らしい。でも、そういえば額はどこにあるのだろう。あの公式サイトでは確かに黒い額縁の中に収まっていた気が・・・
ん?
この大量の黒い部品はまさか・・・いや、もしかして・・・
やっぱり~!!
これだけ見れば本当に額縁のようだ。衝撃のクオリティ。額縁も作ってしまおうというレゴ様の心意気に感服。
星や月も追加したら・・・
もう今度こそこれで完成でいいのではないかという気がしてきた。むしろ完成させたくない。終わらせてしまうのはもったいない。永遠に作り終わらなくてもいいではないか。かの有名建築のように。
と思っていたのに、空には躍動的な雲が現れ、ついに糸杉も立った。
こういう絵画もありかもしれない。
でも、絵画とは別の魅力が、立体にはある。
糸杉の後ろ側に何があるかなんて、絵画の「星月夜」では想像もしていなかった。そこを妄想、いや想像して作成したなんて、さすが世界の(以下略)。
そしてついに・・・
「星月夜」レゴ完成である。今度こそ本当にゴッホさんが描いている。
この真剣な表情を見よ。
自由なレゴでは、ゴッホさんの夢だって叶えられるのだ。
週末ごとにこつこつ作り、ついに完成した感慨はひとしお。
絵画を飾るのもいいけれど、このような立体を部屋に置くのも悪くない。
触れるのも悪くない。毎日眺めてニヤニヤしてしまうし、あらゆる角度から写真を撮ってしまう。もう、どうしてくれるのだ。まったくもって全然悪くない。
気づけば時々、ネットで他のレゴ商品を覗いてしまう以外は。
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