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大学院1年目の読書録 その5 「マーケティング22の法則」

これも1994年初版ということで、そこそこ古い本です。でも2021年6月現在、第48刷が発行されている・・・という人気のマーケティングの教科書「マーケディング22の法則」。副題が「売れるもマーケ、当たるもマーケ」こちらのセンスは…えーと…。
マーケティングの世界は、特にデジタルとの関係で、次々に新しい方法や理論が研究されている分野ですが、その中でも読み継がれる「マーケティング不変の原則」が22通り詰まっていました。目次だけ読んでもヒントになりますが、思い出し、仕事をする上ですぐ振り返られるために、エッセンスをまとめて残しておきたいと思います。

「マーケティング22の法則」アル・ライズ/ジャック・トラウト共著、新井喜美夫訳 東急エージェンシー発行

第1章 一番手の法則

一番手になることは、ベターであることに優る

富士山朝焼け

(↑画像はイメージです…キャプション自分では入れないので、画像名が自動で入る?もしかして夕焼けだったら失礼w)

マーケテイングの基本的な課題は、先頭を切れる分野を創造すること。他に優っていることよりも、先頭を切れることが大切。例としては、ブランド名がそのまま商品名の総称になる例としてゼロックスやコークが挙げられています。日本でも「一番高い山は富士山」は誰でも答えられるのに、「2番目に高い山は?」に答えられる人が少ない、あの理論ですね。人の心に入り込むにはまず「一番になること」。一方で、良いサービス実績を持つ会社が、技術革新でいつまでも市場で一番ではいられない例など、一番手が必ずしも普遍ではないことにも触れています。

(日本の2番目に高い山は、南アルプスの北岳でした。私もすぐに忘れちゃう💦)

第2章 カテゴリーの法則

あるカテゴリーで一番手になれない場合には、一番手になれる新しいカテゴリーを作れ

あるカテゴリーで一番手になれない場合には、一番手になれるカテゴリーを作れ。どこが優れているかに関心を寄せる人はほとんどいない。新しいものには誰もが興味を抱く。確かに。これを見つけるためには、ひたすら考える、考え尽くす。。。

第3章 心の法則

市場に最初に参入するより、顧客の心の中に最初に入るほうがベターである。

マーケティングに心理学がよく引き合いにされますが、その最もたる処。市場に最初に参入することよりも、顧客の心に一気に入り込むことが重要。これは心から同意です。

こちらは簡単で覚えやすい会社名で成功した例で出された私の大好きなApple社の今。

第4章 知覚の法則

マーケティングとは商品の戦いではなく、知覚の戦戦いである。

前章に続き、マーケテイングの主役は商品ではなく、「知覚」である。知覚の戦いである、という話。今でいうブランド価値の重要性やレピュテーションをいかに高めるか、ということでしょうか。

第5章 集中の法則

マーケティングにおける最も強力なコンセプトは、見込客の心の中にただ一つの言葉を植えつけることである。

前章の知覚に訴えるために・・・顧客の心に焼き付ける「ひとこと」の重要性について語られています。絞り込むことによってその商品の本質が浮き上がってくる、ということですね。(文章が長くなりがちな自分に自戒を込めて)

第6章 独占の法則

二つの会社が顧客の心の中に同じ言葉を植え付けることはできない。

自分の競合会社が顧客に確固たるポジションを確立している場合に、同じコンセプトで戦うのは無駄。顧客の声リサーチしてもそのコンセプトを追うのは無益である、ということです。なかなか手厳しいが、真理。

第7章 梯子の法則

採用すべき戦略は、あなたがはしごのどの段にいるかによって決まる。

自己関与度の高いカテゴリーでも最大7の梯子。「一番でないとダメなんですか?」有名なあの言葉に対する答え「一番でなくていいんですよ(カテゴリーによるけどね)。二番手三番手に使える戦略は存在します。ああよかった。ほっ。

第8章 二極分化の法則

長期的に見れば、あらゆる市場は2頭の馬の競争にになる。

マーケティングを長期的視野で捉えると、競争は2大主役に収斂されていく・・・ということには異論はありませんが、その例として、写真フィルム分野では、コダックと富士フィルムの例が挙げられています。コダックのその後は私たちもよく知っている通り。今の時代に読むと、そこは切ない。

第9章 対立の法則

ナンバーツーの座を狙っているときの戦略は、ナンバーワンの在り方によって決まる。

第7章で出た梯子の2段目に足場を築きたい場合、ナンバー1の会社の研究をせよ。No.1の会社の上を狙うのではなく、差別化を図る意味で、反対の価値を提供すべき、とのこと。こう書けば当たり前だけど、私の中では、本書の中で1番のポイントです。

第10章 分割の法則

時の経過とともに、一つのカテゴリーは分割し、二つ以上のカテゴリーに分かれていく。

例として音楽ジャンルの話が書かれています。元々は音楽といえば、クラシックとポピュラーミュージックに相場が決まっていた。(それほど単純でもないとは思うのですが💦)。そして本書が出た時代だと、クラシック、コンテンポラリージャズ、カントリー、クロスオーバー、ダンス、ラテン、ポップ、ラップ、リズムアンドブルース、ロック。2021年の今、Apple Musicを覗いてみたら…カテゴリでチェックする のカテゴリ、数え間違えてなければ、109に分かれてました!もちろん「ブルーな気持ち」「1980年代」なんて、通常のカテゴリーではありませんが、それにしてもライズ先生もびっくりな分化がすごい!(笑)まさしく、「カテゴリーは分割されこそすれ、結合することはない」です笑

最後にチラリと述べている「タイミングの重要性」についても、もう少し深く聞いてみたかったですが、それは本書以外で。

第11章 遠近関係の法則

マーケティングの効果は、長い時間を経てから現れる。

トランプ

短期的に儲かっても長期的に損する事例。麻薬のようなクーポン施策などについて語られています。わかっちゃいるけどやめられない。面白いのはトランプ元大統領の実業家としての当時の破綻が取り上げられているところ。著者もまさかここで例に出したトランプ氏が後にアメリカ合衆国大統領になるとは、予想もしなかったでしょうね。

第12章 製品ライン拡張の法則

ブランドの権威を拡げたいという抗しがたい圧力が存在する。

著者によると、本書の中でダントツに破られている法則がこの「製品ライン拡張の法則」だそう。これ、タイト「製品ライン拡張禁止の法則」の方よね。無謀な拡大は無意味というのはわかりますが、これは企業の拡大発展という経営の要請と真っ二つ。やめるのは企業の勇気と述べてありますが、その辺りは読む人により賛否が分かれそうです。

第13章 犠牲の法則

何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない。

前章「製品ライン拡張したい病」の処方箋として述べているのが本章「犠牲の法則」。

自社のポジショニングを変えてまで新しい分野に手を出すべきではない。領域を絞り込め、ということで、百貨店ではなく専門店、ゼネラリストではなく領域の狭いスペシャリストであるべき。
二点目はターゲットも絞り込む大切さ。
三点目は一貫したポジション維持。変化を恐れない。
そういえば、老舗として生き残っている企業のほとんどが、ゼネラルではなく専門店であるのも、ここに理由が通じるのかもしれません。いやいや。ゼネラルになっていたら既に老舗のカテゴリーではないという噂も?

第14章 属性の法則

あらゆる属性には、それとは正反対の、優れた属性があるものだ。

第6章で語られた、上位の企業の同じポジションを狙っても無理、というところから、それとは別の属性を探す必要性を説いています。いわゆる差別化ですね。同じ土俵では戦わない。どれだけ独自のアイデアや属性を見つけられるか。顧客にとってより重要な属性を目指すべき、ということ。

第15章 正直の法則

あなたが自分のネガティブな面を認めたら、顧客はあなたにポジティブな評価を与えてくれるだろう。

正直なネガディブワードで顧客の心に入り込む妙が語られていますが、その利用には、注意が必要。弁解ではなく、すぐに次のポジティブな訴えに移るという変わり身の早さが求められています。正直難しいけれど最良の策。だそうです。これは、聞けば納得、実行するのは難しい。言うは易し、行うは難し。ですね。

第16章 一撃の法則

各々の状況においては、ただ一つの動きが重大な効果を生むのである。

実質的な効果をあげる作戦には、唯一の大胆な一撃が重要。戦術になぞらえて述べられていますが、例としてあげられているのが、当時の有名なコカコーラ・クラシックとニューコークの事例。ちょっとここで別記事から紹介しておきます。著者が本書発行当時、よほどイライラしながらコカコーラ社を見ていたことが伝わってきます。

第17章 予測不能の法則

自分で競合相手のプランを作成したのでない限り、あなたが将来を予測することはできない。

長期予測の難しさ、推定によるトレンド予測、マーケットリサーチの課題限界などに触れ、トレンドをつかみ、柔軟に対応することが大切。その上で、未来を予測できなくても「賭ける」こともある、という判断にいてもあり得る、と述べられています。

第18章 成功の法則

成功はしばしば傲慢につながり、傲慢は失敗につながる。

マーケティング・プロセスにエゴを持ち込むな。客観性を持て。つまり顧客の立場で、顧客の知覚で自らを置くこと。大きな会社になっても、経営にとって重要なのは、客観的情報を得るために、現場に出向いて自分の目で見る大切さが語られています。

第19章 失敗の法則

失敗は予期することもできるし、また受け入れることもでいる。

日本人が過ちを早期に認め、必要な手直しができる優れたマーケターとして紹介されています。その理由が「誰の責任か」という厳しさのない持たれあいゆえ、と書かれてるところが、時代が変わっても今に通じる気がして少し悔しい。

第20章 パブリシティの法則

実態は、マスコミに現れる姿とは逆である場合が多い。

万事が順調であるとき、会社はパブリシティを必要としない。著書はよほどメディアの記事に反発を感じていたのか、もしくはPR専門家としてクライアントに落胆しながら付き合っていたのか、パブリシティの効果に懐疑的で驚きます。デジタルの台頭で、広報やPRとマーケティングの境界が悪くいえばあいまいに、よく言えば?デジタルを媒介にクロスオーバーして切っても切れない関係になってきた今から見ると、この章には疑問を持たざるを得ません。ここは書かれた時代のせいで、多少古くさくても仕方ないですね。

第21章 成長促進の法則

成功するマーケティング計画は、一時的流行現象(ファッド)の上に築かれるのではない。トレンドの上に築かれるのだ。

ファッド(fad):寿命の短い一時的な流行のこと。

ファッドをトレンドと見誤って過剰な生産設備や流通などによる危険性についてここでは述べられています。それに対し、長期にわたる潮流を「トレンド」と呼び、これを重要視していくことを説いています。人気歌手や俳優のエルビス・プレスリーやジェイムズ・ディーンのような露出過多にならない売り出し方を例としてあげています。成功するマーケティングは、長期的な趨勢の上に築かれる。熱狂的に流行ってはすぐ廃る今のヒット商品・サービスを見ても、著者の時代より現代において、一層その危険性が増している気がします。

第22章 財源の法則

然るべき資金がなければ、せっかくのアイデアも宝の持ち腐れとなる。

最後の章では、要は、優れたマーケティングを生かすには資金力が必要、とマーケティングの成果を結実させるための現実を述べて、この本を終わらせています。


読了。最後の章も、まあ言ってしまえば身も蓋もない資金の話でおしまい。さすがに20年以上も前の著書ということでどの章も大賛成、というわけではないけれど、逆に20数年を超えても普遍的に語れる時代を超えてマーケティングの法則、というものがあることが驚きですね。考え過ぎて迷った時の立ち戻る先になってくれそうです。


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