居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P70
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑪
(『エンニチ』とは何だろう?)
またもやわからない言葉が出てきた。
「すみません。『エンニチ』って何ですか?』
日本人二人組が振り返る。
「日本ではお祭りとかがあると食べ物の屋台だけじゃなくギャンブルぽいゲーム性の有る遊びができる屋台もよく並ぶんだけど…そんな屋台が並んでいるのを『縁日(エンニチ)』って呼ぶんだ」
「だから今夜の店内は縁日仕様って事なんだよ」
つまりはこの訳のわからない様子は特殊だという事か?
わかったような…わからないような……???…
「本来の縁日の意味とはもしかしたら違うかもしれないけど、縁日は子供も大人も楽しめる場所なんだ」
「ここは居酒屋だから子供が来るべきところじゃない。だから子供が遊んでいる様子は絵で表現してるんだね」
二人の説明を受けてなんとなくわかったような気分にはなった。
要するに居酒屋の中をかなり本当のお祭りに近づけようとしたという事なのだろう。
わからないなりに何とか自分を納得させ料理を抱えて席に戻ろうとした時……
「えっ? この絵、銃を構えてないか?」
物珍しそうに列車に描かれた絵を見ていたジャンが指さした。
黒田さんはその絵をチラッと見て
「あぁ…。射的の屋台だね。景品が的になっていて銃で撃ち落とせるともらえるんだ」
「弾はコルクでできてたりゴムでできてたりするから当たってもケガはしないよ。多少は痛いけど……」
相変わらず日本人二人は何の疑問も持たないようだ。
ようするに日本では一般的なお祭り風景なのだろう。
私は自分を無理矢理納得させた。
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5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑫ へ続く
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