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ムンク以外見知らぬ画家達だったが……壮麗な「北欧の神秘」@SOMPO美術館

ここだけの話だが北欧に明るくない。気づけば閉幕まであとわずか。これは行かねばと思って行ってきた。新宿はSOMPO美術館にて開催している「北欧の神秘――ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画展」(~6/9)。

入り口で、出品リストと、ペラ1枚のカラー鑑賞ガイドを入手。これらは公式サイトでダウンロードもできるようだ。とても便利。

展示はエレベーターで5階へ行き、5階→4階→3階と進んでいく。
プログラムは序章「神秘の源泉」、第1章「自然の力」、第2章「魔力の宿る森」、第3章「都市」と構成されている。

詳細な考察は様々なサイトにお任せするとして、私は好き勝手に鑑賞レポートを認める。
余談だが、スウェーデン大使館公式アカウント(インスタグラム)でも本展覧会の作品を掲載しているため、迷い無くフォローしてみた。(日本語でよかった!)

今回写真撮影可能だったのは4階に展示されていた作品(第1章少し&ほとんど第2章)だったため、好みの作品を逃すまいとスマホを構えた。展示順関係なく掲載していく。

エドヴァルド・ムンク「フィヨルドの冬」1915/ノルウェー

なんといってもあの、別に彼が叫んでいる訳では無いのに誤解されつつ有名になった名品「叫び」でお馴染み、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの作品は注目したい。

サイン

ムンクのサインは初めて見た。これがあのムンクか。知り合いではないがちょっと感慨深い。

隅から隅まで見てしまう

筆遣いも見えて興奮する。気のせいかもしれないが、ムンクに限らず、今回の展示は植物文様の額縁が多かった気がする。額をじっくり見られるのも、画集では味わえない喜びのひとつ。

と思っていたが、シンプルな額もある。とにかく絵に合う額でどれも良い。

ハーラル・ソールバルグ「午後の日差し」1895/ノルウェー

撮影可能だから、拡大して鑑賞、そして画像保存できるのもとても良い。

遠くの家もじっと見てしまう

なんだか冬モチーフが多いかもしれない。

ヴァイノ・ブロムステット「冬の日」1896/フィンランド
ヴァイノ・ブロムステット「初雪」1896/フィンランド

そもそも北欧は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランドの5か国を含む区分と言われている。今回の展覧会は、表題にあるように、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの各国立美術館の協力を得て、厳選された70点あまりを展示したもの。
北方の気候風土の影響か、絵画作品も独自の世界が形成されたようだ。

冬の景色が多い気がする。雪を描いたものがよく目に留まる。

ここから、私が気に入った絵を、文字だけで表現して楽しもうと思う。
だって写真不可エリアのものばかりで、ミュージアムショップでポストカードにもなっていない作品については、もはや記憶を頼りに書くしかないではないか。

気に入った絵を文字で再現(写真不可エリア)

「雪原」(ヨーハン・フレドリク・エッケシュバルグ作/1851/ノルウェー)は、ぱっと見、どこに雪原があるのだろうと目を違う。緑多い森の中、手前にある川では、一人の男性が釣りをしている。左後ろには小さな小屋も見える。原っぱはない。そもそも雪もない。季節はいつ? と思って上空に目をやると、遙か遠くの山には雪が残っている。その白さは、背景の澄んだ青空と対比して眩しいほどの白だ。
ああ、描きたかったのはこの雪の白さだったのだと解釈した。(勝手に)
手前の釣り人は単なる脇役、装飾に過ぎなかったのか、北欧、深すぎる。

ほかにも、空の青さとともに、雲の圧倒的な存在感を感じ取れる作品も多くあった。雄大な自然、壮大な空。この気持ちよさったらたまらない。

「密猟者」(ブルーノ・リリエフォッシュ作/1894/スウェーデン)は強烈な印象。等身大に近いほど大きな縦長の人物画。森の中で猟銃を構えて斜め上、空のあたりを見つめる男性。密猟ならば、きっと稼ぎのためにギラギラとむき出しの殺意で佇んでいると思うのだが、その獲物を狙う目……真剣な眼差しが私にはどこか哀愁を感じさせた。どのような過去を持つ人なのだろう。写実的な作風が、妙に想像力をかき立てられる。
ちなみにこの絵の隣に「ワシミミズク」(1905)というタイトルで、同じ作者の絵が展示してあった。やるな、美術館。まるでこのワシミミズクを密猟者が狙っているかのようにも見えるではないか。

そういえば、先ほどから鳥の鳴き声が聞こえている。

実は今回の展覧会では、自然風景の展示スペースに自然の音(鳥の声や馬のいななき?)を流しているとのこと。北欧の自然を全身で体感できる粋な工夫に感動。

「古い孤児院の取り壊し」(アンスヘルム・シュルツバリ作/1886/スウェーデン)は、冬や雪を感じなかったのだが、両手を広げたくらいの大きさで、写実的。中央の人物が斧を振り下ろしている瞬間を描いたもの。今まさに取り壊しているところのため、周囲には瓦礫が散乱している。なんともいえないが、妙に気になってじっと見つめてしまった。
(図録を購入しなかったことが悔やまれる。見られないので記憶しかない)

それにしても北欧、知らない画家ばかりだった。今ここで知ることができて本当によかった。世界が広がった。

神話の世界

さて、階段を降りながら展示室を移動する。

せっかくなので階段も記念に

壁の横になにやらキャラクターが貼ってあった。
「お気をつけて」とか「4階でお待ちしております」みたいな子の後、
長い階段を降りたところで、この子。

どういたしまして

北欧といえば神話の世界。ということで、4階へ到着したら、いっぱいいた。

承知しました!

写真撮り放題だったので、ばしばし。

滅多に見られない作品たち
これは暗くてほとんど見えない
写真に撮ったら見えた

さすが北欧である。どこを見ても新鮮な驚きと感動が静かに佇んでいる。

背景は黄色か、新鮮。
重い額なのか、上下で留めている!お~!
紫! 神秘的!
強烈な赤!

思わず展示されている壁の色に注目してしまったが、北欧の神秘を表現する熱意に敬礼したくなる。鑑賞者に確かに伝わってきた! ありがとう美術館、ありがとう北欧の国立美術館たち!

あとは、テオドール・キッテルセン(1857-1914/ノルウェー)の映像作品が興味深かった。どうやら彼の作品は紙に描かれたものが多く、保存のために国外展示はできないため、今回映像として上映したという。モノクロ作品(自然や北欧神話に登場するトロルという怪物?)の絵をゆっくりとアニメーションのように動かしており、数分間、無言で見つめて楽しんだ。

大充実の展示だった。最後に見たエレベーターも素敵。

このセンス♪

おまけ(SOMPO美術館といえば)

北欧の展示は以上だが、3階の一角にゴッホがいたので撮影。

特別ケースに入っているらしい。明かりもうっすらと。

ゴッホといえば「ひまわり」。
彼は生涯7点のひまわりを描いており、この作品はロンドンのナショナルギャラリーの「ひまわり」をもとに描いたと考えられているそうだ。

SOMPO美術館はしばらく前に改装し、私は改装後初めて行ったため、北欧展のみならず全体的に新鮮だった。2階のミュージアムショップもがらりと変わっていた。以前はなかった休憩スペースもできており、開放的でゆったり過ごせる。ミュージアムグッズで散財しつつ、他の美術展のチラシを物色。美術展の余韻に存分に浸ることができた。

非常に気になる場所に展示されているこの「ひまわり」。どうしても全体を撮ろうとすると視界に入り込んでくる強者だ。近づいて見ると・・・

陶板画か!

立派な陶板画だった。余談だが、確か陶板画は2000年耐久性があると聞いた。この再現力、近づいてくれと言わんばかりの質感ではないだろうか。

うっとり

筆遣いまではっきりくっきり。うっとりする。

ちなみに今回購入したグッズはこちら。非常に厚みのある(まるで板)ポストカード。立てて飾れる優れもの。

 私が元から持っているゴッホのフィギュアと合わせて記念写真撮ってみた
まるで陶板画のような質感!
裏側はこんな感じ。切手を貼って実際に送れるそうだ。素晴らしい。

とにもかくにも大満足の美術展で、大満足の美術館だった。




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