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カントリーロード

夏の金曜ロードショーが嫌いだった。

だって、ジブリ作品ばかりやっているから。

ジブリはなんだか、不気味で、気持ち悪かった。

みんなが、トトローとか、千尋がーとか、言っているとき、私だけ話についていけなかった。

だって、きちんと見たことがなかったから。

置いてけぼりの私は、一度「となりのトトロ」
をみたわけだけれど、魅力的に感じなかった。

なんなら、有名な作品なんて見たくない、という天邪鬼な私もいた。

しかも、その頃、歳上の従姉妹がトトロの都市伝説とか話していて、不気味さがもっと強まったのだった。

時が経って、大学の授業の関係で、ラピュタを見ることになった。
ラピュタは、ジブリ作品の中でも初期の方だと思うのだけど(勉強不足)、これまで感じていた「なんとも言えない感じの怖さ」を感じなかった。

でも、変なのだ。
断片的な記憶しか、ないのだ。

確かに、面白かったはずなのに。

印象的なシーンとシーンの間がうまくつながらなくって、生あくびをしているような感じ。

なんだか、幼少期の記憶みたいだ。

インパクトの強い光景だけ、断片は思い出せるのに、前後のつながりがわからない。

パズルピースがずっと欠けているような。

しかも、その記憶がいつも思い出せるわけじゃなくって。

何かの拍子にふっとあらわれる。
そんな感じ。

昨日、ある方の弾き語りを作業用BGMとして聴いていた。
すると、流れてきたのは「カントリーロード」。
急に懐かしくなってしまった。

大好きな親友が、いつも弾いてくれた曲。
やさしく、のびやかな感じ。そして、少し切ない。
引っ越していく前の日にも、歌っていた。

カントリー・ロード
この道 ずっとゆけば
あの街に つづいてる 気がする
カントリー・ロード


どんな挫けそうな時だって
決して涙は見せないで
心なしか歩調がはやくなってゆく
思い出 けすため

昔、私はこの歌の「思い出 けすため」という歌詞がどうも気に入らなくって、なんで消さなくちゃいけないんだ! と内心、もやもやしていた。

引っ越しで行く親友に、バイバイ、と言ってしまったら、もう、一生会えない気がして。

しずんでゆく夕日と五時のうるさいサイレン。


パキ、パキパキパキ。

だんだんと孤独になっていく音がした。

ジブリは、思い出さないような、苦しい気持ちも、簡単に思い出させちゃう。
心の奥にしまっているような、封印したいような記憶を。
昔の古傷を。

そんな記憶を癒せるような環境になってから、不意にまた、思い出させるのだ。

だから、ジブリはきらいだ(と褒めてみる)。
私にはできない、懐かしさを持っているのだから。

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