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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜        P76

5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑰

 音楽に合わせて腕を伸ばし…肘を曲げ……
 数歩進んでは…少し下がり……膝を曲げ……
 腕を広げ…片足だけ伸ばし……

 単純な動きで音楽に合わせて輪になって進む。
 ふふふ…
 そろっているんだかいないんだか訳がわからない。
 訳はわからないが楽しい!

 所々で似たようなYシャツ姿の男性がめちゃくちゃな振りで踊っている。
 キツネ人間姿の女性が振りを教えながら一緒に踊る。
 ボンヤリとした照明と相まって何と幻想的な光景なんだろう……

 そして何より間違ったからと言って誰も咎めない。
 これはかなり重要だ!
 少しぐらいタイミングが遅れても誰も笑わない。
 いちいち指摘しない。
 なんでも有るものとしてあるがままに受け入れる。
 混沌で有りながら一体感も感じる。

 【これが 日本だ!】

 ひとしきり踊って疲れた我々はホームに設置されたバーで休憩することにした。

「いやぁ~…こんなところで夏祭りを楽しめるなんて思ってなかったよ」
 野崎課長が一番嬉しそうだ。
「私もこんなイベントをやっているなんて知りませんでしたから…」
 黒田さんも満足気だ。
 バーカウンター仕様になっている為に駅限定のカクテルや黒ビール・ワインまで有って嬉しい限り。
 もちろん私は黒ビールを頼んだ。
 ジャンは白ワインを楽しんでいる。
 なんか…
 やっと…日本文化のもっと深いところに触れられた気がする……。
 見るもの…聞くこと…
 知っていたようで知らなかった。
 うん、実際に有る地域の小さなお祭りを調べてみよう。
 金魚すくいだってしてみたい。
 せっかく日本にいるんだから日本ならではの体験しなければ!
 私は改めて決意した。

居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行 了 

6.柴田 健一 1周年記念宿泊イベント① へ続く


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