夢彩姐

いつまでも若いと思っている妙なオバさんです。 穏やかな夫と引きこもりになりそうな娘と甘…

夢彩姐

いつまでも若いと思っている妙なオバさんです。 穏やかな夫と引きこもりになりそうな娘と甘ったれの息子と同居中

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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜         P82

6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント⑥  私は演者の方々にインタビューするべくパイプ椅子を抱えて女性専用車両に足を踏み入れた。 「みゃあ先輩お疲れ様」  車両中程のホーム側の席から華やいだ声が聞こえる。  医師役の近藤美也が自席に戻ったところで被害者の恋人役の関口真奈美が労いの言葉をかけていたようだ。 「あー緊張したあ…。変じゃなかった?」 「大丈夫、大丈夫! ちゃんとできてましたよ。セリフも間違えてなかったし…」  そう言いながら関口真奈美が烏龍茶を差し出した。  近

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      6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント⑤  突然駅長は立ち上がると 「蜂が他にもまだいる可能性が!?」 と、叫ぶ。 「まぁ…有るでしょうね…」  近藤医師が呑気に呟いた。 「すぐに注意喚起のアナウンスをしなければ!」  駅長は制服のポケットから携帯電話を取り出し放送の指示を出す。 『お客様の中にスズメバチの被害に会われた方がいらっしゃいます。スズメバチを発見されたらどんな状態の蜂でも速やかに駅係員までお知らせ下さい』  注意喚起の放送を聞き駅長は少しだけ安堵の表情を浮か

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        6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント④  "ジリリリリ…“  発車ベルがプラットフォームに響き渡る。 「ただいまよりイベント内特別パフォーマンス『緊急停止列車殺人事件・事情聴取編・その1』を開演します」  駅長が頭を抱え椅子に座っている。  白衣を着た女性が紙が挟まったバインダーを片手に駅長に近づいた。 「柴田駅長、少しお時間よろしいですか」  駅長は顔を上げて彼女を見やる。 「あぁ、近藤先生。わざわざすみません」  彼女はバインダーの紙をにらみながら 「検死の結果をお

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          6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント③  この居酒屋は開業からもうすぐ1年になる。  そこで宿泊を伴う大掛かりなイベントを企画したとの事。  ただ列車内で宿泊するだけでは面白味が無いので観客参加型の演劇イベントを開催しようという企画が持ち上がった。(ほぼ店長の発案)  地元の演劇サークルの協力を仰ぐと推理ミステリー犯人当てが良いのではないかとなり、大まかな内容が決まったところでチケットをオンライン販売。 …すると即完売!  あまりの反響の大きさに店側は第2弾の企画を

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          6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント②  古めかしい駅長の衣装は思ったより軽かった。  緊張の余り声が震えたらどうしようかとドキドキしていたがとりあえず役目は果たせたようだ。  ホッと胸を撫で下ろし冷や汗をかきながら私は頭を下げている。  もうシルバーウィークも終わりかけている今日この頃、風の涼しさが一段と感じられた……。  拍手を浴びながら私はつらつらと事の経緯を思い出す。  タウン誌の記者を始めて数年……。  先日、編集長からこの列車居酒屋のイベントの取材を依頼さ

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          6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント① 「キャアァァァ!」  絹を裂くような悲鳴がプラットフォームに響いた。  乗客達が一斉に悲鳴を上げた方へと注目する。 「し…死ん…死んでる……」  男が一人、ホームのベンチで事切れ…倒れていた……。  悲鳴を上げた女性は震えながら 「私はベンチにつまづきかけただけなのよ! なのに倒れたから…様子がおかしいと思って……。だから…だから……」  駅長が足早にやってきて 「今から、このベンチ周辺を立ち入り禁止にします。この男性をご存知の方は

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑰  音楽に合わせて腕を伸ばし…肘を曲げ……  数歩進んでは…少し下がり……膝を曲げ……  腕を広げ…片足だけ伸ばし……  単純な動きで音楽に合わせて輪になって進む。  ふふふ…  そろっているんだかいないんだか訳がわからない。  訳はわからないが楽しい!  所々で似たようなYシャツ姿の男性がめちゃくちゃな振りで踊っている。  キツネ人間姿の女性が振りを教えながら一緒に踊る。  ボンヤリとした照明と相まって何と幻想的な光景なんだろう…

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑯ 「さて、腹も膨れたし踊ってくるか」  黒田さんが財布を背広の内ポケットに入れながら立ち上がる。  え? 踊る?  ここはクラブか? 「良いねぇ。私も行こう」  野崎課長も笑いながら立ち上がった。 「踊るアホゥに見るアホゥ」 「同じアホなら踊らにゃ損ソン」  楽しそうに二人は席を外す。  私は慌てて追いかけて(もちろん財布は持っている) 「すみません。『踊る』って何ですか?」 と、訊ねた。 「盆踊りだよ。あそこで踊っているだろ」  黒

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑮ 「ジャン? どうかしたのかい?」  野崎課長が不思議そうに問いかけた。  ジャンは曖昧に笑って 「いや…その……。御神輿の掛け声が……フランス語に聞こえるんです」 「へぇ…。なんて言葉なんだい?」  ジャンはかなり口ごもりながら…… 「その…えっと……『為政者を討ち倒せ。貴族は◯せ』が一番近い……かと……」 「ブッ!!」  黒田さんがビールを吹き出した!  私もギョッとして肉片を喉に詰めそうになる。 「へぇ…過激だねぇ」  野崎課長は

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑭ 「女性が担いでいるから女神輿(オンナミコシ)だね。なかなか勇ましい」  黒田さんも付け足すように言った。 よく見れば御神輿を担いでいるのはキツネ顔になっている女性達だ。  女性達は赤い法被(ハッピ)を羽織り(法被は知っていた)その下はTシャツだ。そして膝丈の半ズボンを履いている。  う〜ん…素足がなんと艶めかしいことか……。  などと暫し女性達の美しい脚線美に見惚れていた。 「御神輿は男性が担ぐのが一般的なんだよ。小さなお祭りだと

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑬ 「では改めて乾杯〜!」 「お疲れ様でした〜!」  我々は席に戻り購入した料理をテーブルに広げ乾杯をした。  ビニールのカーテン越しなのは少し残念だが料理は美味い。  日本の料理は味が複雑で繊細だと思う。  居酒屋の料理だとて例外ではない。  冷えたビールを喉に流し込みながら料理を楽しみ通常はどんな様子なのかを訊ねた。  …ふんふん……  …まるで列車で旅行をしているかのような演出の店なのか……。  サマーフェスティバル期間が終わったら

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑫  黒田さんがニヤリと笑った後、真面目な顔で 「そうそう…。こうやってね。日本は子供の頃から遊びながら銃の扱いを覚えるんだ」  は?  日本は戦争を憲法で放棄している世界的にも珍しい国…… のはず…… だと…思っていたんだが……? さらに… 「自衛隊の軍事演習なんかアメリカ軍が真っ青になるぐらい統制の取れたものらしいゾ。ネットの噂話だけど…」  と、得意げに告げられた。  私は顔が強ばりイヤ〜な汗が流れてきたのを感じる。  まさか…日

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑪ (『エンニチ』とは何だろう?)  またもやわからない言葉が出てきた。 「すみません。『エンニチ』って何ですか?』  日本人二人組が振り返る。 「日本ではお祭りとかがあると食べ物の屋台だけじゃなくギャンブルぽいゲーム性の有る遊びができる屋台もよく並ぶんだけど…そんな屋台が並んでいるのを『縁日(エンニチ)』って呼ぶんだ」 「だから今夜の店内は縁日仕様って事なんだよ」   つまりはこの訳のわからない様子は特殊だという事か?  わかったような

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑩ 「いやぁ…この時間で食べられるとは思わなかった」  黒田さんはニコニコと骨付きカルビやら〆鯖やらワサビの海苔巻きやらを買っている。  私も食べられそうな料理…主に肉料理を購入した。  ジャンも同じく適当に食材が何かわかっている料理を購入していた。  器同士が連結できる仕様なのが楽しい。  だが…一皿一皿の大きさが小さ過ぎないか?  少しづつ食べられる分だけというのは合理的だが……  二皿買うべきか? 「何かクドい料理ばかり買っち

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑨ 「あ、あそこに各駅の数量限定メニューの屋台が有りますよ」  黒田さんがとある屋台を指差す。 「へぇ…これが噂の……」  私はまだキツネ人間ショックから抜け出られてはいなかったがとりあえず付いて行く事にした。  誰か…誰か説明を!  コレが日本では普通なのか?  この場で日本人ではないのはジャンだけだ。  私はジャンに救いを求める事にした。 「ジャン。店員がキツネの顔になってるのをどう思う?」  ジャンは目を瞬かせ 「うん…理解はし

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          5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑧  ふと隣のジャンを見ると彼も貼り付けた様な笑顔で固まっていた。  …同志だ!  彼もやはりタコは食べ物ではないと思っているのだろう。  だが、彼の口から聞こえたのは… 「キ…キツネ?」 と、いう言葉だった。  どういう事だろう?  彼の目線はさっきまで接客をしていた女性店員さんだ。  他にもいる女性店員さん達は色とりどりの浴衣を着ていて、その浴衣には【列車居酒屋〜旅が好き〜】という文字が書かれている。  さらに帯には特急列車の絵が書い

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