今日のおすすめ本 : 小川洋子『沈黙博物館』
感想を語る、その前に
小川洋子の作品を、一番最初に読んだのは、中学校の頃だったと思う。
教科書に載っていた『最果てアーケード』の「百科事典少女」は今でも忘れられない、心に残る作品の一つだ。
教科書には一部しか載っていなかったために、その後、市立の図書館で借りて読んだ。
その時感じたのは、仄暗い空気だとか、死の匂いだとか、登場する物の繊細さだった。
それから、小川洋子は好きな作家の一人になった。
沈黙博物館の感想
沈黙と喋り語ること、生きていることと死んでしまうこと、安心と恐怖心というのがバランスよく配置され、小気味良く読み進められる作品だ。
人々の死に方の種類の多さには知識量を感じさせられるし、形見についてもなかなかインパクトのある、それでいて特別すぎないものが選定されている。
特に、絵の具を食べて死んでいった人が印象的だ。口元に絵の具が残っている想像をするのは、本来不謹慎であるかもしれないが、究極の美、芸術のように感じられた。
個人的に、この作品を読むのならば
『薬指の標本』も読んでほしいな、と思う。
短編〜中編くらいの
『薬指の標本』『六角形の小部屋』の2篇が文庫本に収められているのだけれど、似たような雰囲気がただよっていて、ぐっと世界観に引き込まれる。
まとめ
今回紹介した作品は、男女が描かれていながら、変に恋愛恋愛しい感じでもなく、だからといって味気ないわけでもない、ドキドキさせられる作品だ。
なんといっても作中のモノのたたずまいが、上質なスイーツを食しているかのように、美しく、儚く、心に響く。
純文学を読む人も、読まない人も、ぜひこの記事を入り口として読んでみてほしいと思う。
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